ずっと解けない謎 - さよなら渓谷の感想

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さよなら渓谷

4.004.00
映像
3.00
脚本
3.50
キャスト
4.00
音楽
3.00
演出
4.00
感想数
1
観た人
2

ずっと解けない謎

4.04.0
映像
3.0
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
4.0

目次

ちょっと不気味な距離感

側から見ればただのカップルなのかもしれないが、踏み込んでみると加害者と被害者。レイプをし、された関係。そんな過去を持つ2人が一緒にいるのがなんとも不気味で怖い印象でした。お互いに心の大事な部分は完全に閉ざしてしまっているので、観ている方も気持ちを探ろうと入り込んでしまいます。恋愛感情があるのかないのか、レイプされたこと、レイプしたことによって性行為そのものの意味がかわってしまったのではないか、とすら感じさせられます。なんだか淡々としていて、感情がないようで、でもやらなきゃいけないような。毎日の歯磨きのようにやらなきゃいけないけどそこに気持ちはないといった印象を受けました。欲情は満たしているけど、愛情はまるでないようにも観えました。そのせいか真木さんの豊満なボディからはエロさというものより、悲しさや虚しさと言うような虚無感が漂っていました。

許された加害者と許されない被害者

レイプをした加害者はいつの間にか普通の生活をし、レイプをされた被害者はいつまで経ってもレイプされた事実を抱えて生きていかなければならない。被害を受けてかわいそうね、と言う視線が純粋な同情ではなく、そんな過去を目を細めて遠くから眺めるような軽蔑を含む視線であること。それがあからさまに描かれているのではなく、ある瞬間に「ああ!そう言うことだったのか!」と、思いました。レイプをしたのに許されてしまったことへの罪悪感。レイプをされて、もう自分は汚れてしまったんだと言う罪悪感。それが2人の影の意味なんだと思います。

幸せへの拒絶と罪悪感

2人が抱えた過去は15年経って、小さくなるどころか大きくなってしまったのだと思います。普通に生きてはいけない。幸せになってはいけない。2人がホテルでビールを飲むシーンはとっても幸せそうに見えるものの、どこか素直に幸せを感じられないような幸せを押し殺しているようにも観られます。まるで私たちは一生幸せになってはいけないし、過去を抱えていきていかなければならないのだと言っているかのようでした。それと同時に幸せの意味を見失った2人が寄り添って、共に幸せの意味を探しているかのようにも観えました。加害者と被害者と言う立場の違う2人が気が付いたら同じ気持ちを抱え、同じところに立っていたのかもしれません。そう思うと2人から漂うぶきみさや15年経っても一緒にいる意味というものが納得できる気がしました。

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