中村明日美子氏の世界に初めて触れた一冊 - ノケモノと花嫁 THE MANGAの感想

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ノケモノと花嫁 THE MANGA

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中村明日美子氏の世界に初めて触れた一冊

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目次

あまりに美しき逃走劇!その美しき画に魅了される!

ゴスロリ少女(いや、オトナも?)たちのバイブルである【KERA】にて連載中の作品。以前友人の影響からゴスロリ大好きだった筆者がたまたまKERAを購入した際に出会ったのが本作である。その当時、シンプルな絵柄の少年漫画や少女漫画しか知らなかった筆者にとってこの作品との出会いは革命的であった。少し大げさかもしれないが、中村明日美子氏の描かれる繊細な絵柄と少しダークな作風、愛くるしいキャラクターに魅了され、私はすぐさま中村明日美子氏のファンになってしまい、中村明日美子氏の既刊を買い集めるようになってしまった。 話が脱線してしまったが本作である。ヒロインの世羅(せら)ヒツジと羽熊塚(はぐまづか)イタルが華麗に駆け落ちしていく、というストーリー。『少女革命ウテナ』の幾原邦彦氏が原作とあって、まあ、なかなかメタいというか、分かりにくい(笑)私はこの作品に夢中な時に、何人かの友人に本作を勧めたが、半数は「絵はきれいだが話がよく分からない」と返された。確かに、謎の多いストーリー展開であり、私のように絵柄に強く魅了されずにストーリーに興味を持てない人には少々読み続けるの酷かもしれないが、せめて3巻までは読んでほしい!美しい絵柄で繰り広げられる逃走劇を、画集を眺めているような気持ちで読み進めるうち、だんだんと奥まってゆくストーリ展開に目が離せなくなっているのだ。

キャラクターの纏うゴスロリ衣装!「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の麗しい衣装

キャラクターたちの纏うファッションは映画『下妻物語』の衣装協力を手がけた「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」が監修している。中村明日美子氏の耽美な絵柄で描かれた少年少女が、「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の衣装を纏って画面を彩っているのだ。しかも1話毎に衣装が違っている。緻密に描かれたふりふりフリルと美しいレースのドレスを纏ったゴスロリ少女達は、是非一見の価値はあると思う。

ポップで可愛らしい作風に隠された、ダークなスパイス!素晴らしい演出!

幾原邦彦氏あるあるかもしれないが、レースや可愛らしいキャラクター達とは対照的にストーリーは段々とダークな一面を見せてくる。物語のテーマは虐待・近親相姦・トラウマであり、作品にピリッとしたスパイスを与えてくれている。謎の多いストーリーだが、このスパイスが、次巻を読みたいという気持ちにさせてくれる。

謎が謎を呼ぶストーリー展開!キリンの血とは?イタルの正体とは?二人の逃避行の先には?個性的なキャラクター達

ヒツジとイタルの2人は作中、イタルの旧友であった兎河ギン率いるオトナを排除することを目的とした子供集団「燃えるキリン」と、ヒツジの父である世羅晶午に追われて駆け落ちを行っている。まず、二人はなぜ追われているのか?ヒツジは、父から異常な執着を受けており、結婚を認められていないこと、近親相姦を受けており、記憶障害になっていること。イタルは元「燃えるキリン」のトップであり、以前ギンを母親の虐待から救ったものの、ヒツジとの結婚を機にギンと決別し追われる身となったことは作中で明らかになっている。しかし、ギンは何らかの目的からヒツジを「確保」して利用しようとしているし、そもそもメインカップルの2人の正体も明確には描かれていないし、(過去回想で学生時代を描かれていたが、やっぱりまだまだ謎が多い)ヒツジの母の死も父との関係性も謎だし、メイン2人と行動するまろにえの恋の行方や1匹オオカミの少年、狼森エイジの動向など、まだまだ謎だらけのストーリーである。でも、1人1人キャラが立っていて、もっともっと過去について知りたくなる。ラストまで、本当に目が離せない!

まっすぐな愛も、ゆがんだ愛でも真のテーマは「愛」。愛の形は様々

まあ、一ファンの考察にすぎないけど。(笑)「愛してる」っていうヒツジのひたむきな愛が、イタルの虐待されてた子供たちと日々接して荒んでた心を癒して、二人は運命の恋人同士になった。「燃えるキリン」もギンも、かつて愛されなかった子供たちの集まりなんだよね。はたまた、世羅晶午は妻を殺し、娘を手にかける最低なオトナ、でも、心が成長しきれてない愛しかたを知らない大人。この2種類の人々が、本当の愛に触れたとき、その時に本当の救済はあるのか。しかし、「愛」というテーマを純粋な愛から執着や嫉妬、敬愛や友愛など、多面性に描かれており、幾原邦彦氏の力量は素晴らしいと改めて感じた。また、中村明日美子氏の描かれるキャラクターの表情の一つ一つが、あまりに美しく、かわいくもあるけど胸に迫るものもあるので、ぜひ注目しながら読んでいただけたらと思う。

美しい物語の終焉は?謎だらけのストーリーでも

幾原邦彦氏の『少女革命ウテナ』を見たとき、筆者は最初「演出は面白いけど正直話はよく分かんない」というのが正直な感想だった。しかし終盤へのジェットコースターのようなストーリー展開、伏線回収、ラストの演出は素晴らしく、感動した。「ノケモノと花嫁 THE MANGA」も、まだまだ伏線が多く、謎だらけのストーリーだが、その美しき終焉を見届けるため、今後もKERAを継続して購入していきたいと思う。

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