感動的
知性
理性的なアンが感情を取り戻すお話です。緊張感のある前半に対して、恋愛感情を取り戻す後半の展開はくるくると気持ちよく回っていきます。理性があったからこそ、感情に正直になれたアン。自分の過去の選択は間違っていなかったと言っています。普通、中盤くらいに話が重くなりますが、この作品は途中からどんどん明るくなるので、新しい感じがします。オースティン自体がこれまでの型から解放されようとしている感じがしました。後半の話の流れは、夢を見ているような不思議な気持ちになります。シュールレアルな何かがあります。アンの思いと、ウェントワースの思いが、言葉のやり取りも少ないのに、ぴったり重なるラストの展開は、神がかり的なものがあります。作者のテクニックに度肝を抜かれます。
感情
ウェントワース大佐は率直な人物として描かれています。アンとは正反対です。しかし彼はアンの知性的な判断によって、ふたたびアンを愛するようになります。ウェントワース大佐は、理性の大切さを学びます。荒々しい感じのキャラクターなところが、とてもリアルです。理性も愛のひとつの形であると学びますが、アンの視点から書かれているため、読者には直接的には分かりません。エマの主人公のエマも、ウェントワース大佐のタイプです。エマとは違い、ウェントワース大佐の気持ちや考えは、読者はほとんど彼の行動から推測するしかありません。オースティンの作品は、本当に女性の目線です。男性の気持ちや感情を描いて、無理やり素敵な男に仕立て上げようとはしません。あるがままの男性に対して、女性がどう行動するかを描いています。
どっちも
分別と多感でも見られた通り、オースティンは理性と感情を比較して描くのが好きです。たぶんどちらも大切にしなければならないと思っていたのだと思います。しかしこの作品では、自分の気持ちをより重視しています。オースティンの最後の作品ということから、自由になりたい、という気持ちが強かったのかもしれません。恋人と結ばれずに亡くなったオースティンのことを思うと最初は結末で涙が出ましたが、だんだんとオースティンは別に悲しんでいなかったと思うようになりました。だって本を出版すれば、それが必ず昔の恋人の元へ届くからです。実際に彼はオースティンの本を読んでいたらしいです。そういうことも意識して書いていたのではないでしょうか。愛を信じているすべての人が読みたくなる作品です。
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