ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島
『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』は、2005年に公開された映画です。この映画について、考察していきます。
映画全体のイメージ
この映画を見始めた瞬間から思いました。「え…?これワンピース?違う映画じゃないよね…?」と。(笑)
なんだか、始まりから雰囲気が違うんです!作画も、キャラクターは原作とは全く違い、でも風景や物はキレイに描かれているし、あえてこういうタッチで書かれているんだとは思いますが、私の好みではありませんでした。
内容もかなりホラー的でグロテスク…。原作ファンは観ない方がいいのではと思った程の映画でした。
多くの違和感
まず、映画の中で感じた多くの違和感について。大きく分けて、全部で6つありました。(細かい事を言うともっとありました。笑)
- まず、最終的に島に行こうと決めたのは船長であるルフィです。これはいつも通り。ですが、島に何も無いと分かった時、このルフィの決断について、まずゾロが文句を言います。これはすごく違和感がありました。ゾロの性格的に、船長の決断は絶対、それによってどんな思いをしてもそこに文句を言うことは無かったと思います。
さらに、みんながバラバラになりかけた時、サンジも同じように「こんな風になった原因はお前だ」と、ルフィを攻めます。うーん、変な感じ。 - そして、地獄の試練が始まってから、一味の中の4人がレースに出ているのに、その他の3人は応援せずに別の部屋でゆっくり休んでいます。普段の麦わらの一味からすると、そういう時は必ず応援し、何かあれば一緒に戦いますが、今回は、「あれ?応援しないのかな…。」と思いました。さらに、ルフィやチョッパーはレース系は大好きですし、興味もあるだろうから興奮気味に応援するシーンが無いのは、ちょっと寂しいなと思いました。
- そのレースの中で、 【お助けBOX】と書かれた箱を開けたナミとウソップですが、ウソップが開けた箱から羽のあるスーツが現れ、ウソップは空へ飛んで行きます。ここでウソップに怒るナミ。レース後ウソップに「裏切った!」と言います。麦わらの一味は仲間同士でそんなこと言わないですし、何より仲間を信頼しているから、裏切られたと思うことすらないと思います。そして、この時のウソップの返事は、「裏切りはてめーの十八番だろ!」です。一味同士でこんなこと絶対に言いません。(笑)本当におかしいことだらけ!
- さらに、ゾロとのケンカがいつもより多かったということもあるでしょうが、サンジは常にイライラしている印象でした。レース中、ナミのピンチにも関わらず、助けることもせずゾロとケンカしていたり、また、ナミのセリフへの返事がとても冷たいシーンがあったのですが、こんなことは普通のサンジならぜったい有り得ません!
- これはいい意味での違和感ですが、敵を前にするとビビっていることの多いチョッパーが、オマツリ男爵に強気だったこと。土壇場でも仲間を信じる気持ちはきちんとありました。
- これが私の中で、この映画最大の違和感です。ちょび髭海賊団の船長、ブリーフに助けられた時のルフィですが、麦わら帽子を被っていません。それに慌てる事もなく、帽子を探す描写もなく、結局被らないままオマツリ男爵の元へ向かいます。仲間のピンチで必死だったとはいえ、ルフィらしくないな、と思いました。結局麦わら帽子は、ブリーフの部屋に忘れて行っていたようですね。良かったです。
以上、私がこの映画を観て感じた違和感でした。しかしこれは、島に着いてから一味が徐々におかしくなっていった様子でしたので、島自体がリリー・カーネーションのエネルギーの様なもので侵され、一味も正気ではいられなかったのではないかと思います。
リリー・カーネーション
この島も、おそらく男爵の身体すら支配しているリリー・カーネーション。「死と再生の花」だといいます。島に生えている茎から触手の様なもので人間を取り込み、食い殺すことで(死)身体を乗っとられたと思われる男爵の思考により、人の形として生き返らせること(再生)ができるようです。島の人間の頭に葉っぱが生えていたのも、途中で枯れていくような描写があることも、リリーと男爵の思考により再生された植物人間だったからと考えられます。
男爵は、矢を操る能力者かと思いましたが、男爵が矢を打つ瞬間、肩のリリーの表情も変わっていたことと、島に生えているリリーの茎は、矢でできていることから、男爵の能力では無いことは分かります。そして、この矢を打たれても死ぬワケではありませんが(串刺しルフィ怖すぎた)、顔色が変わることから、生気を吸われているようでした。
さらに、リリーの本体は男爵の肩に生えているあの(最初は)可愛い花だと思います。この肩の花が「お腹が空いた」というと、植物人間たちは枯れていき、リリーが人間を食べると再生します。人間が茎に取り込まれている間、肩のリリーはずっとモグモグ口を動かしているのも怖いです。そして、家族海賊団のパパにリリーが矢で打たれた時、リリーは切り裂かれ、中から内蔵のような物が溢れて来ます(本当にグロテスク)が、男爵が慌ててこれをかき集めていることから、これは仲間達の内蔵や体の一部で、これがあるから再生できているのではと考えました。
この辺は考えているだけで病みそうでした。
カーネーションの花言葉は、「無垢で深い愛」です。仲間への深い愛情と執着が、リリーに伝わり、再生と引き換えに男爵は身体を乗っ取られたのではと思います。
男爵の想い
オマツリ男爵は、元々は「レッドアローズ」という海賊団を率いていましたが、嵐により仲間を全て失います。
その仲間への深い愛情と、孤独に耐えられず、「他の海賊団も同じ目に遭えばいい」と言いますが、本心はここではないと感じました。
リリーの力により、どんな方法で、どんな形でも、突然失った仲間が再生できることを知り、ここに目がくらみます。リリーによって「仲間が戻ってきた」、そして、枯れてしまっても誰か
の犠牲の上に「何度でも再生できる」と錯覚していたのでしょう。
作中でも、再生された植物人間たちに対してとても優しい対応をしていて、大切にしているというのが伝わってきました。
最期の花
最後、ルフィ達が男爵を倒した後、男爵のゴーグルのような物の横に、タンポポが咲いています。ロビンだけがそれに気が付き、見つめて終わり。
このロビンの面持ちに、このタンポポには何か意味があると思いました。
タンポポの花言葉は、「真心の愛」。一方で、タンポポの綿毛には「別離」という花言葉があります。「真心の愛」は、カーネーションにも共通する「愛」、つまり、男爵の仲間に対する深い愛情が表現されているように思います。そして「別離」についてですが、これはネガティブな意味ではなく、綿毛が飛び立って行く姿を重ねたものですから、男爵がリリーから離れ、嵐で死んだ仲間の元へ飛び立ったということを表したシーンではないかと思います。
終わりに
この映画は、ワンピース特有のワクワク感や、ファンタジー感は全くと言っていいほどありません。(笑)
別物として見た方がいいと思います。キャラクターの性格の違いや、「こんなこと言わせないで!」と思うシーンも多々ありますし、何より一味のケンカが多い。そして、全体的に映像が暗い!(笑)
しかしこの全てが、この作品の狙いでしょうし、私はまんまとそれに取り込まれました。
しかし原作ファンとしては、やっぱりいつものワンピースがいいなと思いました。この映画は特に、割り切って観るということを徹底しましょう!(笑)
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