何となく想像がついても見てみたらいいよ。
等身大の先生
続きが見たいなーと思わされる作品。夜野先生が次に出会う生徒はどんな人たちだろう。新しい生徒と夜野先生のやりとりを想像するだけで楽しい気持ちになります。夜野先生の勤務年数が増えるほどに、卒業生たちが先生のスナックに集まってわいわいやっていそうな感じがあって、とても微笑ましいのです。「先生」という職業はいいなあと思います。大変だけど、やりがいのあるいい仕事だと改めて思いました。
ひねりがありそうで、直球
定時制高校なので、生徒の年齢は様々。人生も色々で、個々にまつわるエピソードが各回ごとに放送されます。そういうのも落ち着いたいい流れを感じました。つまりは。見やすい。「ドラマ」にしては、特別にスキャンダラスなことはないけれど、こういう人もいるんだなあ、と「ふーん」と落ち着いてみることが出来ます。見ても見なくてもいいのだけど、見たら見てよかったな、と思えるのが良かったです。見ても見なくてもいいけど、好きな人は好きだろうな、というドラマ。ですので、今作はあまり視聴率は良くなかったみたいですね。それも納得できる感じです。何でみんな見なかったんだー勿体なーい!と思うほど思い入れはないのですが、見たことがある人とは、ちょっとお話ししたくなるような、そしてその人とは気が合うだろうなと分かる、そんな類のドラマです。
「教師もの」ではありますが、夜野先生はスナックのママです。スナックのママが教師だったら…という設定に惹かれます。まあ、「人情もの」だろうなと予測がつきます。加えて、「観月ありさもの」です。これはちょっと、おっちょこちょいな展開のお話しになんじゃないかな、とまた予測がつきます。ああ、きっとこれはシリアスな教師の話ではないし、熱血漢の教師のお話でもないだろうなーと大体わかるのです。この予想を裏切れたら、すごかったかも。なかなか強気に出たな!と至極感心するところでしたが…。思った通りだ、という土台があるのが逆に良かったりします。ストレートに面白い。
俳優さんたちも、豪華で安定感がある方たちばかり。濃くなく薄くなく。刺激には欠けるかもしれませんが、食わず嫌いならぬ、最初に見る体制へ持っていけなかったために視聴率が低かったのではないかと思います。だいたいこんな話だろう、と予想されるものを毎週1時間使って見て行こうと思わないものです。違うチャンネルで刺激的なものがあれば、そっちへ移ってしまいますものね。でも、見つめると見つめ返してくるようなドラマだったので、ハナから見られなかったとしたら、それはちょっと残念だったと思います。
住む世界と差
進学校の態度が、そのまま社会でのエリートたちの態度のように取れるところが、ちょっと怖いお話です。定時制の生徒が定時制に通う理由があるように、進学校の生徒が進学校へ通う理由があります。作中では、進学校の運営側と夜野先生の対決?シーンがパターン化されていましたが、このやり取りから、いかにエリートたちはエリートとして守られ育てれているのかが垣間見られるようでした。人間、何にも煩わされずに生きられれば、エリートになれる確率は、はるかに上がるのだと思うのです。人間同士の能力が極端に違うとは思えません。エリートになりたいかどうかという個人の考えだったり、エリートにさせたいかどうかという、周囲の環境によって、差が出てくるのでしょう。今作では、極端に校長たちの威張りっぷりが描かれていましたが、それでより「人間らしさ」について思い当たる仕組みになっていたように思います。夜野先生自身も過去に「煩わされた」一人なのです。
見せて欲しかった部分
お昼の時間の生徒と夜の時間の生徒が接触する回はあまりないのですが、時々出てきます。お互いに線引きがあるような状態です。そこをうまく乗り越えて、和に持っていくような、そういう内容の回はありません。それがシビアと言うか、こんな学校の範囲でさえも「生きる世界」が違うのだから、社会に出たらその格差がたくさんの段階に分かれて露わになるのは仕方のないことなのかと、がっかりしてしまうくらい現実的です。できれば、その辺りまでも、夜野先生の人を仲間にしていくパワーで何とかならなかったかな、と惜しい気がします。そんな物語も見てみたかった。とはいえ、夜野先生の仕事は、自分の生徒を守ることなので、この作品はこの仕上がりで良かったのでしょう。結果、守ることができたのかは分かりませんが、守ろうとしたことがとても重要で、非力な人(夜野先生)の心の強さ(クラスメイトは仲間だ)が通じて、物事が動いていくのが魅力的でした。
好きだった部分
知らなくていい人生に巡り当たってしまう人は、泣く泣くそれを運命だと受け取るのですが、その分、「運命の人」に出会うことも多いのだと思います。自分の努力ではどうしようもない運命から逃げようとしたり、戦おうとしたり、そうするときに、誰かが側にいるとどうなるのか、助けてくれる味方になってくれる人がいると、どうなるのか、それが見所だったと感じます。
夜野先生みたいな人は結構多いと思います。ただ、「先生」という役職・立場が彼女に勇気と責任感を与えていた。それも面白い所の一つです。人はやはり、何かに応えるように生きるのが一番強くなれるんじゃないでしょうか。それは周囲からの期待よりも、むしろ自分の選んだ道に対して応えるとき。エリートはエリートという自分に応えながら、先生は先生という自分に応えながら、恥ずかしくない様に悔やまないように、進んでいくのだな、と感じました。夜の生徒たちもそれぞれ、自分は自分に応えようとして、応えるための道を探り直したように見えます。たまたま一緒のクラスになっただけでは、仲間になることは出来ません。仲間になることを選択しないとなれないのです。そして、全員が仲間にならざるを得なかったことが意味深く、そこに「人間らしさ」があり、面白いと感じました。
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