注意:決してゆるふわ書店員のお話ではありませんよ。 - 書店員ミチルの身の上話の感想

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書店員ミチルの身の上話

4.004.00
映像
4.50
脚本
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キャスト
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音楽
2.50
演出
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感想数
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観た人
2

注意:決してゆるふわ書店員のお話ではありませんよ。

4.04.0
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
2.5
演出
4.5

目次

「身の上話」という名の現代の怪談

「書店員ミチルの身の上話」というタイトルだけ見て、小さな本屋さんのかわいいミチルちゃんのハートウォーミングなゆるふわ話かと思っていましたが、開けてびっくり玉手箱。これは恐ろしい現代の怪談じゃないかと背中がぞくぞくしました。長崎の普通の書店で働く、普通の女子ミチルは地味だけどちょっとかわいめの若い子。ミチルのまわりで続いていく死や謎の失踪。男たちはみんな、ミチルを想いながら、一人また一人と消えていく。魔性の女は、目を奪われるような絶世の美女ではない、と聞いたことがあります。ミチルのようなどこにでもいそうな子が、本人の意図とは別に、ちょこっとついた小さな嘘が、まわりの人の人生を狂わせていく。こんな恐ろしい怪談があるでしょうか。お化けや幽霊よりも、一番怖いのが人間です。また、ドラマの演技はもちろん、ロケーションや衣装など、とてもリアリティがありました。こんな本屋、地元にある。こんなヒトいるよな、というリアルが、日常の中に潜む狂気を感じさせます。

ナレーションを語るあなたはダレナノカ?

巧いな、と思った手法は、ナレーションが、「妻ミチルの身の上話」として初めからぽつぽつ語りだすこと。大森南朋さんの、妻を見守るような優しい声に、引きつけられるました。独身時代のまま話は進み、夫となる人もなかなか出会わないのです。いつだ?あなたとはいつ出会うんだ?この先にミチルはどうなってるんだ?と展開がとても気になります。わりと、主人公がナレーションを語る作品が多い中、とてもおもしろいな、と思いました。バスの運転手・香月として出会うシーンは、ついに!と嬉しく感じました。しかし、最後の最後に香月はミチルを、ストーカーで幼馴染の竹井から守るために、前妻殺しの罪を告白し、刑務所へ入るという真実。悲しみを背負う人は、同じような境遇を持つ人と惹かれ合うのは現実にもそうなのかもしれません。少し残念だったのは、短い枠のドラマだったからか、香月と出会ってから、最後までが目まぐるしく詰め込まれ過ぎていたこと。それでもかなり質の高いドラマでしたが、映画化してもいいんじゃないかと思います。

どこかしら、みんな、何かを抱えて生きている。それぞれの「身の上話」。

このドラマに出てくる人はみんな、善人も悪人もないように感じました。特に印象に残ったのは、ひょうひょうと仕事ができる感じで、まあまあのイケメンで数人と不倫もしちゃってまーす、カラ出張で会社の金も使ってまーす、へへへ、みたいなサラリーマン豊増が、実は家庭では奥さんが排卵日がどうのこうのと妊活でイライラピリピリしているのにゲンナリしているところ。なんだかリアルだな、と感じました。嫁との義務的なSEXから、逃げ出したかったのでしょうね。ミチルと肌を重ねることで癒しも得ていたのかもしれません。ちなみに豊増演じる新井浩文、沢山の作品に呼ばれるだけあって、とても自然な演技で脱帽です。そうした男の一抹の寂しさみたいな側面も丁寧に描かれてます。父親にレールを敷かれ進学をあきらめ、欝々と地元で冴えない仕事をしていたミチル。お金持ちの息子なのにどこかイケてない婚約者。ミチルが東京に来なかったら、平凡な日常を送り、狂気を覚醒しなかったはずの竹井。漁師をしていたミチル父も、奥さんに先立たれて、娘の将来に何が必要なのか悩んでいたのかもしれません。私たちが目にする、毎日起こる殺人のニュース。現実とかけ離れた非日常で起こっていることではないということを、はっと考えさせられました。何かを抱えた人たちが、たまたま何かの縁で出会い、ミチルの宝くじが当たったようなイベントが発生したことで、関係性が変わっていく。平々凡々な生活から、恐ろしい世界へと変わっていったのではないでしょうか。「こんなことをする人じゃなかった」「わりとおとなしくてトラブルはなかった」よく耳にする言葉ですが、人には人の身の上話があるんだ、ということをドラマでは伝えたかったのかな、と解釈しました。スリリングで暗い展開が続きましたが、ミチルを本当に愛してくれた夫との出会い、教会でわが子とともに夫の帰りを祈りながら待つシーンは、光に包まれてとても暖かく、美しいものでした。現実は酷で、ハッピーエンドはないのかもしれないけれど、香月という最愛の夫と出会えたことは本当に良かったなと思います。愛とは究極の自己犠牲なのではないでしょうか。私には、教会の十字架に張り付けられたイエスキリスト像と、香月が重なって見えました。ミチルのように強烈な身の上話を持ちながら、ひっそりと暮らしている人が、日本中には沢山いると思います。道端ですれ違う、優しそうなご老人、子供を連れたお母さんの、なんとなく身の上話を想像してしまいたくなるような、そして自分の平凡な日常にほっとしたくなるかのような、刺激的なドラマでした。

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