少し変わっててすごく見てしまう - あぐりの感想

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あぐり

4.004.00
映像
4.50
脚本
5.00
キャスト
4.50
音楽
3.00
演出
4.00
感想数
1
観た人
1

少し変わっててすごく見てしまう

4.04.0
映像
4.5
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
3.0
演出
4.0

目次

ちょっと朝ドラ考

二度見三度見してしまったのが、このドラマ。朝に見て、お昼に見て、まとめの日に見て。

NHKの朝の連続テレビ小説。それは「おしん」。というくらい、「おしん」は各方面で伝説的な

ドラマになっているようですが、朝ドラの良いところは、人気は関係ないところだと思います。

なんか、とりあえず流れてたらいいや、外で人と話せるし。このスタンスです。

だから、朝ドラを ドラマだ!としてみた場合、重要なのは

自分の中でどのくらいヒットしたか。これに尽きます。朝ご飯食べながら、新聞読みながら、

朝ドラ見る。何かしながら見たのか、そうじゃないのかが重要な気がします。

その朝ドラのために起きたり、その朝ドラのために朝食を早く済ませたり、その朝ドラのために作業をやめたり。

そういうのが、作品の力なのかと思います。

恋のようなものですから

ちなみにビデオリサーチさんの過去の視聴率のデータで見ると、「おしん」の平均率52.6%。

「あぐり」は28.4%で、あら半分ほど。「あぐり」の前に放送されたのが「ふたりっこ」。

こちらも人気作でしたが、29.0%。だけど、「おしん」の放送されていたころは、みんなが

朝ドラ見ていましたから、毎シーズン大体、 視聴率が40%台くらいはあったようです。

朝ドラ自体が強かったんですね。 それが、だんだん時代とともに30%台になり20%台になり、

人気爆発のように感じた 「あまちゃん」でも20.6%と、数字は申しております。

10人中5人が「おしん」を見ていても、そのうちで熱心に見ているのは何人くらいだったのでしょう。

多くて4人くらいじゃないかな。5人全員じゃない気がします。そのあたりを踏まえると、

10人に3人くらいが「あぐり」を視聴していて、そのうちの3人が、熱狂的に見ていたら、

「おしん」と近いくらいにファンがいたことになりますよね。4対3ですから。

「あまちゃん」の時代になってくると、録画機能が充実していますから、数字じゃ全然わからなくなります。

放送年をみると、「おしん」1983年 「あぐり」1997年 「あまちゃん」2013年。

「あぐり」と15年前後の空きがあるものを調べてきましたが、今(2016年)にこれらが放送されても

私は「あぐり」 だけはしっかり見てしまうと思います。 その際はリアルタイムで見ながら録画もするでしょう。

この、リアルタイムに見たい、放送中に見たいな、という感情は何でしょう。

作品と、より近くなりたい、そんな願望からのような気がします。 放送された時が、最新なわけですから。

最新を見たいとは、早く会いたい!ってことですかね。それはもう、恋ですね。

3つの要素。時代、業界、個性。

じゃあ、「あぐり」に恋をする理由は何か。ひとつは時代背景があります。昔の話です。でもまだその子孫が

生きていて、「ああ、あの人のお母さんのお話しなんだ」というくらいの、昔です。伝記的要素が高いので、

親近感がわきます。今とつながっている、というのは物語としてイキが良いです。

しかも、あの人「吉行 淳之介・和子・理恵」のお母さん、というのが面白いです。有名な人のお母さん。

そして、そのお母さんもまた、美容界の功労者であり、その道を進むためのストーリーが面白い。

あぐり本人の物語と、淳之介はじめ周囲の人たちの物語、両方楽しめるのが魅力です。

有名人の生い立ちを垣間見られるのも楽しいですが、それぞれの業界の歴史を知れるのも良かったです。

例えば、文学が好きな人なら芥川賞受賞報告を待つくだりなど、かなり面白かったと思いますし、

美容師を目指す人には、パーマをかけるマシンを店に入れたくだりなどは興味深かったと思います。

ひとつの業界だけではなくて、色々と広がりがあったのがいいですね。そこにまつわる人間ドラマも見どころ

だったと感じます。

だけど、1番衝撃的だったのは、エイスケさん じゃないですかね。エイスケさんは、冷静に考えると

ろくでもない人なのに、どうしても好きになってしまう、そんな特別な人種でした。

それで、視聴者はみんな、なんでこの人を好きなのかな、と考えてしまう。こういうキャラクターは、

ドラマを見る醍醐味につながると思います。普段の生活で、あまり遭えない、居ても関わりにくい

ある意味 危険キャラ です。野村萬斎さんが演じたのがまたハマっていてよかったですね。

この役者さんは誰?という、そういう注目のきっかけが生まれるドラマは良いドラマだなと思います。

それだけ、人の関心を引いたことになるので。役者にとっても、視聴者にとっても素敵なことです。

そんなエイスケさんは、肝心な時には絶対にあぐりを助けてくれる。夫として助けるというよりは、

人間として助けてきたように感じます。娘のお風呂だけは自分で入れてあげに帰ってくる、とか。

対するあぐりも、そんなに優等生な主婦ではなく、洗濯物の干し方が独特だったりします。

この夫婦は、好き同士でなくて結婚したのですが、それでも相手を否定しあうような喧嘩はありません。

マイペースな生き方でいいんだよ、と思わせてくれます。それが結構、見ている側の生活や社会に対して、

新鮮な提案として受け取られたのではないでしょうか。

このドラマは、「世の中」と「個人の個性」がどう関わっていくといいのか、そういう点が深かったと思います。

辻村 燐太郎が、自分の詩のせいで人が死んだ(戦争を鼓舞したので)と悩み、また、

自分の詩があって、ある人が自殺を思いとどまったと安堵する、そんなシーンもありました。

「あぐり」は、個の未完成を完成に近づけるお話ではなくて、未完成同士が関わっていく、

関わり方のお話しだったと思います。だからいつも素直で明るい気持ちにさせられる。名作だと思います。

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