完全ラブコメだけどかのこの言葉はずっしりくる
そんなかのこだから良い
かのこは完全なる傍観者として物語を楽しむ人間…そう思っていたのにいつの間にやら物語の中心に君臨してしまっているという…すごすぎる人物です。恋だの愛だのくだらない。そんなものは自分には関係ない。私は人の思惑・戦略・関係性を読み解き分析することが至高の喜び…みたいな人なのに、嗅ぎまわっているうちに結局ハッピーエンド方向に話を持って行ってくれるかのこのすごさが素敵ですよね。結局、自分には恋だの愛だの関係ないと言っておきながら、誰よりそれをよくわかっていて、より正しい方向に導いていってくれている感じです。いいやつなんですよね。新聞部では軍師としてあがめられていたけど、まさにぴったりの言葉です。軍師って。
メリット、デメリット、合理的であるかどうかを考えて行動しているから冷たそうなのに、それは理にかなっていてちゃんとみんなのためになっているという…無自覚でね…傍観者じゃなくて完全に人間ゲームの中の主人公として舞っている姿に、読んでいると本当に楽しくなります。これもこの作品の母体となっている「笑うかのこ様」で花井桃香という親友を得たからなんでしょうけどね。自分を絶対的に信用する人物を得て、その期待に応えるべく、正しく進んでいこうともしているかのこですから、傍観者の域から出てしまうこともあるのでしょう。かのこの言葉1つ1つが核心を突くから、花井さんも、椿くんも、会長も、さゆり姫も、城欄も…たくさんの人が影響を受けていますね。そういうカリスマ的な人になりたいものです。芯があってブレない人って、男女問わずかっこいいじゃないですか。憧れちゃいますよ!この世界では、かのこをかわいいと思っているのは花井さんと椿くんくらいですけど…(さゆり姫はかわいいと思っているけど見た目じゃなくて、女の子らしい一面もあるというギャップにかわいいと言っていると思う。)かのこは地味子ですけど、このマンガの世界では十分かのこはかわいい!
椿くんの想いの行方
すがすがしいほどにすれ違っている椿くんの気持ち…9巻くらいにくるまで全然かのこに想いが届いていないのですが、それくらい時間は必要でしたね。だって椿くん、イケメンのヘタレですもんね。目が合ったら男女問わずにとりこになるというくらいのイケメンですけど、ヘタレなんです。自分がほしいと思わなくても何でも手に入れることができた中学校までと違い、かのこという絶対になびかない存在との出会いが彼をここまで恋い焦がれボーイに変身させたわけですが、花井さんとの会話がすごいイイシーンです。かのこが絶対的に信頼する親友というポジションに君臨する花井さん。彼女は本当にかのこの幸せを願っているからこそ、強引に自分の欲だけで事を進めようとする椿くんは危なっかしくてしょうがないようでした。でももちろん、椿くんのことも大切な友達だと思っている。そんな天使の花井さんは椿くんにいろいろな女の子目線の助言を行っています。このあたりを読んでいると考えるのが、異性の友達ってかなり大事だよな、ということですね。同性どうしだと、空気が読めちゃって聞かなくてもわかることって多いと思うのですが、異性だと価値観の違いが必ず出てくるので、信頼できる異性の友達からリサーチをしておくってお互いの気持ちを知るのにかなりの近道です。花井さん、良き働きをありがとう。
設定のおもしろさ
しかし、ここで笑えるのは、花井さんと椿くんという美男美女なら付き合ってても絶対おかしくないっていうふうにみられて、横にいるかのこが完全な影に隠れてて…物語の中では完全にかのこがすべてを握っているというね。表面に見えているものだけが真実じゃないってことですよ。どんな関係においても、キューピッドだったり影の立役者がいるもんだと思うんですが、その人だって普通に生きてるんですから!
かのこがどんどん学校の中で軍師として暗躍している姿はかっこいいです。これって、人のことを好きじゃなきゃここまで行動の推理とかできないですよね。どういうタイプの人間が何を思うか・そしてどう行動するか、頭がいいだけじゃ読めないところを、かのこは今まで積み重ねた人間観察によって熟知しています。そんなかのこは、自分自身の事だけは完全に抜けているんですよね。危険を顧みなかったり、自分が人からどう思われるかとか、完全に抜けている…それがかのこを愛する椿くんからすればものすごく怖い。かのこの安全だけは絶対に確保したいと思っていますからね。でもかわいいと思うからこそ、やりたいことも最大限尊重してあげたいという…椿くんの愛が光ってます…椿くん自体も、人の事は好きじゃなったのに、人と関わることが嫌じゃなくなっている。そんな変化も見ていて楽しめます。
会長…!最高です…!
このストーリーの中でのダークホース、矢吹生徒会長。かのこへのアプローチが本当に…まっすぐで素敵です。椿くん置いといて、こっちといいとこまでいかないかとすら期待しました。だって興味があるとなった瞬間から、もうかのこのことをただ知りたいみたいな貪欲さ…勉強みたいに謎を解きたいみたいなその好奇心。うわードキドキする!手に入れるために自分にできるベストを尽くしているわけですよね。がり勉が色恋沙汰にこれくらい全力投球したらこんなことに…なるんだろうか…と考えてしまうね。そして矢吹会長にも花井さんみたいな協力者・水上さんがいらっしゃる。彼も矢吹会長の求める方向にうまくいくよういろいろ試行錯誤するけど、色恋だけは、なかなかうまくいきませんね。ただ、ここでただ椿くんのほうが大事なんですみたいな話じゃなくて、恋愛として大事なものと、友情として大事なもの、どちらもかのこにとっては最大限に大事なもので、比べられないっていう表現がよかったなと思います。かのこらしいです。人を観察して楽しむ世界から、自分が当事者となる世界へ。会長のおかげで話がクライマックスまで進みました!のんびりと二人の世界だけで気づく気持ちより、やはり加速させる出来事がないと進まないですよね。
名シーンは温泉でしょう!
後半ではさゆり姫と城欄がね…すれ違ってるわけです。それをみて椿くんもかのこもあーだこーだと画策しまくっていて…これはこれで楽しいんですけど、一番物語的に最高潮だったのは、中学校メンツで温泉旅行にいったときですよね!!これも、本当は椿くんがかのこと二人っきりでどうにか関係性を進展させたくて計画されたものでしたけど…この時はかのこが花井さんにしゃべっちゃったから中学校仲良しメンツで行くことになりました。椿くんどんまい。でもこのときの花井さんの言葉がね…まさに正しかったです。二人で行くということが何を意味するのかわかっているのかとか、自分の気持ちばかり優先させてかのこの気持ちを本当に考えているのかとか。椿くんはすっかり意気消沈…花井さん、素敵です。こんな友達いるんでしょうか。最高だわー。かのこにとっても花井さんは別格の友達だからね。ちゃんと正しいのか正しくないのか、かのこにとって最善の策であるか、ちゃんと考えられる人間じゃないと任せられない!って親みたい。かのこにとっては保護者のような側面もあったかもしれません。本当に近くで見守ってくれている、母親のオーラが花井さんにはあります。
最終的には予想通りのハッピーエンドですが、終盤は本当に楽しい展開ばかりです。基本的な関係図に変わりはないんですけど、関係性の深みが増してるので、そこを楽しみながら読めますね。
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