作画の美しさ
魅力的なキャラクター設定
トラブル吸引体質の主人公桃園祐喜をはじめ、鼻血を吹き出す美少女、好戦的なイケメン、アホ紳士など、とにかく個性的なキャラクターであふれている。定番の男女逆転をあっさりと受け流すようなたくましいおじいさんとおばあさんや、筋肉ムキムキの姫など、少女漫画でよく見られるようなか弱い女の子、というのはほとんど出てこない。主人公がヒロインと言っても過言ではないほどだ。
「生まれ変わり」という設定を忠実に生かしつつ、鬼それぞれの個性がはっきりしている。鬼は悪者として扱われることが多い。当作でも鬼にかけられた呪いを解くという大筋の元に話が進む。鬼は非道、と絶対悪として見ることはなく、昔話の裏側を見つめ、人間の勝手で作られたストーリーへの批判とも見られる。
所謂モブキャラと呼ばれる祐喜のクラスメイトでさえ、トラブル吸引体質に巻き込まれるシーンでは目立つ。
ただし、登場するキャラクターの数が多いため、名前が覚えられないという欠点もある。
学園もののため学科区分もあり、文化祭のシーンでは話に深く関わってくるが、一度読んだだけでは混乱してしまうほどで、小学生には楽しめないのかもしれない。
特徴的な"眼"
日常シーンにおけるキャラクターの"眼"は、愛らしいという表現が似合う。怒りで咲羽が我を忘れるシーンや、祐喜の能力が覚醒するシーンでは、表情、特にその"眼"が豹変する。また、色気あふれる泣き顔は作中で何度も描かれ印象的だ。祐喜の涙目に鼻血を吹き出すなど、思わず笑ってしまうような涙もあれば、本当に苦しくて流れてしまう涙など、泣き顔にもいくつか種類があり、いずれも色気はあるがキャラクターの心情をはっきりと読み取れる眼が描かれている。ハイライトやトーンを器用に使いこなし、感情を"眼"で表現している。
細やかな背景と着色
作者は非常に繊細な背景を描く。テーマでもある「桃の花」や学校の校舎など、細かくわかりやすく描かれる。さらに表紙ではその繊細な絵に美しい着色が施され、書店でも目を引かれる書籍になる。作者による着色は鮮やかではっきりとしている。アニメ化を、と多くのファンがせがむのも、この美しい着色が大きく関わっているだろう。黒を基調とした背表紙と相合わさって、愛らしいキャラクターとのギャップで魅了される。
おちゃらけたシーンではキャラクターを簡略化しているため、真面目なシーンとの絵のギャップが激しい。より真面目なシーンの迫力が引き出されてる。笑いあり涙あり、とは、まさにこの作品のことだ。
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