新しい表現、新しいミステリー - TRICKトリックの感想

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TRICKトリック

4.504.50
映像
4.00
脚本
5.00
キャスト
5.00
音楽
4.80
演出
4.25
感想数
2
観た人
12

新しい表現、新しいミステリー

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

誰もまだ見たことのない世界

トリック1は、他のどの堤幸彦監督作品とも、後のトリックシリーズとも違います。
池袋ウエストゲートパークやケイゾクなど、同監督の作品は見ていましたが、中でもトリックは一番エグい表現がないのに、一番不気味な世界観が表現されているようでした。

特に画質をわざと荒く撮っていたりして、母の泉編では、古いリアル映像というか、宗教ビデオのようにも見えました。
また、ミラクル三井の登場シーンでは、背景と人物の境がないように撮られていて、まるで恐怖映像のような不気味さを感じました。

また、使用される音楽やSEも独特で、アジアの民族音楽を彷彿とさせるようなものとなっています。
これは作品の不思議な世界観を際立たせるだけでなく、最終回の黒門島編への伏線ともなっています。

不気味といえば、内容の不穏当さもかなり作品の雰囲気に影響を与えていると思います。
というのも、全編バッドエンドで終わるのです。
けっこうユルいギャグも多くて油断していると、後半びっくりさせられる感じです。

トリックは、殺人事件も絡んできますが、基本的にはインチキをしておいしい思いをしている人間を暴くストーリーです。
しかし、その嘘が暴かれたとしても、必ずしも騙されていた人が目を覚ますわけではないんですよね。
母の泉編では、信者が自ら騙されにいっているようでもあるし、真実を知ったミラクル三井は、絶望して自殺してしまいます。
金の文鎮を売り付けられた少年も悲惨でした。すごい笑顔で千里眼の男が絶望的なことを言うんですよね…。
黒門島の人間も、島の掟に従って奈緒子の父を殺害した結果、シャーマンである里美の怒りを買い、滅びの呪いをかけられてしまいます。

一番象徴的なのは、トリック映画版のラストで、信じるものを失った村人達が、新しい教祖である里美に「右向け右!左向け左!」の号令で操作されているシーンです。
まるで思考停止して、その正体が善でも悪でも、誰かの言うことを聞いておけば一安心とばかりの村人達の愚かしさに、監督の強烈なメッセージを感じます。

このように、詐欺師に騙されていた側にも救いのない最後が用意されている所が、皮肉げでもあり、面白いと思いました。

謎が解決しても、問題は解決しない。
絶妙な後味の悪さを残して、話は締められます。
こんな作品は後にも先にもないのではないでしょうか

「本物の霊能力」は誰か

謎解きの部分はかなり面白くて、最終回の黒門島編では、方言の法則が島の財宝のヒントになっていたり、文字版が犯人を示唆す証拠になっていたりと、視聴者が分かりそうで分からない内容となっていて、とても楽しめました。

また、不気味なだけでなく、キャラクターや小ネタでしっかり笑えるようにもなっていて、作品自体は異端ですが、王道をゆく面白さを見ていて感じました。

面白いのは、主人公の奈緒子が事件を解決し、霊能力を否定するほど「本物の霊能力者」に近づいていくことです。

そしてラストの黒門島編では、「本物の霊能力者」は奈緒子自身だったという驚きの結末が待っています。

しかし、実は奈緒子が自分自身を霊能力者だと思い込んだのは、欲にくらんだ黒須分家の兄弟の策略だったことが後から判明します。
ですので、説明のつく部分では、霊能力はなかったということになっています。

ところが、奈緒子が実際に島に着いて、枯れた花を手にした途端蘇ったり、奈緒子の母が危機を察したり、天気を予知したりと、不思議な現象は起こっており、最後まで謎のままです。

このように、明言はされていませんが、奈緒子とその母は確かに霊能力者であることが示唆されており、監督の日本民俗への敬意がそこにあるようにも感じられるのです。

仲間さんの「エヘヘヘ」笑いがカワイイ

また、トリックは推理物ながら、刑事や探偵が主人公でないのも新しいと思います。
主人公の山田奈緒子は売れないマジシャンで、美人なのに貧乳のブス扱いで、おまけに貧乏でコミュニケーション下手というキャラクターです。
主演の仲間由紀恵さんにはおよそ似つかわしくない人物ですが、とてもコミカルに演じています。
以降の堤幸彦監督作品では、たびたびこのような女性キャラクターが登場しますが、一番かわいらしく演じているのは仲間由紀恵さんだと思います。

また、相棒の上田助教授を演じる阿部寛さんは、この作品で完全にイケメンの演技を捨て、三枚目に振り切っています。
頭がいいのに騙されやすく臆病。学者なのに武闘派というキャラクターを、漫画の人物のようにコテコテに演じています。
阿部さん自身もインタビューで「上田という人物を演じるのにはパワーがいる」と話している通り、テレビの画面から、阿部さん自身のパワフルさが伝わってくるようです。

また、この作品で私は初めて生瀬勝久さんを知ったのですが、チンピラのような刑事矢部と、その舎弟の石原のコンビは本当に面白くて、たくさん笑わせてもらいました。


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登場人物が魅力的!

主人公達だけではなくサブキャラも個性的とにかく、なんと言ってもキャラクターが個性的につきます。見栄っ張りで心霊現象の調査をするわりに怖がりですぐ気絶する上田。マジシャンに拘り貧乏をしている為か母の血かお金に執着が強いナオコ。ヒーローが頻繁にぶっ倒れ、ヒロインが罵倒され続ける作品はこれくらいだろう。ナオコは推理ドラマでいうところの探偵だが、売れないマジシャンという職業の為かいつも手柄は上田のもの。ナオコ本人はお金が貰えればなんでもいいという感じで、その辺りは気にしていないようだがたまに上田の一言にカチンとくるのか「また気絶してたんですか」など調子に乗りがちな上田を一言で切り捨てる。上田は自慢話が好きなタイプでよく大ボラをふくがナオコのお陰でとりあえず事実になっている。また、サブの刑事も明らかにハゲとバレているのに必死で隠したり権力者に弱い、顔芸が面白いなどまずは登場人物を見てもらいたい。...この感想を読む

4.04.0
  • らいからいか
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