ママ先生という言葉を生み出した名作
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原作という足枷がないからこそ、面白さを生み出している
アニメ化と聞くと原作の漫画、小説があるものだと思う人も多いはず。しかし、この作品は原作漫画や小説は存在しない。では、完全なオリジナルアニメかと言うとそうでもない。この作品は元々ゲーム雑誌の「読者参加企画」として生まれた物である。誌上でキャラクターのミニストーリーがあり、この後このキャラはどうしたでしょうという選択肢を、読者が選び、投票するのである。その結果によりストーリーが進んでいくという物だ。明確なストーリーという物がなく、決まっていたのは細かなキャラクター設定のみである。
アニメ化の際にはプロデューサー、監督、脚本家にこのキャラ設定だけを渡し、アニメを制作してほしいと依頼している。これはTVアニメのノベライズ版を執筆したプロデューサーがあとがきで明かしている。どんなストーリーにするかをスタッフ間で幾度もなく会議を重ねた結果、原作という足枷がない事を最大限に利用し、やりたい放題とも言えるストーリーでも高評価を得る作品が生まれたのである。
やりたい放題やった為に疑問点が多々あるが、それを面白さで隠すという稀に見る作品の一つではあるだろう。
キャラクターの名前は皆、旧暦が元となっている
この作品を観た多くの人は、1月から12月までの旧暦を答える事ができるはずである。なぜならば、キャラクターたちは皆、旧暦が元となっているからだ。たとえば、ヒロインの一人、「一文字 むつき」は1月の旧暦である睦月から名づけられている。2月の旧暦は如月で「二ノ舞きさらぎ」、3月の旧暦は弥生で「三世院 やよい」とそれぞれ名付けられている。
唯一人名でないのは11月の霜月で、「しもつき音楽堂」という施設名となっている。旧暦が元となった背景には、月刊誌で始まった企画という事が大きい。毎月一人にスポットを当てての連載だった為に、1月はむつき、2月はきさらぎと、読者に何月に誰がメインなのかを分かりやすくする為である。なお、主人公の仁歳 チトセはアニメで初めて登場している。
旧暦を元にしたキャラクターではあるが、それぞれのキャラクターの性格や趣味などに季節がほぼ関係ないのが惜しい所でもある。例えば、「五箇条 さつき」は5月の旧暦が元となっているが、顧問は水泳部で5月とは程遠く、「四天王 うづき」は4月の旧暦が元となっているが、趣味は4月とは程遠い夏や冬のコミケ参加である。旧暦を元としているのだから、季節と趣味、性格を上手く組み合わせることができていれば、さらにキャラクターの魅力は高くなっていたと思われる。
出演声優たちが多数参加のイベントを頻繁に行い地盤を作っていた
今も昔もアニメ化などが発表されると各地で出演声優が参加のイベントが開かれるが、開催は1、2回で声優の紹介程度で終わってしまうのがほとんどだろう。しかし、この作品はアニメ化が決まってからは各地で頻繁にイベントを行っていた。コント形式の物、ライブ形式の物など、様々だ。行われたイベントはどれも大好評であり、後に「イベントDVD」という物も発売されている。頻繁にイベントを行い周知したことで、TVアニメのヒットという結果に結びついたのである。アニメのキャラクターではなく、いわゆる「中の人」である声優を徹底的に前面に押し出した作品は当時としては画期的だったのではないだろうか。
なお、「六祭 みなづき」役を務め、今や紅白歌手となった水樹奈々もイベントには多く参加し、キャラソンを度々披露している。その際のみなづきのコスプレである緑のセーラー服にミニスカートという可愛らしい姿はファンの間でも未だに語られ、今では絶対に見られない伝説となっている。
高評価だったTVアニメもOVA最終巻で評価を落とすという悲劇
終わり良ければ総て良し、という言葉がある。悪い事が続いていても、最後が良ければいいじゃないかという意味だ。多くの漫画やアニメは序盤から終盤にかけてグダグダな内容だったとしても、最後が良ければ良し、というなる物も多い。しかし、このHAPPY★LESSONは違う。TVアニメは第2期シリーズまで作られ、OVAは2シリーズ作られているのだが、そのOVA最終巻が「終わり悪くて全てダメ」という最悪な結果となってしまっている。アニメなのにほとんど動かない、作画は悪い、とにかく詰め込んでしまえという内容でグダグダ、ヒロインの一人である「一文字 むつき」が「仁歳 チトセ」と結婚という「むつきママ」ファンには衝撃の終わり方と、TVシリーズの高評価を自ら覆してしまったのだ。
そうなってしまった原因は制作会社が大きな原因である。2004年に制作会社である「株式会社ケイエスエス」がOVA第1作目からプロデューサーを務め、ケイエスエスの制作活動も仕切っていた大宮三郎氏の他社への移籍を皮切りに事実上の活動停止に追い込まれたからである。OVAの「HAPPY★LESSON THE FINAL」が2004年の5月に第1巻が発売され、同年10月に最終巻が発売されているのを見ても、かなり制作を急ぎ、なんとか最終巻まで発売という無理な進行である事が伺える。
制作会社の事を知るとあまり批判するのも気が引けるが、TVシリーズを観て面白いと思いOVAも購入した人を落胆させるのは如何なものかと思う。厳しい中でこそ、しっかりとした物を作り、「HAPPY★LESSON=幸せのお勉強」というタイトル通りに、幸せな気持ちでラストを迎えたかったというのがファンの心情だったのはないだろうか。
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