ザ・お茶の間!なドラマ
スカーレットな雰囲気
2020年開催のオリンピック・パラリンピックに向けて、作られたドラマ。のようですが。お祭りに便乗して作られたのかもしれないし、東京を描くにあたり、ついでにお祭りを盛り込んでおこうと考えられたのかもしれない。どっちにしても、可もなく不可もない仕上がりだったと思います。
最終回で2020年に自分はどうなっているのか、東京はどうなっているのか、と締めくくられるくらいで、内容自体にオリンピック・パラリンピックが深く関わってはいませんでした。ちょっと期待外れかも。未来に向けて!という雰囲気でもなかったですが、現代についての切り口はよかったと思います。
全体的にソフトリー
お話については、ちょっと面白いけど、大体退屈だなという感想。何で退屈だったんだろう。
こういう推理系の刑事ドラマは、犯人の動機に深いものを感じると、面白さが増すんですよね。ところが今作は「そんなことで?」という殺人事件が多いのです。「そんなこと」が当人にとっては、殺人を犯してしまうほどのことである…その事実に身をつまされるのですが、ストーリーとしては、やや、ふんわり仕上げです。
作中では、深刻な問題が見え隠れする場面もあります。でもそれで殺人をしてしまうのかは、ピンときません。んー、確かに犯人の気持ちは分からなくはありません。そういう人はいるだろうな、と思えます。実際に、殺人をしたくても我慢している人は多いのだろうな、と思えてきます。殺人は現実的ではありませんし、してはいけないことですが。
普段の我慢を、せめてドラマの中では、怒りとしてぶつけてみよう、そんな一面を感じる作品でした。世間の人に、「実際こんな問題が起きていて、苦しんでいる人がいるのだ」と知らしめるのが、目的のひとつだったのでしょう。「そんなこと」で殺人の衝動にかられる事件が多いのは、今作の特色の一つだと思います。
人を殺したのではない
とはいえ、せっかく、ドラマで殺人を扱うのだから、もう少し汚くて重たくて逮捕したとて解決しないような動機があって欲しかったです。もしくは、犯人に癖があるような、犯人が、憎たらしい悪い人物だと、逮捕のし甲斐もありますし、逮捕劇が面白くなったんじゃないかな。悪を追い詰めていくのは、ドキドキしますもんね。悪趣味ですけど。だけどこのドラマ、犯人は弱い人が多いです。犯人に同情する気持ちもありますが、かといって、殺されたほうがすごく悪いとか、殺されて当然、とかではないんです。じゃあ、何かというと、社会が悪い、みたいな。そういう事件になっています。だから、もやもやっとしてつまらないです。
社会は悪いけど、負けない!とか、世の中そんなに捨てたものじゃない、とかそれが嘘くさくなるのなら、せめて、殺人後に何か希望の持てる様子に変わって欲しい。社会が変わるわけでもなく、自分の人生・殺した人の人生を取り返しのつかないくらい傷つけてしまった…と終わるのは、なんだか悲しかったです。それを見ると、「結局、日常の不安は我慢するしかないね…」と、しょんぼりしてしまいます。
せっかくの問題提議が「社会ではこういうことが起きているんだね、しょうがないね」で大抵の人に片づけられてしまうのは残念。ドラマだし…と、見た価値を下げられては勿体ない。もう少し、作中の事件の様子を見て、何か奮起できるところがあれば良かったと思います。
愉しいNS課
見やすくもあり、見なくても良いようでもあり、勿体ないなーという気がするのは、これまで濃いめのドラマを見すぎて、こういう正統派なのが受け付けにくくなってしまったせいでしょうか。でも好きなところもあって、どの警察ドラマよりも実際に近かったのかな?と感じました。実際の警察の現場がどういうものなのか、全く知りませんが、架空の部署なのに、アーこういう職場ありそうって思ってしまうのが、今作の良いところだと思います。その辺りは、妙にリアリティがありました。
「こち亀」じゃないけど、「ドタバタしているのにほっこり系」とでもいいましょうか。天才とかではない、普通の人が一生懸命働いているのが、これでいいんだよな、と思わせてくれます。すねずに逃げずに頑張ろうよ!と。暗い事件との対比として、より明るく目に映ります。
この職場の人たち、個性を見れば、それぞれに才能があるのですが、強烈に前に出した演出はされていません。「和」なんですね。事件の真相に勘付いて、仲間を操作するような人物もいれば、引きの強い人物もいて、キャリアと情熱で突き進む人物が主役のようでそうでもなく、チームのバランスが取れていました。ほとんどの回が同じパターンで展開されて、1話1話が時代劇のような安定感で終了します。そういうドラマも、ドラマらしいなと感じます。どこか見逃しても、あまり切羽詰まらないというか…。何か食べながら見るのに丁度いい連続ドラマだったのではないでしょうか。
展開のスピードもゆっくりめですから、少し目を離しても大丈夫。でも最後まで見てしまう。誰も殺されていない、という回もあるくらいですから、憎しみやドロドロした感情が描きたかったわけではないと察しがつきます。それゆえに、食事をしながらでも楽しめるドラマに仕上がっています。このドラマは、事件や社会のことを考察するよりも、登場人物たちのドタバタぶりを見守るのが楽しい見方なのでは。
ダルタニアン…ではないかも
水川あさみさんのことを。主演よりも脇役でいてこそ輝く、物語や画面にインパクトを加える女優さんだと思っていたので、今回は少し中途半端だったのが残念です。違う脚本で主演されたほうが良かったかな、という印象。演技はうまいのですが、キャラのイメージが彼女とずれていて、「演じている」ように見えてしまいました。このドラマで初めて水川あさみを見る人にはわからない感覚だと思います。そのくらい演じ切れていたので。
だけど、私は残念ながら余計なものが邪魔をして、(水川あさみのイメージ)うん、あさみちゃん頑張ってるね!と思ってしまうのでした。本当は、主人公が話の中で頑張っているはずが、水川あさみが役者として頑張っている姿に見えてしまうんですね。主人公と女優がイコールで結びつかないというか…、イメージのリセットを試みるのですが失敗してしまうのでした。刑事役なんてぴったりだったのになあ、しっかりそれとして見れなかったのが、自分の中で惜しいところでした。でももし三銃士を演じても、水川あさみは、ダルタニアン役ではないなあと思うのです。
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