オオカミ少年と人間の少女の切ないラブストーリー
韓国俳優陣の驚きの演技力の高さ!
病気の療養のため引っ越してきた少女スニ役(パク・ボヨン)
言葉が喋れないオオカミのような少年チョルス役(ソン・ジュンギ)
主演の二人の演技力の高さのあまり、リアリティのない非現実的な内容でも感情移入してしまいました。
素朴な雰囲気で親しみやすく嫌みのしないパク・ボヨンは、様々なドラマで見かけますが感情移入させられるどんな役も彼女の魅力を引き出す女優さんだと思います。
どこか悲しげで中性的な魅力のあるソン・ジュンギは、台詞がほぼ全くなくとても難しい役所ですがストーリーに引きつける才能があり表情や仕草だけで演じられる一面を見せてくれました。
スニとチョルスの運命的な出会いから二人が互いに助け合う姿が感動的で終盤には、二人を邪魔する大家の息子や警察にもどかしさを感じつつ、悲しく切ないストーリーに心を打たれました。
実写版もののけ姫?
まず、一番最初に感じた感想です。
オオカミのような少年のチョルスが登場した場面では、何か見たことあるような…何かのキャラクターと被っているような…オオカミに育てられた少女!もののけ姫を思い浮かべました。
性別こそ男ではありますが、人間離れした身体能力と動物的な雰囲気がもののけ姫のような雰囲気があります。
もののけ姫でいう相手役のアシタカは、少女スニ。育った環境や見た目も全く異なる二人が一緒に成長し互いに引かれ合うストーリーの展開はまさに実写版のもののけ姫だと感じました。
もののけ姫のように森の神が登場するようなアニメ的なストーリーではなく、教授らの実験によってオオカミ少年と化してしまった少年は現在の時代にも存在している可能性があるのかもしれません。見た目と反してとても純粋無垢でただただスニのことが大好きなチョルスをつい応援したくなるような、見進めていくほど引き込まれていく存在感があり、こんな少年にもし出会うことがあり、万が一恋に落ちたら…なんて想像を駆り立てられました。
人間の勝手な実験で生まれたチョルスは、例えば今話題の人工知能AIのように人間が自らの手で生み出してより良い未来に役立つ可能性のある存在ではありますが、実際にはAIやロボットは人間の仕事を奪ってしまい近い将来人間がロボットに支配されるなんて話も出てきています。チョルスはそんな人間のエゴで作られたオオカミ少年ではないのかな、ある意味犠牲になってしまったとても可哀想で悲しい存在なのではないかと、それほど現実的に考えさせられた内容でした。
終始モヤモヤする〜!!
特に気になったことは、ストーリー展開が終始モヤモヤすることです。
二人のほんのりと温かいシーンがあると思ったら、周りの大人達に嫌がらせや邪魔をされてしまい、また少しのすれ違いで大きな問題に発展してしまったり、二人を引き離されてしまったり…
もう少し幸せな展開になってほしいと終始感じてモヤモヤと行き場のない感情が湧いてきました。
韓国ドラマや映画をよく見ますが、割とこのような展開が多いかなと感じます。
悲しく切ないストーリーが続き、最後の最後のクライマックスでやっと幸せになれるような、そんな展開を多く見かけます。
私のオオカミ少年では、最後の最後のクライマックスではもう少女スニはお婆さんになってしまった47年後のストーリー展開です。
オオカミ少年のチョルスは17歳の少年のままで、スニはお婆さんになっていてラストシーンで抱き合う姿は違和感を覚えました。
せめて、スニが10年後ぐらいにチョルスの元を訪ねていれば、もう少し微笑ましいシーンになっていたのではないかなと感じました。
お婆さんと少年が抱き合っているシーンは、あまりしっくりこなくせっかくのお似合いの二人が…何か違う…!!となっていたのは私だけではないと思います。
47年間、離れ離れになってしまったスニを待ち続けていたチョルスのひたむきで純粋な姿には感動しましたが、一方でスニは一体47年間一度もチョルスの元を訪れるタイミングはなかったのか、またなぜこれまで一度も訪ねようと行動しなかったのかと疑問を抱きました。
ヤギ農場のおじさんがただひたすらいい人。
近所のヤギ農場のおじさんが特にいい人で、そして鋭い勘がありチョルスを見捨てないでいてくれる優しい心の持ち主です。
ストーリー中盤で、チョルスがヤギを襲って食べたと疑いをかけられ周囲は皆疑いの眼差しを向ける中、冷静な考察でチョルスではなく大家の息子が仕組んだことだと分かっていたヤギ農家のおじさんは、個人的には一番好きな登場人物でした。
大家の息子に早いところ自分のした罪を認めるよう促した後に、後ろから教われてしまったのは残念で仕方なかったです。
あの人が襲われていなければ…証明してくれるのはあのおじさんしかいないのに…と、残念な気持ちでいっぱいでした。
ヤギ農家のおじさんの奥さんと思われるおばさんは、おじさんから何も聞いていなかったようで事実は誰も知らず、チョルスは喋ることが出来ないためチョルスお語ることがなくストーリーが進んでしまい、もどかしい気分でした。
ストーリー終盤の展開。
終盤に、スニお婆さんになった47年後からのストーリー展開だけ少し残念でした。
まず、スニの孫娘の登場がありましたがこれといった重要な台詞やシーンは見受けられなく、割とどこにでもいそうな若者といった印象でした。せっかく一緒にスニの思い出の地に向かったのに孫娘の登場はあまり重要なポイントはなく完結してしまったところが残念です。
また、やはり構図的にお婆さんと17歳のままチョルスが抱き合っているシーンの違和感は心残りがあります。
細かいことを言えば、47年後のチョルスの服装が別れる前と変わっていてそこまでボロボロになっていなかったので、時代の流れを感じられなかったことです。
チョルスが17歳のままの姿ということは、オオカミの血は入っているからだから成長が止まっているのかな?と勝手に解釈していましたが、洋服や髪型、雰囲気が少ししか変わっておらず、本当に47年後なのか?と感じました。
一番のおすすめシーン。
私が一番感動したポイントは、スニがお婆さんになってからチョルスと再会するシーンではなく、そのひとつ前の二人が別れなくては行けなくなってしまい、スニが無理矢理チョルスを引き離すシーンでした。
そこでチョルスは初めて「行かないで」と言葉を発するシーンです。
それまでのストーリーでは、オオカミ少年なので言葉が喋れず自分の意思を口に出して伝えることができなかったチョルスが発した初めての言葉を、警察に捕まえられそうになっているチョルスのために無理矢理引き離すように去っていってしまうスニの悲しく切ない愛情がにじみ出るシーンが一番感動し、涙しました。
ここまでに二人を追いつめてしまう周囲の人々の残酷さと、二人の切ないラブストーリーに心を打たれました。
もしも自分がスニだったら、チョルスのために自分の気持ちを犠牲にして振り払って去れるのかと思うとスニの愛情深さを感じました。
また、チョルスの今まで溜まりに溜まったスニへの想いがその「行かないで」という言葉に詰め込まれていて、たったその一言でチョルスの想いが一気溢れ出してきたような感覚に陥りました。
もうひとつあげるとしたら、スニがチョルスの髪の毛を切ってあげるシーンです。
チョルスが気持ちよさそうにウトウトとしてて、とっても幸せそうでほっこりするのでこちらをお気に入りのシーンです。
こんな切ないストーリーを見ると、自分は好きな人といつでも会えたり話せることが当たり前のように感じていたけれど実はとても幸せなことだと感じさせられる映画です。
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