次回作のための伏線なのか疑問がちりばめられているストーリー展開
サイモンは人間だったはず
サイモン・ルイスはクラリー・フレイの幼馴染で、クラリーと一緒に行動するうちにシャドウハンターたちともに行動することになります。普通の人間には見えないシャドウハンターですが、サイモンは急に見えるようになっています。ジェイスに自己紹介をするとき「鍵の番人(キーマスター)」だと自分のことを言っていたので、「それでジェイスが見えたんだ」と思いましたが、まったく関係なかったようです。サイモンが自分をなぜ「鍵の番人」といったのかはよくわかりませんが、ゲームおたくを強調するためのセリフだったと思われます。サイモンはシャドウハンターどころか妖魔まで見えてしまっていて、霊感の強い人の近くにいると霊感が強くなると言われますが、その類だったとしても急展開すぎるでしょう。シャドウハンターの隠れ家についていくところまでは成り行きでついていったとしても、魔法使いのところに一緒に行ったり、吸血鬼に捕まったり、最後にはシャドウハンターたちとともに戦うなど、サイモンは単なる人間なのにおとなしく巻き込まれているところは、お人よしすぎる気がします。アレクはクラリーにみんなを危険にさらすから、研究所から出て行けと言いますが、完全に部外者であるサイモンが研究所にいることのほうが不自然でしょう。
吸血鬼にさらわれたあと、クラリーはサイモンに噛みあとをみつけますが、そのことについては何も触れません。触れないどころかそんなことなかったかのように誰にも告げられていません。サイモン自身は目がよくなってよかったという話でしょうが、それも噛まれたことによるものなのかどうかは断定されていません。この世界の吸血鬼は噛まれても吸血鬼にならない設定なのか、それならば噛まれたあと目がよくなったのはどうしてか、原作は三部作となっているので、そのあたりも含めて次回作を踏まえた伏線として位置づけられているともとれる展開です。
意外と複雑なクラリーをとりまく人たち
クラリーは母であるジョスリン・フレイと母の恋人のルーク・ギャロウェイと一緒に暮らしています。ジョスリンはもともとシャドウハンターで、クラリーもその血を引き継いでいますが、妖魔にジョスリンをさらわれるまではそのことを知らずに育ってきました。ルークは人狼でクラリーたちが住んでいる町の人狼を束ねているようです。サイモンは幼馴染でクラリーに片思いをしていて、クラリーもサイモンのことを大切な人だと思っていますが、恋愛感情ではなく家族愛のようなものなのでしょう。クラリーの家の隣にはマダム・ドロシアが住んでいて、彼女は魔女です。人間として暮らしていたクラリーですが、まわりで人間といえる人間は、実はサイモンだけだったことになります。
クラリーがシャドウハンターの血をひくとわかってからは、もっと複雑になってきます。敵でジョスリンをさらったヴァレンタインいわく、クラリーとジェイスはヴァレンタインの子どもで、二人は兄弟であるとのことです。ヴァレンタインとの記憶を見せられてすぐに自分はヴァレンタインの息子だと信じたジェイクですが、クラリーの場合肝心のジョスリンが眠ったままだったので、実際のところ本当に娘なのかどうか確信を得られないままでした(ここも次回作の伏線なのでしょうか)。同じシャドウハンターは他にアレクとイザベルの兄弟とホッジが同じ研究所に住んでいます。アレクはジェイクに恋心を抱いており、ホッジはクレイブにかけられた呪いを解くために、ヴァレンタインに味方しているなどシャドウハンターたちも複雑な状態です。
封印によって操られる人間の記憶
クラリーとジェイクは記憶を封印されていました。クラリーは一流の魔法使いと言われているマグナス・ベインにシャドウハンターに関する記憶と、妖魔などをみてもその記憶を消してしまう魔法によって記憶を封印されています。モータルカップ(聖杯)をマダム・ドロシアに渡したカードに隠していたジョスリンですが、クラリーにもある「物体を紙に封印する力」も記憶と一緒に封印したようです。ジェイクもヴァレンタインに、子どものころの記憶を書き換えられていると言われますが、ジェイクは誰に記憶の書き換えをされたのかは明かされていません。書き換えられたのはヴァレンタインの子どもということを伏せたかったからということでしょうか。
魔法はベインによって強力にかけられていました。サイレントブラザーたちによって記憶を呼び覚まそうとしましたが、強力すぎたためかけた魔法使いでなければ封印が解けないということでした。魔法は一定期間すぎると弱まり、クラリーがルーンを書き出したら封印が解けかけている合図ということでした。クラリーのシャドウハンターとしての血が、魔法の封印解除を速めているかのようでした。シャドウハンターとして妖魔と戦っている間に、いろいろな記憶がよみがえってきています。これが魔法の封印が解かれつつある現象ということなのでしょう。
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