特殊清掃を読んで生きと死について考える - 特殊清掃の感想

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特殊清掃

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特殊清掃を読んで生きと死について考える

4.04.0
文章力
3.0
ストーリー
4.0
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3.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

死ぬということを考えた時に見えてくる生き方とは

最近では終活や墓友などという言葉を多く耳にするようになりました。

はじめてこの言葉を耳にしたときに、死というものに対して余りにも軽い扱いをしているような気がして、違和感を覚えたものです。

最近ではニュースやテレビ番組でも孤独死や自殺者が増え、人間関係の希薄さが問題視されています。

本書では、作者である特掃隊長さんが特殊清掃を生業としている男性のブログをもとに書籍化したものになります。

特殊清掃で最も多いお仕事は、やはり孤独死をされた方や自殺された方のお部屋や、身の回りの清掃が主になるようで、孤独死をされた場合でも自殺された方の場合でも、家族や友人など周囲の人たちと疎遠になってしまったために、なかなか発見して貰えないというケースが多いようです。特殊清掃の方が依頼される現場というのは、そのような理由で発見が遅れてしまった現場で、ご遺体のほとんどは腐敗が進み、蛆がわいてハエが飛び交い異臭を放っていたり、浴槽の中でドロドロの粘土のようになってしまっていたりと想像を絶する凄惨なもの。

家族とはいえ人間同士の事ですので、合わないという事もあるかも知れません。ですが考えてもみれば人生の終末を迎えた時、傍に寄り添ってくれたり死後の後始末をしてくれるのは家族だけとは限らないわけです。人間はどんな生き方をしようと、どんな環境の方であっても平等に死が訪れます。この本は、誰もがいずれは死を迎えるにあったって、どの様な生き方をするべきか、どの様に人間関係を築いていくべきなのかを考えさせられます。

本書の中には、その様な人間関係や例え孤独な死を迎えたとしても決して寂しいしとは限らないと思えるようなものなど、印象深いお話がいくつも紹介されています。

例えばブログ主である男性が、ある身寄りのない女性のお宅へと清掃作業に向かった時のお話です。いざ現場へ向かってみると、その女性が亡くなったとされるトイレと脱衣所が、既にキレイに片付けられていたそうです。特殊清掃の方が依頼される現場というのは布団や床に体液が染みついて人型に跡を残してしまっていたり、ご遺体が溶けてしまっているというもので、とても素人の方が簡単に出来るものではないようなのです。片づけをしていたのは依頼主である男性だったようで、その方は以前商売をされていたそうなのですが、かつて景気の良かった時期には交友関係も広く、様々な人間が男性に近づいて来たのだといいます。ところが男性が不況のあおりをくらって経営が厳しくなったとたん、友人だとばかり思っていた人たちが次々と離れていってしまったそうです。そんな中でもその女性だけは変わらず男性との付き合いを続け、精神的にも経済的にも男性を助け、随分お世話になったという話でした。

友人がたくさんいらっしゃる方は大勢いらっしゃると思いますが、果たしてその中に本当の友人と呼べる方がいったい何人いるものでしょうか?たとえ本当の家族であっても腐敗してしまった遺体を片付けてくれる事はなかなか出来るものではないでしょう。

人が人生を終えるとき、孤独死や自殺を選ばずに済むために助けになるのはなにも家族や身内ばかりではないという事を、本作を読んで改めて考えさせられました。

遺族に残してあげられるもの

人は死んでしまったらそれで終わりというわけではありません。亡くなった方が生きていた証として残すことが出来るものには様々なものが挙げられるかと思います。

日本では誰かが亡くなった場合には火葬されるわけですから、肉体そのものを残すという事はもちろん出来ません。家や土地をお持ちの方はそれを残してあげる事は出来ますが、思い出の残る場所であったとしても、そこに住み続けられるとも限らず、中には売却してしまわなければならない場合もあるかと思います。逆に何も残せるものがなく、お墓さえ残す事が出来ない方もいらっしゃるかもしれません。ですが、何かを残せる肩であっても、何も残す物がない方であっても気持ちであれば残すことが出来ます。どんな生き方をするかによって、生きている間に関わった人たちにとって思い出であれば残す事が出来ます。亡くなるときに一人になるのは嫌だからと言って、その事ばかりにこだわって生きていく必要はないかも知れませんが、それがたとえ終活であっても墓友であっても人との繋がりを持って悪い事はないのだと改めて思いました

特殊清掃を読んでの感想、まとめ

本作での終わりを読んで、これから生きていくうえで教わったことがあります。

それは愛する人を失った遺族の方達がその亡骸にかける言葉で特に多いのが「ありがとう」と「ごめんなさい」なのだそうです。生きているうちには照れくさくて中々言えない言葉です。しかし亡くなってしまってからではその言葉が本当に届いているかはわかりません。亡くなってしまってから後悔しないためにも、普段から感謝の言葉や大切な言葉は伝えていこうと思わされました。

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