実際にあったら面白そうなシチュエーションを見事に再現
27歳ヤクザが高校に入学という興味深いストーリー
算数がろくにできないために大きな取引を失敗したヤクザ、榊真喜男が父親の命令で高校に入学し、知性を身に着ける物語だが、とにかく真喜男のバカっぷりが憎めない。
ヤクザのボスである真喜男の父からすれば、後取りが金銭取引のための計算もろくにできないようでは死活問題なのかもしれないが、一桁の計算が二桁に突入したあたりからわけがわからなくなってしまったり、隣の席の「桜小路」という苗字の生徒のことを覚えられず、最終話まで「桜なんとか」と呼びつつけるだけでも大笑いしてしまう。
ケンカは敵なしだが学力は小学生並みの真喜男、体が弱いが優秀な大学院生の弟の美喜男、ヤクザの子分なのに裁縫が得意なカズ、舎弟頭なのに温かみのある黒井など、とにかく出てくる人物の個性がとても強烈で、その個性のぶつかり合いが毎回楽しいドラマである。
こんな先生に出会いたかったと思える作品
真喜男の通った高校は、いわゆる悪の巣窟になっているような男子校ではなく、むしろ品行方正で成績が優秀な生徒が通う私立高校である。教師たちも品がよく、元々生徒が素直なせいか、怒号や罵声、体罰などは教育上必要がないようで、何か問題が生じても熱心な対話で解決して生徒と向かい合う方法をとっているようだ。今、実際の学校の現場、とりわけ高校で、ここまで生徒にまっすぐに向かい合ってくれる教師がいるだろうか?と思う。担任の南先生をはじめ、養護教諭の水島先生の温かいまなざしは、見ているこちらも気持ちが温かくなる。真喜男を受け入れた学校長は真喜男の父の友人であるが、成人の真喜男であっても分け隔てなく温かく見守っている。生徒に接するのに私情を挟まずに平等に接するという行為は、教師であってもなかなか難しい。このドラマは、問題ある生徒とぶつかりつつ先生同士が協力し合って生徒を支えようとする姿勢が見事に描かれている。
長瀬智也さんの役者としての魅力を感じる
主役の真喜男役の長瀬さんはジャニーズ事務所のアイドルグループTOKIOのボーカリストもされており、二枚目でクールな印象で通っている。しかし、喜怒哀楽が激しく、びっくりしたり怒ったりするシーンでは、間抜けともいえる表情を顔全体で演じるシーンが多く、日頃の「クールな長瀬智也」のイメージを完全に振り切った大胆な演技をしている。長瀬さん同様、当時ジャニーズ事務所所属であった田中聖さん(子分のカズ役)も、クールなイメージから真喜男同様ちょっと知性に乏しい裁縫好きの間抜けな舎弟を演じていて、変顔も大胆に演じている点に好感が持てる。長瀬さんは役者としても色々なドラマで好演しているが、マイボス☆マイヒーローほど、大胆で力の入った演技を要求された役もなかったのではないだろうか。そのくらいパワフルで、長瀬さんの役者としての幅を広げた作品と言える。
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