レンアイ、したくなります
山崎紗也夏の作品
山崎紗也夏さんの作品はどれもテーマが独創的であると思います。とは言っても私が読んだことがあるのは『シマシマ』『レンアイ漫画家』『サイレーン』だけですが、どれも印象に残る漫画でした。
『サイレーン』は松坂桃李さんが主演のドラマを放送したこともあるので作品名を聞いたことがある方もいると思います。ドラマ、観ましたがカラ役の菜々緒さんが良い味を出してて面白かったので漫画を読んだことない人はドラマから入っても良いかもしれませんね。
私は漫画原作のアニメや実写は原作とは別物と考えます。そして必ず原作、もしくはアニメから入るようにしてます。原作至上主義です。先入観なく〜とか言っておいて偏見持ちです。やはり好きな作品は原作者の意図を汲んで欲しいな〜と・・・。
話を戻します。山崎紗也夏先生の作品に出てくるヒロインの女性は皆たくましい性格をしていて読んでいて気持ちが良いです。『レンアイ漫画家』の主人公・あいこは23歳です。しかし23歳ってこんなしっかりしているのか?という疑問が読み始めて生まれました。働いていても子どものような人は沢山いますし。
そこは彼女の性格を裏付ける背景がきちんとあります。学生時代はヤンキーであったことは、あいこの思いっ切りの良い面を作り上げていますし、歳の離れたかなりしっかりしている姉に育てられたことも要因ではないでしょうか。
悪いことは悪いことだときちんと認識し、駄目なことだと声に出して言える。底抜けに明るくて面倒見が良い。だけど人並みに悩んだり間違ったり反省が出来る。ごく普通の女性であるあいこですが、自分に正直に生きている、そんな彼女だからこそ清美も渋々ですが自分のテリトリーに踏み込むことを許しているように感じます。
キャラクターが面白い
あいこや清美に触れたので、もう少し深く語りたいと思います。
清美のような男性がヒロインのお相手である少女漫画は私はあまり読んだことがないです。お世辞にも容姿が整っているとは言い難く、性格もかなーり特殊。ましてや清美は昔好きだった男性の兄。
一般的に考えれば少し非常識かもしれない。それでもお節介を焼くのがあいこです。そして好きになってしまうのがあいこです。好きになってもらった相手は好きにはなれず、かと言って好きになった相手に自分を好きになってもらえるという訳ではない。
恋愛の難しいところですね。好きな相手に自分も好いてもらうのは、かなり労力を伴うでしょう(そうじゃない人もいますけど)。あいこと清美の場合はまさに、えー大変だよこのパターンは〜と突っ込みたくなります。そしてその先の展開が気になって読みたくなります。しかし二人がどうこうなる前にこの作品は終わってしまいます。漫画の終わりどきって難しいのでまぁこれで良かったのかもしれない。
やっぱり結末が一番難しいんですよね。読者が望むような終わり方じゃつまらないと思うかもしれませんし。次の展開への含みを持たせて終わるのが安全策なんですね。
それにしても初めは気色悪く感じて清美のことが、あいこの心境と重なるように次第に良く見えてくるのが面白いです。清美の新たな部分を描いていくので当然と言えば当然になってしまうかもしれませんが、それだけ入り込める作品なのではないでしょうか。
あいこを通じて清美の周りには今までなかった繋がりが生まれてきます。その中でも珍生物のあいこの姉は良いキャラクターですね。見た目が面白おかしいのに、中身は非常に現実的でしっかりしています。それとは反対に突拍子もないことを前触れなく言ったりしますが、どこか芯が通っている生き方が周りを丸め込んでしまうのでしょう。
沢山の恋愛経験を持ち、結婚もし、旦那さんを亡くしてしまうという彼女の人生の経験から発する言葉は重みがあります。もちろん全てが正解というわけではなく、不思議なことも言いますがそれも良いスパイスでしょう。
レンアイは色々ある
あいこの周りには様々な男性がおり、彼らの内の誰かを選んでいればそれなりの普通に楽しい恋愛をすることが出来たかもしれません。
ストーカーの早瀬、既婚者の前田、来る者拒まずの藤悟、一癖ある男性陣であり状況も様々で、誰と恋をしても違った恋愛を楽しめます。
その中でも最も癖の強い清美となら、恐らくまた一風変わった日々を過ごすことができるでしょう。
清美は自分ではできない他人との恋愛だからこそ漫画の中に折り込みたくなるのでしょうか。あと一つ考えたのですが、清美ってあの様子だと誰とも付き合ったことなさそうですよね。風俗に行く感じでもないですし、とすると彼は童貞ですか。
まぁ、そんなところを考えながら読むのも良いかもしれません。レンアイとタイトルにあるだけ、多種多様の恋模様を味わえる楽しい作品ですね。
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