初めての黒執事~和風の洋風~
宣伝にのせられてみた
こちらは漫画が原作ということで、私は原作を読んだことはないのだが、そのイラストはあちこちで目にするので、少し雰囲気は分かっているような気がしていた。漫画に詳しい人に聞いても、そこそこ私の感じていた雰囲気で合っていた様子。タイトルとイラストだけでも十分に伝わっているのがこの作品の凄い所なのだな、と改めて感心した。華麗な美しさと、陰と陽なら陰であるほうの魅力というのが伝わってくる。さて、映画。完全にオリジナルなストーリーということらしいが、原作の雰囲気を壊さずに仕上がっているのかが見所のひとつだったと思う。私がこの映画を観ようと思ったのは、水嶋ヒロだ。彼がテレビ番組に出演し、宣伝していたからだ。この人は芸能人ではない、アーティストが持ち合わせているまどろみや曇りや、精神性のからみが見受けられて、あまり隠さないから面白い。あまり起用に立ち回れる人物ではないのかもしれない。それでいて狡猾に仕事ができる人なのかもしれない。などと勝手に想像した自分の水島ヒロが、映画でどんな仕事をするのか見て見たかった。別にファンでも好きでも嫌いでもないが、彼なりの苦労や紆余曲折乗り越え3年ぶりに映画出演し、共同プロデューサーもするということに興味を惹かれたのだ。
テーマのようなもの
お話自体は、ふむふむ、といった感じで、叔母が裏切るのは残念だったし、その叔母も婚約者に裏切られたというのが残念だった。結局この叔母が本当に欲しかったのは不老不死でも若さや美貌でも、何でもなく、何の復讐にもならず、何の目的でもなく、仕返しのようなことを世の中にしてみたところで、何も手に入らない、八つ当たりにもほどがある、かなり虚しい悪役だった。ストーリーはこの悪役が引っ張っていっているようなもので、そこに各々の虚しさが肉付けされているようなそんな風に見えた。多分、最後に剛力彩芽が人間を醜いように言うセリフが、テーマなのかな、という。その辺りに水嶋ヒロの繊細さや絡まった感じが重なるように見えていい具合の作品だと感じた。自分自身、何がどういい具合だと思ったのかわからなかったが、中高生だったらすっかり共感しちゃうような人間の美醜についての問答が、ちょっと大人になると「そんなことを思えるなんて素敵」とか「キレイ」とか思えてきたりするのだった。ああ、純粋だなというのと、ひどくつらい目に合っても、美しく生きることをけなさない強さを見て取れるのだ。醜くなって、自分を醜いとけなしてしまうのも良くない。けれど、醜い自分を醜いと認めて開き直らないこともとても大切だと思うのだ。どちらも楽なのだ。どちらも嫌だとあがくのは苦しいことだと思う。乗り越えられない悲しみというのが、訪れる人もいれば、訪れない人もいる。訪れなければ幸運だが、音擦れたからといってそれ自体が不幸なのではない、そのあとの心の持ちようをどうするのかが、苦労で、苦労は不幸を防ぐことが出来るかもしれない。そんなことを考えたりもした。考えると複雑な気持ちになるが、周りを不幸に巻き込まない行動が不幸に見舞われた人の為すべきことなのかもしれない。もう誰にも自分と同じ目にあって欲しくないと思えたら、同じ思いをする人が減るのは確かではないだろうか。何とも言えないところですが。
静かに美しい
キャストがみんな美しかった。映像もきれいに光が映えていて、うまく作られていたと思う。庭にいるときの平和なシーンは特に明るく、眩しいくらいだった。ベッドで起きる朝のシーンも柔らかく優しい光がさしていた。とても自然光には見えなかったが、このくらいの演出があったほうが、この作品には似合うなと感じた。キャストについても、加工されているんじゃないかというくらいに美しく感じた。本当に、アニメや漫画の登場人物のように透明感があった。もともとの素材の良さもあるのだろうけど、優香が優香じゃないくらい優香だった。いつもよりずいぶんと美しく見えて驚いてしまった。本当に薬の力で若返っているんじゃないか、なんて思えるくらいで面白かった。水島ヒロも一貫して水嶋ヒロな感じが崩れず良かったように思う。演じる必要がないくらい、水嶋ヒロな執事だった。違う役者がこれをすると、役作りをしていく過程が生じるんだろうなと思うくらい。水嶋ヒロが執事だったら…というイメージで出来上がっていて、これも面白かった。剛力彩芽も男装の令嬢だったが、この設定は剛力に合わせて作ったんじゃないかと思うくらい剛力のままだった。今作は、役者がそのままだな、というのが良かったように思う。原作に誰かが近づこうとしたのではなくて、原作に近づいてもらったようなやり方だったのかなと思う。そのほうが、みんな堂々とのびのびしていてよかったんじゃないだろうか。映画鹿みていないので何とも言えないが、原作のファンがもやもやしないですんだんじゃないかと勝手に思ったりした。
印象
アニメ大国日本と言われるが、実写でアニメのような作品も多く、今作はそういう作品の中でも、すっきりしていたなと思った。可もなく不可もなく、こんな風に画面を美しくしまえる映画の撮り方もあるんだなという印象が残った。
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