ゲルマニウムの夜の評価
ゲルマニウムの夜についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に映画を観たレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
ゲルマニウムの夜の感想
行き場のない男が地団駄する映画。
花村萬月の小説が原作となっているこの映画。主人公役の新井浩文がハマリ役です。殺人を犯し、自分が育った修道院兼教護院の施設に逃げ戻り、シスター(広田レオナ)を暴力的に犯し、神を徹底的に冒涜し、宗教が自分を救えるか、神が自分を裁けるか、と究極的な問いをなげかけます。夜半、彼が耳にするのはゲルマニウムラジオから聞こえる、ささやかな音。悪態をつきながら、自ら死を選ぶこともできない、もがき続ける男の行き場のない閉塞感を、新井が全身であらわしています。何より、彼の表情が怖いです。表情のない表情というか。痛めつけられながら、ほとんど棒読みのように神の加護を解く広田レオナも、ある意味怖いです。心中がはかりしれないのは、どちらかといえば彼女の方かもしれません。現在の日本では、回答のでない問いを投げかけているような映画です。