営業の牧田。ちょっとツラ貸しな。 - 営業の牧田です。の感想

体育会系ってちょっとうざい

大手企業に多いが、体育会系とは厄介だ。お酒を死ぬほど飲めればいい、先輩にゴマすってればいい、成果をあげなくてもそれで出世するなんてふざけんな仕事しろ、とよく思っている。体育会系の人と付き合っている女も女だと思っている。本能的なものかは知らないけれども、自分の頭で物事をたいして考えずにウェイウェイ言ってる奴と付き合ってる女もバカなんじゃないか。大体そんな男って、女の顔と体しか見てなくて、とりあえずちょっと綺麗にしてる空っぽな受け身の女とひたすらセックスできればいいんだろう、と思っているし、会社にいる体育会系の先輩は愛嬌だけでやり過ごしているけど後輩から見ても全然段取りとかできていない仕事できない人で、割り食ってるのはこっちだふざけんなだし、何が言いたいかというと、私は体育会系への偏見がひどい。この漫画を読み始めた時も、飲料メーカーなんて体育会系の集まりの最もたるところだし、そいつらの恋愛なんて眉唾物だわ、と思っていたがとりあえず目についたので読み始めた。どうせ牧田が苦労しながらも出世して、最終で帰ってもおかえりと言ってくれる奥さんをもらって、2人の子供に恵まれ郊外にマイホームを買って、ついでに犬まで飼ってしまう、ウルトラ平凡サラリーマンサクセスストーリーだと思っていたのだ。

でも、牧田ってリア充じゃない

しかし、読み始めて印象がガラリと変わった。だって単行本1巻の最初のページは（カラーにも関わらず）牧田が自身の愚息に、生まれてきた意味を問いかけているところから始まるのだ。このページを読んだだけで、もう絶対間違いなく牧田はモテない。息子を使い切れておらず愚息にしている、完璧に非リア充決定なのだ。記念すべき単行本第1巻巻頭カラーの最初のコマがモザイクの男性器から始まるところに、作者・編集者の意図を感じた。最初の1ページでアンチ体育会系の私は牧田に好感を持った。と、言ってもそれは後で覆ることになるのだが。そして、どう考えても非リア充の牧田が、体育会系の会社で体育会系らしく朝のラジオ体操をし、朝礼でどやされる。たった10ページで牧田が非リア充でうだつの上がらないタイプのポジションであることがわかる。ここでぐっと牧田に親近感を覚える読者も多いのではないだろうか。体育会系社会人からイメージするサラリーマン像といえば、週に3回は先輩と夜更けまで飲みに行き、花金は合コンで朝まで飲みあわよくば持ち帰り、土曜日は本命彼女とデートし、日曜日は筋トレして自己を高める、みたいなイメージだが、牧田は違う。とにかく、牧田ってリア充じゃない。

営業って辛いよね、、、

私自身も営業職なので、牧田に共感するところはたくさんあるのだが、営業職は相手によって天国にも地獄にもなる。先方の担当者と合わなければかなりの地獄。とにかく意地悪されるし話も聞いてもらえない。生ゴミのように扱われることもしばしばだ。合う合わないは自身の責任ではないとは思うが、やはりうまくことを進められない自分って社会不適合で人間的にやばいのかな、と落ち込むこともある。小売店のバイヤーとか店長は、安い月給で拘束時間が長いところが多いから、大抵ストレスが溜まっており余裕がない。そう思っていても、怒られるときついし、自社の商品の仕入れが少ないとか展開がよくないとか評価に関わることだ。スーパーの店長に商品のプロモーションをどうこう言われるのは仕方ないといえば仕方ないが、笑顔が笑ってないとか人格的なことを言われると堪える。うるせえよボケなんて言えないし、牧田は攻撃的なところがないから素直に落ち込んでしまっている。そういう牧田を見ているといい人だなぁ、しかしまあいい人すぎるのでない？と心配になってしまう。うまく母性本能をくすぐるようなキャラだな、と感心する。だから牧田は漫画の中でも女性から気に入られるのだ。

