設定の濃い、上達していく画力が魅力なバトル漫画 - アライブ-最終進化的少年の感想

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アライブ-最終進化的少年

4.504.50
画力
4.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
4.50
演出
4.50
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設定の濃い、上達していく画力が魅力なバトル漫画

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.5

目次

能力者となった少年少女たちの争いの行く末を追いかける

幼い頃、両親を交通事故で亡くし、養護教師の姉と生活する叶太輔は、幼馴染の落合恵、そして親友でいじめられがちな広瀬雄一と共に普通の高校生活を送っていた。ある日の授業中、太輔は「何か」が自分の中に落ちて来たのを感じる。そのときは気のせいとやりすごすが、広瀬もまた、同じ感覚を感じていた。その日の帰宅途中、自分の目の前に笑顔の少女が飛び降りて来て自殺した。それを見て一瞬、羨ましいと感じてしまった自身の変化に大きく戸惑う。また、ときを同じくして、日本全国、世界各国で、自殺者が相次いでいることを知り、動揺する太輔だが、後に広瀬が自身をいじめていたグループ全員を殺してしまうという事件が発生し、彼を取り巻く環境が一変する。能力の獲得、旅立ちへとつながる悪夢の一週間の始まりだった。

だんだんと上達していく画力が魅力!!

現在はノラガミを描いているあだちとか先生による作品であり、ノラガミでみられるきれいな絵が完成した作品であると考える。一巻ではあまり上手とは言えない画であったが、10巻辺りからの画力は大変素晴らしいというほかない。能力者同士のバトルではその画力が大変活かされており、手に汗握る激しいバトルが伝わってくる。様々な能力があるのだがそれぞれの能力の絵がきれいであり、丁寧に描かれていることがわかる。設定の面でも素晴らしいものを感じた。特に能力についてである。能力者は様々な個性的な能力を持っているが、今までの能力者バトル漫画のような一般的に想像できそうな能力だけでなく、本当に個性的で他の漫画では見たことがないような能力が多い。また、能力ごとにどんな特性を持っているかなどかなり設定が練られているように感じた。後半では国を介した話にもなってくるので国家間でのやりとりや軍との関係、登場人物の過去などにも焦点があてられることが多くなっており、なかなか面白い。

能力と能力者の関係

能力者同士のバトルでは能力をぶつけ合ったりする感じではなく、どちらかというと泥臭い感じのバトルを繰り広げるアライブだが、私の好きだった能力はやはりシャボン玉である。空気を圧縮したシャボン玉をいくつも作り出せる能力であるが、見た目とは裏腹に強力な能力であることと、その能力者である由良のキャラクター性が好きだったことが理由である。この漫画では能力は能力者のキャラクターや過去のトラウマに依存して現れるという特徴があり、由良の場合は自身の絵を評価される前に消したかったことから、はじけてきれいになくなるシャボン玉が発現した。他の場合では容貌が爆発したようであったことから、爆発に関係する能力が発現していたり、飛びたいという夢から風を操る能力が発現したりなどしている。この漫画では能力者たちを進化した人間と表現しているが、それぞれが何かしらの欠陥やトラウマによる言動を持ち合わせており、能力や身体能力以外の進化した人間としての要素を持ち合わせているどころか、むしろ人間らしくて面白かった。非能力者たちの登場も多いのだが、それぞれのもつ信念や感情が表現されており、中には能力者よりも能力者っぽい人間もおり、その登場もなかなかに面白い。能力が発現するきっかけは「何か」が自身に落ちてきたことが原因とされており、この「何か」は後に進化し続けた生命体の精神集合体であると表現されており、それが自身のトラウマでできた心の穴の大きさを超えていた場合、自殺に走り、超えていなかった場合には能力者となることが日にわかるようになる。また、この心の穴の大きさが大きいほど能力が強いという設定であり、登場人物のトラウマの大きさも表現されているわけであるが、やはり登場人物の中でも広瀬の心の穴というのは相当な大きさであることを感じた。能力が「穴」であることも闇の深さを感じるが、能力が発現したトラウマが太輔への劣等感であり、能力者となって優越感に浸れるはずである立場になっても、勝俣という元警察官の洗脳も原因ではあるが、能力であけられる穴がだんだん大きくなっていることや、最終巻では太輔が死んだと思ったら活動を停止するなど彼が太輔に抱く劣等感の大きさを物語っている。太輔に対して優越感に浸ろうと恵を誘拐して自分のものにしようとしたり、簡単な挑発にも乗ってしまうなどその行動の随所に表れており、広瀬という人物像が表現されている。私はこの作品を読んでいく中でよく妄想するのだが、もし太輔が能力者ではなかったとしたら、広瀬はここまでの劣等感を抱くこともなく、恵を連れ去ることもなかったかもしれないということや、勝俣の思惑通りに動いていた可能性、広瀬自身がアクロの心臓という心の隙間を埋めてくれる存在を求めたりすることもなくなっていたのではないかと考えることが多い。感情や過去など能力という形での表現の仕方を上手に受かっていた作品だと思う。

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