新感覚の本!
まるで台本!
状況や場所の説明が1行か2行ある程度で、他はすべてが台詞という構成に驚きました。しかし台詞だけであってもそれぞれのキャラクターの心の動きがわかるような巧みな表現で、状況把握が苦になりませんでした。また登場人物も「魔王」「勇者」「メイド姉」などで、場所や人物の容姿など想像し放題というところが新しいと思いました。あまりに台本に近いので、友人と役を分担して読んでみました。あまりにも台詞が長くて疲れたりもしましたが、台詞のみの描写であるために各人で台詞のテンションが違って新しい発見がありました。個人で読んで面白いだけでなく、感想会を開催しても議論に幅が出て楽しめる貴重な本でした。
きっと世界平和ってこういうこと。
題名から最初は魔王VS勇者の本かと思いましたが、予想を裏切る魔王と勇者の和解を通り越した仲良しな本でした。二人で手を組みやることが、食糧難解消のために芋の栽培などファンタジーではやらないことが目白押しで思わず笑ってしまいました。しかし作中の魔王の弁舌を読むとなるほどと納得してしまいました。ファンタジーでも現実と変わらない部分はあるよなと。世界平和を望む魔王が本来敵である勇者と手を組むことを躊躇わず、勇者は平和のために敵を信じて協力する。弱者を見捨てることなく、強く生きて行けるようにと道を示す登場人物たちはとても輝いて見えます。国家問題でも個人問題でも敵対ばかりするのではなく、平和のために一人一人が考え努力することの大切さを考えさせられました。またただ優しくするだけでなく、困っている人たちに厳しくも道を示すという難しい人の助け方も目指すべきもののひとつだと実感しました。
キャラクターの意志の強さに魅かれました。
強く平和を願う魔王や勇者は言うに及ばず、胸を打たれたのは終盤のメイド姉でした。メイド姉は登場当初は意志が弱く気も弱いイメージで、ただ妹を大切にしているという印象しか持ちませんでした。それが平和への意志の強いキャラクターたちに囲まれて生活していくうちに、何事にも一所懸命に自ら進んで打ち込む姿が輝いて見えるようになりました。それだけでも十二分に成長したと思えるものでしたが、終盤彼女は危機に瀕した状況で民衆を鼓舞するのですから驚きました。弱々しかった子が多くの人間の意識を変えるその場面は、現実にはなかなか起きません。どんなに怖くても、死にそうな状況であっても、正しいと思うことのために声を上げることの大切さを説かれた気分でした。日本では昔からメイド姉のように声をあげることが忌避される傾向にありますが、彼女のように意見をはっきりと言えるような、それを聞く体制をもつ社会が理想だと思えました。
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