全ての女のための物語 - HERの感想

全オンナの味方（であると同時に敵）

彼氏が欲しいアパレル店員、仕事を捨てたくない美容師、処女であることを焦る女子高生、男を愛せない老女、着飾らない女、女嫌いな女、そして、、、ありそうでなさそう、日常のそこらへんに潜んでいそうで潜んでいなそうな女達のあれこれを描いた短編集。彼氏欲しくなくても、仕事はどうでもよくても、処女じゃなくても、男を愛していても、それぞれのキャラクターどこかに共感できる大好きになる部分がある。そして、登場するキャラクターが憎らしい、羨ましい、そんな感情も同時に得られる。友達になりたい女、尊敬できる女、こうはなりたくない女、遠くから見つめていたい女、いろいろな女が登場する。女の世界の複雑さ、面倒くささ、可愛らしさすべてが詰まった珠玉の作品だろう。

「女は醜くくて、男は愚かだ」

最後のストーリー、CASE.6 これはいままで登場した全てのキャラクターを象徴する言葉だ。これを言うのが、ほんとうにほんとうに平凡な男だということもポイントだろう。全てのCASEが繋がっていて、これらがどこにでもありそうなストーリーであることが、このせりふを通して証明されただろう。どんなに年上の男性もバカに見えるときがあるし、どんなに綺麗な女性にも醜い部分がある。そんな部分を「愛さずにはいられない」私達人間は、この言葉があればこの先、恋愛関係でなにがあっても、良い意味でも悪い意味でも諦めがつくのではないだろうか。だって、女は醜く、男は愚かなのだから。

HERは恋愛バイブル

恋愛はいつもうまくいくものではない。この人だ！と思っても、長く付き合えば付き合うほど、欠点が見えてくるだろう。筆者が彼氏に浮気（未遂）されたとき、ふと思い浮かべたのがHERのこのせりふだ。「結局、憎しみは女の方に向くと思うのよ、わたしは」「わたしは男の人を憎めないわ。好きな男なら、きっとなおさら」その浮気を彼氏が自らの意思でしようとしていたとしても、憎いのは相手の女。愚かな男を愛さずにはいられないのだ。また、「娘に訪れる全ての幸福も災厄も母親に由来する。」「だから地球は女で回ってる」このせりふも心に響く。このようにふとした瞬間、思い出すことができるHERにちりばめられた数々のせりふ。日常に潜むたくさんのありふれた非日常にマッチしたせりふ。HERは恋愛バイブルなのである。恋愛がうまくいっているとき、転んだとき、この1冊を読んで頂きたい。きっと心に響くなにかが得られるはずだから。