アラサーの恋愛の重さ

アラサーともなると、第3次結婚大戦が始まり、パートナーのいない女は焦る焦る。その戦争は25前後から顕著に始まり、その辺の年齢で彼氏と別れた女の落ち込みと焦りは計り知れない。小松さんは素直だから素直にそんな焦りをぶつけてしまうが、男が引く発言でもあり、ちょっと痛いアラサーの素直な意見だ。女と違って男は出産の期限とか、年食った方が味が出るだのなんだのあるから、アラサーは男の方が余裕なので、アラサーの男女の恋愛は重さが違う。男はまだ遊びたいし〜なんて平気で言える歳である。しかしまあ、付き合うかの瀬戸際で、結婚を全く意識しない牧田は、ぼんやりしすぎかなと思って冷める小松さんにとても共感した。28歳なら周りも結婚しているし、考えてもいいはずなのにしっかり人生設計できてないなんてダサい頼りないと思い、ここで可愛いと思っていた気持ちが冷めるのであった。

牧田みたいにかっこ悪い社会人でも学生からみればかっこいい

タイトル通りだが、牧田みたいにかっこ悪くても社会人で自由になるお金があったり、人間関係にもちょっとこなれているだけで学生からみれば同級生と違う大人でかっこいいのである。舞ちゃんが大人になってもっと男性に慣れてきたら振られるから、振っといて良かったのでは。しかしまあ、牧田は28歳になってやっと泣いている女の子が熱いとか気付くあたりどんだけ女に縁のない学生生活だったのか。だから深みが足りない、スマートさが足りない、そんなんだからスーパーの店長にも当て馬にされんだよ！とイライラする気持ちを抑えても、体育会系非リア充とは物悲しいかな。8つ下の女の子にモテてデレデレしてんじゃねーよ。と、まあアラサーの私は思うのだけれども、これは嫉妬混じりのdisである。

女友達好きになってんじゃねーよ！

とにかく志帆との件はぞわぞわした。もう、勘違いしてんじゃねーよ！お前は友達！無理なの！！と、何度心の叫びと葛藤したか・・・これだからモテない男って・・。志帆はサバサバ系だと思うけど、多分彼氏にはすごく尽くすタイプでしょ！？そんな志帆が牧田の前で滅多にデレないじゃん！？なんで無理だと察しない！？でも君が好きだから好きでいいのか？？と、確かに人を好きな気持ちは他人が否定できないと反省しつつも、だからお前モテないんだよ、と思った。牧田みたいな男って、仕事がうまくいってない時は女に頼りたくて、こっちが頼りたい時はていのいい返事しながら適当に話聞くだけで、実際に動いてなんかしてくれるタイプではないな、と人がいいだけのダメ男認定をした。営業方法を見ててもそうだが、やってほしいって言われたことをやるだけじゃなくて、言外の意味とか、その人が気づいてほしいところを察するとか、そういうことできないで言葉をまっすぐに受け止めて落ち込んでうだうだしやがって・・・。しかもなんか行動が的外れで、痒いところに手が届かないっていうかもう、ないわ、この人。状態になった。

こんだけ言ったけど

でも牧田って、人を騙そうとしたりしないし自分にすら嘘をつけない人間だし、嫌いってなかなか言えない奴。イライライラライするんだけど、でも嫌いかって言われると嫌いじゃないけど、なんか一言キッツイ一撃かましたくなるし、なんかなんか、、、これと言ってここがかっこいい！ってとこはないのだが、でもたまにかっこいいかも？な時があって、まっすぐなところとか飾らないところとかを、ずっと見てるとありなのかも・・？とか思ってしまうところ、牧田マジック。でも私は牧田と結婚したら後悔すると思う（笑）こんなことを考えながら、平凡な幸せってバカにできないし得難いものだよねって思いながら読めた漫画でした。