メイン4人の魅力を描いたシリーズ - たまゆら~hitotose~の感想

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たまゆら~hitotose~

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映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
5.00
音楽
4.00
感想数
1
観た人
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メイン4人の魅力を描いたシリーズ

4.54.5
映像
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
声優
5.0
音楽
4.0

目次

OVAからTVシリーズ化へ

「たまゆら」はもともとOVAの単発の作品であった。監督、スタッフとも、当初TVシリーズは想定していなかった。しかし、OVAの発売前のイベントも大盛況で、舞台の地・竹原市の旧笠井亭でも予約販売されたOVAが売れ、人気、知名度も上がってきたことからTVシリーズの制作が決まった。  

OVAでは物語の出だし部分のお話で、全4話を通して主人公・楓(ふう)に関する物語であった。脇役たちにはスポットが当たることなく、完全に主役の引き立て役に終始していた。  

本作~hitotose~ではそんな脇役たちにも活躍の場がある。本作以降は、もちろん主人公の成長物語ではあるが、脇役たちも含めた4人の成長物語であるともいえる。

メインキャラのそれぞれの魅力

アニメなどの作品では“当番回”というものがある。主人公以外の脇役が主役を張る回のことである。本作では第2話がかおる、第3話がのりえ、第4話が麻音の当番回となっている。ここで初めて脇役たちにスポットが当たる。過去の楓の来訪をどんなふうに思っていたのか。過去にどういうエピソードがあってスイーツを作るようになったのか。両親や生まれ育った島の雰囲気を通して本人の性格が分かる。この当番回を通してその人物の魅力が強く伝わってくるから、より感情移入でき、共感でき、そのキャラが好きになっていくわけである。本シリーズは、キャラの魅力を描いたシリーズと言っても良い。

過去に戻る第1話、第6話、ストーリーを補完するCDドラマ

また、本作は第1話の時系列がOVAの半年前に当たる主人公中学3年夏からスタートするという独特の面白い出だしになっている。第6話でも過去話になっていて、現在とのつながり、友達関係の始まりについて語られる心憎い作りになっている。  

9話では本作で登場するピンクのねこ、ももねこ様を主役にした話になっている。これは同じスタッフの作品「ARIA」でもねこのアリア社長を主役にした話があったこともあって、ねこが主役の話というのは佐藤純一監督作品の定番の一つになっている。  

また、TV放送前にはCDドラマが発売されており、第1話でいきなり登場する旧友ちひろちゃんや、第8話の喫茶店でのセリフなどはこのCDドラマの内容とつながりがある。もしTVシリーズを見てよくわからないセリフだと感じたらCDドラマを聴いてからもう一度見てみると、疑問が解けるだろう。

監督の体験談を参考にした話も

第7話の、“雨上がりの憧憬の路”のエピソードは監督が体験したことが基になっている。ある年の竹原での憧憬の路、監督は取材にやってきていた。その時に雨が降り、竹筒への点灯は中止になるかもしれないという話も出たそうだ。しかし雨は上がり、竹筒に火が入れられた。雨上がりの濡れた道に竹筒の光が反射して、とても幻想的だったということである。監督はこれを見たときに、これをエピソードとして取り入れようと決めたとのことである。この第7話はかおるの今回の憧憬の路に対する思いが印象的な話になっているが、監督の体験エピソードだと知ってみると、また違った感情をもってこの話を見ることができる。  

第12話の車立往生のエピソードも監督の体験談だとのことである。作中と同じく、現地の人が温かく、親切にしてもらったということである。そのエピソードがなければ、第12話のこの場面はどう変わっていたのかを想像するのも面白いし、作中の人の温かさが、実際にあったことだと思うと、何だかこちらもうれしい気持ちにさせられる。

聖地巡礼のもう一つの方法

聖地が存在する作品の見方、味わい方として、現地に行ってみる、ということがある。本作では主人公たちが住む竹原市をはじめ、主人公の祖父や友達の実家がある大崎下島、第8話で出かける呉市内など、実在する場所の描写が多数存在する。現地に行って、主人公たちと同じ景色を見てみるというのも、だいご味の一つである。

一方で、ここではさらに踏み込んだ味わい方を紹介する。“主人公たちと同じ行程をとってみること”である。例えば、第5話の黒滝山。主人公たちは竹原市内から約14kmの道のりを歩いて黒滝山まで向かっている。およそ4時間かけて登山口までたどり着いた。これを再現するわけである。筆者も経験済みなのだが、想像以上にキツい。筆者は春に実行したわけだが、主人公たちは夏真っ盛りの時期に歩いたわけである。体力あるな、さすが高校生だな、という思いがした。このように主人公たちの行程をそのままたどると、普段の聖地巡礼よりも、もっと登場人物の気持ちが分かり、親近感が涌く。

この、いわゆる“足跡追跡型聖地巡礼”は、OVAシリーズの十文字天文台(呉市豊島)や次作~もあぐれっしぶ~の宿根の大桜(竹原市下野町)でも可能である。もちろん筆者は両者とも体験済みである。これを経験すると、さよみさんへの見方が変わる。ただの“プチ秘境オタク”ではなかった。プチ秘境探検の目的地到着時、メンバーは決まってオーバーリアクションで謎の感動に浸っているのだ。無論、そこにある景色は素晴らしいものなのだが、長時間歩いてたどり着いたという達成感がプラスされることで、その素晴らしさは何倍にもなる。それがあのオーバーリアクションにつながっているのだ。さよみさんは“感動プレゼンター”でもあったわけだ。この達成感をぜひとも味わっていただきたい。

ちなみに、先ほど紹介した“宿根の大桜”は「たまゆら」での放送により来訪者が増えたことも一因となって、竹原市初の重要文化財(天然記念物)に指定された。本当に見事な桜である。こちらもぜひご覧いただきたい。

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