対岸の火事と思うなかれ
「シッコ」=病んでる、ヤバい。何が?この状況が!
決してアメリカが悪の国だと言いたいわけではない。でも、この国では、病気にかかった時点で一巻の終わりになりかねない。もしあなたがちょっとした風邪をひいて、病院で診察を受けて薬を処方してもらったら、アメリカでは500ドルを支払わなければならない。盲腸にかかったら、手術に数千ドル、入院1日ごとにさらに500ドル。日給100ドルの仕事の帰りに交通事故に遭ったら…もう目もあてられない!!
日本は大丈夫…本当にそう言い切れる?
現在の日本には、ありがたいことに国民健康保険があり、どんな人でも基本的な医療は格安で受けられる。子どもなど自治体によっては無料である。なんてありがたいことか。もしアメリカのように、保険に入るためにベラボウな金額の保険料を払わないといけなくなったら…
この映画が制作されたのはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)というものが生まれる前だが、もし日本もTPPを受け入れたら、我々が誇るこの国民健康保険が、「国際社会の保険会社を締め出すもの」として、訴訟の対象になる可能性を否定できない。TPPの条文の中には、競争を阻害された場合、企業は国家を訴えることができると明記されているのだ!(このあたりは、ジャーナリスト堤未果氏の著書に詳しいので、ご興味のある方は是非ご一読を)
つまりこの映画を観て思うべきことは、「明日は我が身である」ということ。
映画の中の一家のように、病院にかかったために家を失う羽目になるという悲劇から、私たちも完全に無縁ではないということだ。
ムーア監督、やり方はともかく、シェアしてくれてありがとう
突撃インタビューにからかうような口調、およそ真面目なのか不真面目なのかわからないマイケル・ムーア監督であるが、大切なのは、メッセージを受け取った側が何を拾い出すかである。
医療費が払えなくてホームレスになる…。きちんと彼らの言い分に耳を傾けていれば、これがいつの間にか日本で定着した概念「自己責任」で片付けられるものではないことがわかるはずだ。
税金から保険料を拠出する必要がなく、払えなければ家を取り上げてでも徴収することができたら…ある種の人たちにとっては、この上なく美味しい話になるだろう。アメリカ国内のみならず、周辺の国々からも搾取できたら…そうなって欲しくて仕方がない人たちが、存在しているように感じる。
今すでに、介護費用が支払えずに貧困に陥る人たちが、日本にも出てきている。この流れが「あってもいい」ことなのか、今一度立ち止まって考える必要があるのではないだろうか。
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