玉之丞がかわいい!家族で見られる作品
「劇場版猫侍」を視聴した感想です。
ひたすら猫がかわいいのと、北村一輝さんが渋くてカッコいいという点に尽きる映画だと思います。
北村一輝さんのファンか、猫好きの人なら楽しめるのかな、と思いました。
この作品は、恐面の斑目久太郎が、不釣り合いに愛らしい猫にメロメロになっていくギャップが一番の見所だと思います。
北村一輝さんは、そのあたりをよく理解して演じているのが伝わってきました。
恐面なのに、怖すぎない斑目をコミカルに演じていたと思います。
北村さんは本当に器用な役者さんですね。
以前「破門」という作品では、本当に怖いヤクザ役をやっていて、印象に残っているのですが、今回は全く違うキャラクターを演じていて、演技の振り幅の広さを感じました。
本当に悪い奴の役もできますし、優しい人の役も、寡黙な人間の役も、お喋りな人間の役も、それらしく演じることのできる役者さんだと思います。
この作品での役どころは、あまり多くは語らないようなキャラクターです。
しかし、内心では猫をかわいいと思っていたり、大福を楽しみにしていたりと、侍らしからぬ可愛いげがあります。
斑目の、顔は怖いけど意外と何も考えていないような呑気な風情がよく出ていました。
また侍ではありますが、「マジ?」とか、「またやっちゃった…」みたいな現代風のセリフがこの作品には所々にあり、そうしたセリフを現代人ではなく、侍らしいトーンで言っているのが印象に残りました。
子供と見るならアリかも…?
ストーリーは申し訳ないのですが、正直面白くなかったですね…。
真面目な話と取っても中途半端、コメディとしても中途半端な気がしました。
この作品は時代劇でありながら、セリフがほとんど標準語というところも気になりました。
人によって意見は別れるとは思いますが、わたしはセリフも時代に沿ったものにした方が良かったのではないか、と思いました。
「猫侍」というタイトルから、やっぱり見る前から「猫と侍のいる、風情のある風景」を期待していたので、きちんと時代劇の体にしてもらった方が、雰囲気があって良かったと思います。
この作品は、セリフが標準語どころか「乙女座でB型」など、時代にそぐわないギャグ的な文句が意図的に盛り込まれています。
だったら終始そのテンションでいってほしいですね。
ちょっと出して、すぐに止めるなら、最初からやらなくていいように思いました。
コメディに振り切るなら振り切った方が、思い切りが良かったと思います。
また、殺陣のシーンもあまり無かったのが残念でした。
北村さんはアクションもできる俳優さんなので、勿体なく見えました。
北村さんが刀を握った時の、一瞬緊張する表情は、うまいなと思いました。もっともっと、動きを見せて欲しかったですね。
避けるだけでもいいので、ちゃんとした殺陣のシーンを作った方が良かったのではないか、と思いました。
また、肝心の猫のシーンが、もっと多いのかと思っていましたが、意外と少なかったと思いました。
猫は可愛かったので、もっと映してほしかったです。
また、終盤の展開も、もう一捻りほしい気がしました。
この作品は、敵対するヤクザの親分が、それぞれ猫好き犬好きで、因縁があるという設定なのですが、蓋を開けてみれば二人とも動物の殺生は許さない優しい性格でした。
そのため、最後は「犬、猫に免じて」のような展開でヤクザの争いは終結します。
優しい世界ではありますが、しかし児童向けの作品でもあるまいし、大人を相手に見せるストーリーとしては、いかがなものかと思ってしまいました。
また、前場新助とお梅の決着の付け方も、しっくりこなかったです。
故郷から父の仇討ちを目的に上京した前場は、最終的に斑目の殺生を拒む姿に心を動かされ、仇討ちをしないまま江戸を去ります。
しかし、実の父の仇討ちですよね。
恨みもあるだろうし、普通に考えたらそんなに簡単に諦められるのかな?と思いました。
作品では、まるで仇討ちをする方が悪いかのような展開でしたが、そもそも原因を作った方が悪いですよね。
そのように、仇討ちの目的を捨てたことが良しとされるストーリーが、見ていてよく分からないと思いました。
また、お梅は身売りされた先で酷く当たられ、辛い思いをしていましたが、猫を守るため強くなる事を胸に誓います。
ここはお梅は、前場についていくような展開でも良かったのかな?と思いました。
悪い環境で堪えることだけが、強さではないですからね。
猫と暮らして見えたもの
しかし、最終的に斑目が家族の元に帰る、というラストシーンは良かったと思いました。
猫と暮らし始めた事で、斑目が家族の愛に気付き、侍ではあるが殺生はできない自分を受け入れる、という結末です。
最後に斑目が、妻と猫を抱いた娘を抱き寄せるシーンで映画は終わります。
私は子供がいて、こうした「家族の愛」みたいなものに帰結する話には弱いので、すごくいいラストシーンだと思いました。
玉之丞か運んできた幸せのようでした。
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