王道恋愛マンガの掟破り?ホッとする二人の信頼関係に癒される - 千津美と藤臣君のシリーズの感想

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千津美と藤臣君のシリーズ

4.504.50
画力
4.00
ストーリー
4.00
キャラクター
5.00
設定
2.50
演出
3.50
感想数
1
読んだ人
1

王道恋愛マンガの掟破り?ホッとする二人の信頼関係に癒される

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
5.0
設定
2.5
演出
3.5

目次

定番設定なのに内容が深い!

ずいぶん昔、学生の頃に読んだけれどいまだに色あせない、忘れられない作品です。

スポーツ万能でケンカに強い藤臣君と、「ちりめんじゃこ」と揶揄される、ドジでちょっとたよりない千津美。

って、あれあれ?読んでて恥ずかしくなるほどド定番の昔の少女マンガ設定ですか?もしかして藤臣君、雨の日にネコとか拾っちゃいます?と思わせておきながら(ちなみにネコは拾いません)、実はものすごく芯の通った人間同士のつながりを丁寧に描いた作品なのです。

ものすごくかっこいい藤臣君が千津美のどこに惹かれたのか、千津美のダメそうに見えて筋の通った強い優しさなど、一つ一つのエピソードに作者のひかわきょうこさんからのメッセージがこめられているように感じます。

大ヒット作「彼方から」と同じ、お互いを支え合ういい関係なんですね。「人間同士、支え合うからこそ、よいものが生み出せる」というのは、この作者さんの一貫して伝えたいテーマなのかな、と感じます。古い作品なので、設定や絵柄が若干年代を感じますが、今若い人が読んでも大丈夫な新鮮さがありますよね。

かっこいい藤臣君

とにかく藤臣君がかっこいい。私的には今まで読んだ漫画のヒーローの中で間違いなく十指に入るかっこよさ。剣道部副主将(1作目では)にしてケンカは無敵。無口で不器用なせいで人から距離を置かれている面もあるけど、本当はすごくしっかり千津美を見てくれていてめちゃくちゃ優しい。

ひかわさんの描くヒーローはどれもかっこいいんですけど、千津美と付き合いだしてからどんどん人間的に成長していく藤臣君の様子がまたいいんです。「コンプレックスを持っているからこその成長」がさりげなく描かれているというか。少女マンガにありがちな自意識過剰系コンプレックスじゃないところがいい。

ものすごくモテモテだったという超美形お兄さんにからかわれても、どう返していいかもわからないほどコミュニケーション下手だったのに、だんだんと雰囲気が柔らかくなり、からかわれても軽くあしらうこともできるようになり。

次の巻では大学生になって、ますます落ち着いた大人の雰囲気になります。ストーリーの中で、藤臣君の昔の彼女が出てきたり、千津美の事を好きになる男性が現れたりと、それなりに周囲からの揺さぶりはあるものの、ある意味退屈なほど藤臣君のメンタルはぶれない。それなのに退屈どころか何回も読み返してしまうというひかわきょうこマジック。欲をいえばもう少し剣道シーンを増やしてほしかったかな。かっこいいのにそれほどキメ顔とかかっこよさアピールシーンが多くない(笑)藤臣君はそこがまたいいんですけど。

どうしてひかわさんの描くヒーローはかっこいいのか。

まず、絵柄からにじみ出る色気。腕とか背中とかのかっこいいライン(ちなみにこのあたりを堪能したい場合はやっぱり「彼方から」ですよね)。

その男らしいラインのかっこよさと、ヒロインに対する姿勢の絶妙なバランス感。

ヒロインを上から目線で見ることが決してないのです。ドジなヒロイン、千津美に対しても、「おまえはドジだなあ」みたいな偉そうな台詞を決して言わない。常に敬意と愛情の人なのです。割と漫画を読んでて俺様ドSすぎる台詞にイラッときたりすることもある私としては、この部分はものすごくポイント高い。これって、現実の人間同士のお付き合いでもすごく重要な部分ですよね。

ひかわ作品のヒーローは決して上から目線で人を見ない!

なぜなら無駄なプライドを持ってないから。

だからこそ、読者をこんなに惹きつける。

もちろん、絵のかっこよさもありますけど。

王道恋愛ものだけど・・・

千津美と藤臣君は、シリーズ1作目でめでたく相思相愛となり、それ以降ずーっと付き合い続け、ケンカすることもなく、二人の間で誤解が生じることもなく、いつまでも幸せに付き合い続けました、という恋愛マンガとしては掟破り?な力技を披露してますよね。

何故、それが掟破りなのか?

というのは、普通、恋愛ものの少女マンガというのは「誤解→仲直り」「誤解→仲直り」の積み重ねでできてるものなんです(筆者の主観)。

出会い→恋心→ライバル→誤解→告白→誤解→やっと相思相愛→誤解→仲直り→新たなライバル→誤解→仲直り・・・みたいな。恋愛ものは大体この流れに学園祭や修学旅行といった要素を加えてメリハリを出している。逆にそうしないと盛り上がらないし内容がつまんなくなってしまうのです普通は。

なのに、千津美と藤臣君の場合、出会い→告白→相思相愛→落ち着いて交際、以上、なのです。ここがすごい。つまり強制的に誤解イベントを発動させなくても恋愛ものとしてちゃんと成立しているのです。主人公の二人にかわって、周囲の人々がゆれて、物語を盛り上げてくれた上に、この二人にかかわることで、それぞれ成長していく。千津美と藤臣君の信頼関係が読んでいて本当に心地よく、再読したくなる魅力のある世界観になっています。

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