パクリパクリという前に読んでみるべき
しっかり考えられた設定に基づいて描かれたストーリーとキャラクター
この漫画のあらすじは簡単に言うとケンカ最強の不良軍団が高校サッカー日本一の高校を倒すというストーリーです。結構ありふれた設定ですが、この作者は前作「ゴーアンゴー」でもそうでしたが、あらかじめ結末を用意してから、それに至る経緯を綿密に描くため、ありふれた設定でも読んでみると非常に面白いです。1巻の表紙、まえがきで出てきたシーンが物語が最終盤となった36巻に再登場するあたりからもそれは分かります。また設定を活かした魅力的なキャラクターづくりも特徴的です。挫折や苦悩を経て成長する人間味溢れる脇坂や不良軍団の中にあって唯一真面目なキャラでアクセントをつける百瀬などが魅力的です。
漫画特有のファンタジーを含みながらもリアル感溢れるサッカー描写
上達スピードが早すぎるという漫画ならではの描写はありますが(作中ではケンカ最強軍団は運動神経も抜群だから上達スピードが早いという設定)、ありえないほどドリブルで相手をかわすとか必殺シュートで点を取るといったような描写はなく、一対一のシーンを作るためにいかにパスをつなげるか、サイドチェンジで突破をかける、というような現実のサッカーでもやっているようなことが描写されています。あまりファンタジー溢れるスポーツ漫画は好きではない自分にとっては、凄く面白かったです。
あと最後の決着がPKというのは今までのサッカー漫画にはないもので斬新でした。PKは運任せのイメージがあるため、あまり描かれませんが、一度PKで負けた試合を挟んだこととPKをしっかり練習したことで、そのイメージを軽減させることに成功しています。
名言が多く、泣かせようとする話が多い
この漫画で自分が一番気に入らない点は「マネージャーが死ぬ」というお涙頂戴の設定です。作者は全力で読者を泣かせるようなシーンを描いてきます。個人的にはあまり好きではないです。ただ「お涙頂戴」とは分かっていても実際に泣いてしまったことは付け加えておきます。個人的に一番お気に入りのシーンは普段感情的にならない百瀬が負けたら廃部の船学戦で後半で大差をつけられた後、うなだれるチームメートに「このチームは最高のチームだ。あいつらにこのチームを忘れられるのは悔しい」と涙ながらに発したセリフに胸を突き刺されました。この作者はお涙頂戴は多いのですが、そこに持っていくための設定や人物描写が上手いからこそ、泣かされました。
また生活に通ずるような名言も多いです。二宮の「今日逃げたら明日はもっと大きな勇気が必要になるぞ」という言葉は我々の普段の生活でもいえることですね。
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