学園ドラマの根底を打ち砕く一作
女王の教室は放送当時、賛否両論の大きく分かれる一作としても知られています。その理由としては従来の学園ドラマとカラーが大きく違う点にあるだろう。学園ドラマと言えば、3年B組金八先生、ごくせん、GTOといった不良たちを改心させ、成長を描いてきた熱血学園ドラマがイメージされやすい。しかし、この女王の教室はそれらと全く逆の性質で学園ドラマにアプローチしている。それは天海祐希演じる鬼教師阿久津真矢に要約されている。
阿久津真矢は勉強・スポーツ・音楽とあらゆるジャンルに精通しており、それらの知識や技術は他の教師の舌を巻くほどである。さらに6年3組の生徒24人全員のこれまでの経歴や秘密などを握っており、生徒に恐れられる存在である。彼女の主に行ってきたことはテストの成績により扱いを変えるだけでなく、最下位2名には給食当番や掃除などの雑用を全部行わせる、班を作り問題を起こした際は連帯責任を負わせるやり方、夏休みを補習にするなど厳しさの片鱗を生徒たちに見せつけた。これらのことが視聴者の中には問題視する人も存在し、抗議になった程でもある。しかし、物語を重ねることで阿久津真矢の本音を少しずつ解釈することができ、応援する声も増えてきた。私の中では、阿久津真矢という存在は熱血教師というものを従来のものとは全く違う形でアプローチしてできた存在と考えている。なぜなら、物語の中で厳しさの中にも優しさも備えており、生徒の一人である神田 和美とのやり取りの中でそれは伺える。作中でも神田 和美が悲観にくれている場面で真矢が登場し、叱責する場面があったのがそう思えるポイントでもあり、主人公を大きく成長させた部分でもあろう。他の生徒に対しても同様に試練を与え、ひとつひとつの困難に乗り越えさせていく場面を何度も作ってきた。本当の優しさがなければ、試練を与え、要所要所で登場しないのではないかと思う。それほどまでにこの阿久津真矢という存在はこの物語では大きな存在である。
作品を見る上では、鬼教師阿久津真矢もそうだが6年3組の生徒24人の視点で見ることが大きなポイントになる。前述した神田 和美を筆頭に24人の生徒の成長劇を見ることができる。神田 和美は阿久津真矢が見極めたクラスの中心人物であり、各エピソードを語る上では欠かせない存在になっている。なぜなら彼女との邂逅により大きな変化を見せたクラスメイトが何人もいるだけでなく、その家族をも変えていったのである。神田 和美が成長するにつれ、周囲の人間が成長していくのはこの作品の見所でもある。その他にもこの放送を通して、解決していく問題がいくつもあり、それを軸に見るのもまた楽しむポイントのひとつにもなるであろう。
この作品は共感できる部分も大いにあるが、逆に問題視される部分も少なくない1作になっている。しかし、この作品で取り上げられていることは現代社会で起きている問題でもあり、現代社会の縮図を見ている感覚にもなる。実際、これらの問題をこの作品を非難している人達は解決しているかどうかも怪しい部分もある。ひょっとしたら感情的に非難しており、理路整然としたものは少ないのではないかと感じている。この作品を通して、現実に起こりうる問題に自分はどう対処するのか、はたしてそれができるのかを考えさせられる部分も大きく、1度全話視聴してみるのもありではないかと思う。従来の考え方を大きく覆す1作にも仕上がっており、放送から10年以上経過しているが現在放送している作品と対等に渡り合えるものではないかと思います。
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