小説の世界観をそのままに!
挿絵も漫画化も同じ人というのは贅沢!
累計650万部突破と角川ビーンズ文庫の彩雲国物語のHPについていました。最初の1巻を手に入れ、2巻、3巻と読み進めるけど、どんどん巻が進んでいくにつれて地方の書店では手に入らなかった本です。予約しても入らない。でも、東京の書店で平積みしてある姿を見て、すごく悲しくなりました。地方の書店にも回してくださいと言いたくなりました。それほどの大人気シリーズ小説の漫画化です。贅沢なことに挿絵の由羅カイリ先生での漫画化。結構ここで挿絵は違う人というのもあります。三川みり先生の「シュガーアップルフェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精」挿絵はあき先生なのですが、漫画化は別の人、幸村アルト先生です。だから、贅沢だなと感じました。由羅カイリ先生で彩雲国の漫画化が読めるなんて!
中華風ファンタジーの世界
彩雲国物語は第1回角川ビーンズ小説大賞を奨励賞&読者賞をダブル受賞した作品です。この年に受賞した3作品読んでみたのですが、好みもあるとは思いますが、私は彩雲国物語が一番好きでした。雪乃紗衣先生、今は角川ビーンズ文庫からではなく、新潮文庫からレアリアが出ています。シリーズ化しそうですね。彩雲国物語をきちんと終わらせてもらったことには、すごく感謝です。漫画化としていますが、あとがきに雪乃先生から「同じミカンを見て私は蜜柑と文字で書き、由羅先生は絵に写しているわけです。その意味で、この本は「コミックス版」ではなく、正真正銘「彩雲国物語」なのです。」秀麗が質素な暮らしをしている場面では、質素な髪型ですが、後宮に入って王の妃になる場面では、髪型が華やかになり毎日違います。生花と布のみで髪を飾っているであろうときには、初々しく髪を垂らしています。かんざしなどがメインのときは、結い上げてあります。彩雲国は、登場人物の数が多いので、描き分けが大変だったろうなという苦労観がすごくわかります。秀麗以外美形がやたらと多く登場するのです。男性も女性もたくさんの人だらけで、こんなに登場人物が多いのも珍しいのではないかなというほどです。物語のひとつひとつの物が想像の世界でしか見えないものなので、この世界観を出すのに苦労したのではないかなと思います。中華風のファンタジー物なので、中国にある二胡という楽器とかは実在したものですが、服の感じとか絵とかちょっとした物すべてが自分の想像の世界と現実の物を取り入れてあると思います。雪乃先生のあとがきを見たときは、思わずうなずいてしまいました。
小説の雰囲気を崩さずにしっかりとひとりひとりの人生を描いてある
小説の世界観を崩さずに絵にするというのは、本当に難しい。彩雲国物語はその中でも期待を裏切らなかった!ひとりひとりの物語が複雑に入り混じります。劉輝は政事をしない王様、でも勉強も武術もできる男、何でも手に持っているようだけど愛情は手にいれることができなかった王。秀麗は愛情いっぱいの家庭で育った。お嬢様なのに家計は苦しく、白いご飯に憧れる16歳。秀麗の父、邵可、府庫にいて日陰の官職でいながらも皆から一目置かれる存在。裏の顔は黒狼と呼ばれる存在だった。ひとりひとりの人生観をしっかりとしたベースで描いてあります。小説に負けず劣らず、漫画でもしっかりと面白いところは面白く、シリアスな場面とのメリハリをはっきりと。実は小説もこの辺りが結構おもしろかったりするのです。この差がいいのだと感じます。だから、後半シリアスシーンが出てきて、犯人特定のときに最後の最後までわからなかったりします。漫画でもそれを十分に発揮できてていいですね。番外編のまんじゅうの味は・・・で泣いてしまいました。劉輝は、3~4歳からいじめられて育ってきた。小さい頃から人の顔色を見てきたので、黙っているだけで邵可が亡くした人がどれだけ大切だったのかがわかったのだと思う。小さい心を痛めて必死になって心を何とか慰めようとしているのがわかる。自分ができないと思っていたことをやると言って、精一杯の心で慰めようとしている様子が伝わってくる。饅頭の蒸し方の本を読んで覚え、宋将軍の兜をそっと借りてくる辺り、アイディアがいい。それを邵可は、咎めるのではなく、一緒に饅頭を蒸かしています。出来上がって食べる瞬間に邵可は泣いてしまう。小さな小さな秀麗の手によって作られた本当に小さなお饅頭。それは妻が作った大きな大きな蒸籠いっぱいのお饅頭がもう食べられないとわかって思い出して涙がでるシーンです。秀麗が大きくなって、それが本編に出てくるお饅頭の大きさが違っています。小さな小さな手で握るお饅頭は本当に小さな物だけど、16歳の秀麗が握る饅頭は少し大きな仕上がりになっています。その違いがはっきりと描けていて、それが小さな秀麗が必死になって作った感が伝わってきて、また涙を誘います。劉輝はこの饅頭を食べて大きくなったと言っても過言ではないような気がします。まだ出会う前から、この饅頭を作る娘に会ってみたいと思わせるあたりが本編ときっちり繋がっていて短編ながらもいいお話しです。
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