幻想的な和風ホラー
従来の柴田作品の対極な風合い
筋肉系の作風が多い柴田作品の中でも日本古来のノスタルジックな風合いが強く幻想的で少しホラーテーストな要素が盛りだくさんな作品になっている。
そして何よりも、女性キャラをあまり描かれない柴田作品ですが、今回は女性キャラがギャグ風味ではなくシリアスにしっかりと描かれている点が従来の作品と大きく違い、作品の厚みが出ているように思う。
また、ギャグ要素が多く盛り込まれている作風とは異なりシリアス色が強く感じるが、やはり柴田作品であり箸休めのように絶妙なタイミングでクスリと笑えるポイントが盛り込まれているところが流石柴田亜美と言わざるえない。
描かれるキャラクターのタッチの違い
従来の柴田作品より全体的にキャラクターの描写柔らかい仕上がりになっている。
線の強さもあるが、角ばった少年漫画にありがちなタッチではなく、やや女性向けしそうなキャラクターのタッチになっているが、其処が実に描かれている世界感とマッチしていて漫画の世界に入りやすくなっていると感じる。
細かく描かれている表情に背景も柔らかさを感じる。
その所為か若干グロテスクな雰囲気やおどろおどろしい感じがマイルドに表現されているのでダイレクトな恐怖というより美しい恐ろしさがジワジワ感じるよう思う。
今までの柴田作品とカミヨミのタッチの違いを見比べてみるのも興味深い点かもしれません。
複雑に絡み合う人間模様とオカルト感
物語の時代背景が現代ではなく少し前の日本を設定とし、今だと忘れられている日本古来から伝わる妖怪、神話、和風のオカルティクナ素養が散りばめられています。
だからといって古臭い訳でもなく、ほんのりと感じるノスタルジーさがより一層幻想的な怪しい魅力を読み手に感じさせます。
目に見えないものへの畏怖や輪廻転生などオカルト好きな人にも、そうでない人にも受け入れられるように描かれている点も面白い所だと感じます。
物語の背景もさることながら登場するキャラクターの人物像もひどく人間臭い所も感情移入しやすい点なのかもしれない。人の弱さや脆さ、少年漫画特有の逆境から立ち上がる姿、絶妙に混ざり合い確立していく一人一人のキャラクターと完璧じゃない主人公の設定などキャラクターだけ見ても非常に興味深く面白い。
以前の作品とクロスオーバーするような素養もまた読み手に色々な想像を膨らますことが出来ますが、他の作品を読んでいなくても楽しめるところも良いです。
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