泥臭くてカッコいい、寂しくて温かい
孤高でいて、人間らしい「ツンデレ」ヒーロー
「単なる正義の味方ではないニヒルな孤高の渡世人」という(当時としては)斬新なヒーロー像が主人公・紋次郎の魅力だという意見もありますが、自分が生きる事や他人に対して一見投げやりなようでいて、その実、時には這ってでも、泥水をすすっても懸命に生き、そして「あっしには関わりねえこって」の名言を口にしつつも、結局は誰かを助ける為に体を張り、剣を振るう事もある、そんな我々も持ち合わせているような「人間らしさ、人間臭さ」が紋次郎の魅力であり、時代を超えて共感を得られるヒーロー像に繋がっていると考えます。
「カッコ悪い」が「カッコいい」闘い
時代劇といえば、派手な殺陣や格闘シーンで、無敵の主人公がスタイリッシュなチャンバラで敵を一網打尽にするのが一番の見世物であり見どころですが、当作品での闘う場面は、主人公が時には所謂「へっぴり腰」のような姿勢で刀を突き出したり、普通のケンカのような卑怯にも見える手段を使ったり、そして一網打尽にするのではなく牽制して逃げることもあり、文章にすればカッコ悪い闘いですが、そこにリアリティーや臨場感があり、逆に泥臭いカッコよさがあります。(私自身、武道を嗜んでおりますが、あの剣戟・格闘は理にかなっている部分もあるな、と感じることもあります)強いけど、より視聴者に「身近な」キャラクター性と呼ぶべきでしょうか。
主題歌にも集約された、寂しさと哀愁の中の、温かさ
大抵のドラマは、主人公の他にレギュラーキャラクターが数名存在しますが、本作はレギュラーキャラクターと呼べるのは基本的には主人公のみ。そして天涯孤独という主人公の設定や、回によっては報われなさの残る脇役、といった「寂しさ」が作中世界に漂い、更にはタイトルの「木枯し」と、闘い終えて、束の間の休息を終えて、再びさすらいの旅人として去ってゆく姿が「哀愁」をアピールしているかのようです。この全体に漂う雰囲気は、主題歌の歌詞にも込められているようですが、それ以上に惹きつけられるものは、まさに「木枯し」の中の、ほっこりとした「温かさ」ではないでしょうか。サブキャラクター達とのやり取りで垣間見る、人と人との人情味のあるやり取り、木枯しと同時に夕陽の似合う世界観、そして西部劇(マカロニウエスタン)を彷彿とさせるメロディーと、寂しさを乗り越えた前向きさを湛えた歌詞の主題歌と、作品全体に散りばめられた温かさが本作の魅力にして主人公の求めるものだと感じます。
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