型破りのキャラクターパワーで取り戻す家族の絆 - 家政婦のミタの感想

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ドラマレビュー数 1,147件

家政婦のミタ

3.673.67
映像
3.33
脚本
3.50
キャスト
3.67
音楽
3.33
演出
3.83
感想数
3
観た人
18

型破りのキャラクターパワーで取り戻す家族の絆

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
4.0

目次

社会現象にもなった主人公の役柄の個性

当時リアルタイムで見ていたけど
数々のバラエティでパロディが生まれたり
主人公の「それは、業務命令でしょうか」という口癖が
家庭や職場などで使われたり、

社会現象ともいえるくらいの盛り上がりだったように
記憶している。

それは、松嶋菜々子演じる、
家政婦の「ミタさん」の特異なキャラクター。


一切笑顔を見せず、心を殺し、
言われたことは忠実になんでも聞いて
不可能なことはないのか?と思うくらい
どんなことでも出来てしまう。

口調もロボットのように棒読みで
聞かれたことには、ありのままの事実を忠実に口にし
人間の心情や心理などまったく無視。

言われては困ること、知られては困ることなど
彼女にかかればひとたまりもなく
その馬鹿正直になんでもかんでもあらわにしてしまう、
その滑稽さと異様なキャラクターが、
ヒットした大きな理由のひとつではないか、と思う。


また、彼女には不可能なことはないのか?
と思うくらい、どんなことでも出来てしまう。

「できますか?」と聞かれれば
「できます」と答える。

そして、ドラえもんの四次元ポケットみたいなカバンを
常に持ち歩いており、そこから出てこないものはないのでは、
と思うくらい、どんなものでも取り出してしまう。

「ありますか?」と聞かれれば
「あります」と答える。


まるで、ドラマ「HERO」に出てくるマスター(演:田中要次さん)の
「あるよ」みたいだなー、と思ったので
両者のドラマ制作陣に共通点はあるのか調べてみたけど
どうやらそれはなさそう。


とにもかくにも
普通こんな人いないよね、というくらい
奇妙キテレツなキャラクターなのに
とてもしなやかで哀愁を感じさせる演技が
また特徴的だと思った。

「ミタさん」という人物が
なぜそんなふうになってしまったのか、
ドラマ後半でその背景が彼女本人の口から語られるけど
そのしなやかさと哀愁は、だからなのね、と納得する描き方。


松嶋菜々子が演じている、というのも
とても大きいと思う。

彼女ならではの細やかさとか精妙さが
単なる奇抜なキャラクターで終わらない、
むしろものすごく人間的な、
細やかな心情とか心理というものを感じさせる、
そんな演技となって
社会現象を生むまでの強烈な「ミタさん」というキャラクターを
生み出したのだと思う。


ドラマ終盤で
たった一度だけ、「ミタさん」が笑顔を見せるシーンがある。

この時の、神がかった松嶋菜々子の姿は圧倒的に印象に残っている。
この役の難しさと、
演技力だけでは表現し切れない領域のようなものを
このシーンに感じた。

親になりきれない父親のリアルな苦悩

このドラマで面白いなあと思ったことのひとつが
親になりきれない父親の、リアルな苦悩を描いていたことだった。

親になりきれず苦悩する、というテーマは
さほどめずらしくはないと思うけど、
私が今まで見てきた作品からすると、
母親の場合が多い様な気がするので、
父親のバージョンで描いているのは新鮮だった。


親になる心の準備もできていないのに
子供が出来てしまったことで結婚して
5人も子供がいるのにもかかわらず、
いまだ親の自覚が芽生えない父親。

そして、自分の浮気が原因で
妻は自殺。


ミタさんが家政婦として家に来るまでは
確かに、一般的には
最低の父親と言えるかもしれない。


でも、ミタさんのおかげで
子供たちにひた隠しに隠していた
妻の自殺やその原因はあらわになり、
自分自身の本心や本音もまた、あらわになることになる。


父親の自覚がどうしても持てない。
子供たちを愛してるのかどうかも分からない。
どうやって愛情を表現したらいいのか分からない。


そんな父親としての苦悩を
身体全身で振り絞って告白するシーンは素晴らしかった。


演じるのは長谷川博己。
当時、初めて見る俳優さんだったけど、すごく印象に残り、
好きな俳優さんのひとりになった。


私は親になったことがないので
親の心情というものが分からないけど、
この、長谷川さん演じる父親「恵一」の告白は、
すごくリアルだと思った。

子供が出来ればみんな親になれるものなのか、って
昔からとても疑問だった。

血縁上はまぎれもなく親子だけど
そうじゃなくて、質の問題。


世の中には 良いも悪いもない、って思うから、
これこれこういうのが「良い親」なんて
誰にもいえないと思うけど、
その代わり、
ひとりひとり、こうありたいって思う「親」の在り方とか姿って、
あると思う。

でもみんながみんな、子供が出来たからと言って、
すぐにそういう親になれる、わけじゃないと思う。


だから、恵一の告白は、
とても人には言えたもんじゃないけど
案外多くの人が抱える共通の悩みや苦悩なんじゃないか、と感じた。

よくぞ言ってくれた!って思った人も、いるんじゃないだろうか。


心の膿のようなものをありのまま吐き出せたおかげで
恵一は自分なりの方法で、
そしてミタさんの陰ながらの助力によって、
子供たちとの絆を取り戻していった。

子供たちもまた、同様に。。


この作品から改めて思うのは、
人が苦悩する原因の多くが、

「○○はこうするべき」
「○○はこうあるべき」

という、誰が決めたか分からない
自分とは違う価値観や常識に縛られてしまうこと、
なんじゃないかと思う。


そして、それに該当しない自分自身をダメだと思い、
自分の本音が言えない、
だからますます苦しむ。


一般常識という厚い壁を超えるには
ある程度の荒療治も必要かもしれず、
そういう意味でも
常識を逸脱しているような
強烈なキャラクターである「ミタさん」の存在は、
崩壊しかけていた恵一家族を救ったのだと思う。

末っ子「きいちゃん」の存在

恵一家族の末っ子、5歳のきいちゃん。
この子が、このドラマのもうひとりの主役、
と言っても過言ではないくらい、ドラマを支えていたと思う。

演じたのは、本田望結。
現在は12歳になったそうだが、当時は5歳。

個人的に、すさまじく名演技、だと思った。


子供ゆえの演技のたどたどしさは微塵もなく、
むしろすごい演技力、
だけど、いわゆる一般的な名子役にありがちな「業界臭」も感じられない。

そこが、とてもレアだと思った。

こんな子役がいるんだ、と新鮮だった。

役柄は、まるで天使。
きいちゃんの存在があるからこそ、
この家族がつながっていられる、そんな存在だと感じた。

そして、人として大切なことを一番教えてくれている、とも。


現実の世界でも、
家族の中で一番の末っ子とか、一番若い子供が
実は一番物事がわかってたり、見えてたりする、
なんてことはよくあることだと思う。

特にここ近年は、生まれてくる子供たちは
相当に魂経験値の高い子が多いとも言われていて
実際、そういう子たちと触れ合うと、
そのことを実感せずにはいられない。

つくづく、実年齢だけでははかれない、と思う。


きいちゃんのピュアな想いは
ドラマを見ていた多くの人の大切な何かを
刺激したのではないかと思う。

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