陰日向に咲くの感想一覧
劇団ひとりによる小説「陰日向に咲く」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
まぁ、タレント本です。最近見なくなりましたねー
結構シュールなギャグなどでちょっとインテリっぽさが売りのお笑い芸人である劇団ひとりの小説作品ですね。まぁ、色んな芸能人が小説家デビューをしていきますが、これも多分にもれずそのクオリティーですね。コントの脚本を拡大して文章化したって感じでしょうか。劇団ひとりが好きな人ならたのしめるのではないでしょうか。そんな人今どれくらいいるのか微妙な数だと思いますが。劇団ひとりらしいちょっとエッジがきいたお話が何本か読めます。しかし、まぁちょっと、ってかんじです。小説家のような鋭さとかはないです。もし、ブックオフとかで100円コーナーにつんであったら、手にとって見ていいのではないでしょうか。
好みではないものの……
ハッキリ言って好みではない。なんというか、、実に劇団ひとりさんらしいというか。劇団ひとりさんのコントのように、全体的に哀愁ただようユーモラスな雰囲気があって。それが面白可笑しく笑って済まされない感じを出している。でもそれが味になっているような。面白くない、とは言い切れない魅力なんだろうなぁ、と思う。多分そこら辺が、一時期もてはやされた理由なのではないだろうか。いわば、いかにも人間くさいところ。そして構成が素晴らしい。連作短編のようなかたちを取っていて、最後にはそう来るか!という感じ。いろんなところがつながっている短編集はやはり面白いもので。文章もしっかりされていたし、物語を紡ぐ才能がおありなんだろうなー。
息子への愛情たっぷりの解説が素敵でした。
ホームレスを夢見るサラリーマン。売れないアイドルを応援する青年。ぼんやりカメラマンに憧れる女子大生。詐欺師をはたらく借金まみれのギャンブラー。売れない芸人を好きになった女の子。さまざまな日の当たらないキャラが登場しますが、最後にはひとすじの光がほんわかとさしたような感じの笑いあり、涙ありの連作短編です。各編の人物が繋がっていく展開が上手い!と唸ってしまいました。特に「Overturn」のラストはベタだけど号泣してしました。そして、最後の解説は劇団ひとりのお父さま。息子の幼少のころのアラスカ生活から今に至るまでの思い出が綴られていました。基本的に息子が好きなようにやらせてあげ、高校中退などの数々の逆境においても「人生、何が幸いするか分かりません」と肯定して、長い目で息子を見守り続けてくれています。そんな愛情たっぷりな素敵な解説でした。
うまい具合に重なるストーリー
何本かの短編が全てつながっているという、読んでて凄いなあというのがまずの感想です。劇団ひとりさん凄いなあ、と素直に思いました。読み終わったあとは明るい気持ちになれる作品です。ホームレスになりたいサラリーマンや、漫才の相方を好きでたまらないのに相手は自分のことなんて見てくれてない女のこや、オレオレ詐欺を初めて行う男やアイドルの追っかけなど・・・。個人的にはホームレスになりたいサラリーマンがコンビニのゴミ箱に捨ててあるお弁当をあさくるところは面白くて好きです。全体的にうるっとくるラストで上手くまとめてありました。あとがきのお父さんの人柄がいいなあなんても思いました。
咲けるなら。
劇団ひとりの小説家デビュー作です。普段テレビで見る一芸人が書いたものだ、という色眼鏡を途中から完全に放り投げて読みました。章ごとに色々な登場人物が出てきては、各々のちょっと残念気味な人生をこなしていきます。理想の自分になりたくて、なれないジレンマ。あら嫌だ身に覚えがあるわ。本当の充足感の得られる方法も見失いがちになるような日々ばかりだったりで。トントン拍子に行きゃいいってもんでもないけど、もうちょっと何とかならんかね全く人生って奴は!…なんてちょっと自分を投影してみたりできるのも、小説ならではですよね。さて、一冊通して読んでみると、この登場人物たちが他でもなくこの作品に居合わせる理由も少しずつ感じ取ることができる、その過程も楽しめると思います。