いい意味で派手さのないジャパニーズホラー - 高速ばぁばの感想

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高速ばぁば

3.003.00
映像
2.40
脚本
3.50
キャスト
3.30
音楽
3.60
演出
3.50
感想数
1
観た人
1

いい意味で派手さのないジャパニーズホラー

3.03.0
映像
2.4
脚本
3.5
キャスト
3.3
音楽
3.6
演出
3.5

目次

駆け出しアイドル3人の醸し出すリアル感

この映画の中心になるアイドル3人組、ジャージガール。

彼女らが廃墟に肝試しに行くことから話しは展開していく。

冒頭でカメラに向かい各々の決まり文句を言うところや、「肝試しに行くんだって~」と撮影の内容を紹介するところ、カメラが回っている間はブリッ子全開。

常に顔回りに手を添えるところや、首をクイックイッと傾げるところなど、良い意味でチープでリアルな演出だった。

カメラが止まると一瞬にして今時の中高生の態度になるところも良い味を出していた。

また、この3人、所々で歌いながら踊るのだが、見ていて辛いほど低レベルなクオリティーで、これが妙に現実味を持たせるのだ。

ただ単に練習不足なのかもしれないが、もしこれが演出だとしたら、とてもセンスを感じるところである。

はじまりは廃墟から。常に隣にある老婆の影。

ジャージガールのナナミ、アヤネ、マユコは、前途のとおり、肝試し企画のためにとある廃墟へ。

3人で入るのかと思いきや、ここはアヤネのみ廃墟な中へ…

廃墟はいかにも何かでそうな雰囲気を醸し出していて、控えめな音楽が恐怖を引き立てる。

アヤネがやや大振りな簪を拾うと、そこからいよいよ高速ばあばが登場。

その姿は迫力抜群で、おとぎ話に出てくる魔女に近いかもしれない。

黒ずんだ目に真っ白い顔がなかなか強烈だった。

アヤネはなんとか逃げ切るが、高速ばあばは廃墟の外でも行動できるようで、アヤネが逃げ切った後もアヤネやアヤネの周りに影響していく。

ジャージガールの公園ライブ(?)でマネージャーのモチヅキが撮影した映像に映り込んだり、その映像を見たモチヅキに、左腕を中心に血を流した自身の姿を見せる。

後にモチヅキは左腕を負傷し、あの映像が現実となるのだが、血を吐くという部分は現実になっていないので、恐怖を煽る演出だったのかもしれない。

また、実はアヤネを影で嫌って嫌がらせしていたマユコは、口から高速ばあばのものと思われる髪の毛を吐き出したり、

アヤネは撮影前にできた傷が悪化し、アイドル活動を休止する。

その後、マユコとナナミは、アヤネ不在のまま中途半端になってしまった肝試しを改めて撮影に向かうが、やはりそこでも高速ばあばの影がつきまとう。

ちなみにこのマユコとナナミが廃墟に入る下りでは、怪現象の連発。

もともとおかしくなりつつあったモチヅキが一心不乱に左腕にできた傷をかきむしり、血まみれになり

撮影監督のエノモトは両足があらぬ方向に折れ曲がる。

ただ突っ込みどころも満載で、廃墟で白い布の塊がドスンドスンと動くところは気が抜けてしまったし、

白い布の塊を見つけた3人の反応が薄すぎた。

エノモトに至っては、両足があんなにネジ曲がったのに唸る程度で、心なしか冷静。

緊張感のある流れだけに、拍子抜けしたというか、集中力が削がれてしまった。

高速ばあばの動きもそうなのだが、若干コミカルに感じてしまう場面が何度かあった。

とはいえ、高速ばあばが一瞬で通り過ぎるところや、マユコが白髪を吐くところ、アヤネの家での怪となど、恐怖を与えるシーンでの演出はかなり良く、葉でな音で驚かせたりすることはなかった。

ジャパニーズホラー特湯のジメッとした恐怖が再現されていたと思う。

つきまとう高速ばあばの影を上手く強調できていたのではないだろうか。

呪いは続く。変わる結末。

再び廃墟から離れた後、エノモトは廃墟で過去にあったことを調べ、ナナミとマユコに伝えるが、その後高速ばあばの登場によって以降姿を消してしまう(おそらく殺されてしまっている。)

廃墟は昔老人ホームで、入居していた老人たちは縛りつけられ、頬を切り裂かれるなどの虐待を受けていた。

この虐待については、後に呪いを解きにいったナナミとマユコの頭の中に映像として流れ込むシーンがあるのだが、さすがに目を背けたくなった。

ナナミとマユコは改めてアヤネの自宅を訪ねると、老婆姿になったアヤネから、簪を渡され、簪を廃墟の人形に戻せば呪いは解けるといわれて3度目の廃墟潜入を決める。

そして見事簪を人形に戻すものの、特に高速ばあばは消えず、追いかけられた末にマユコは死んでしまう。

呪いを解きに行ったはずなのに、消え去るどころか更に追い討ちをかけられるのは、まぁよくある展開。

だが、元々この映画ではジャパニーズホラーの鉄板に忠実に進行していたので、ここは想像の範囲内。

「いかにも起こりそう」ということが起きるのだ。

結果的にナナミだけは生き残ったように見えたが、その後しばらくしてソロ活動をはじめたナナミの前にまたもや高速ばあばが現れ、最後はナナミまでも高速ばあばの手にかかってしまった…

以前は、ジャパニーズホラーでも呪いを解決してひと段落という映画がちょこちょこあったが、最近はぐっと少なくなったように思う。

絶対的に、解決したと見せかけて最後に意味ありげな映像で実は呪いが解けていないことを暗示するのだ。

高速ばあばでも漏れなくラストのどんでん返しがあり、結局はバッドエンディングだった。

別にバッドエンディングにするのは悪いことだとは思わない。

ただ、高速ばあばの場合は、このエンディングによって「呪いの解き方」という、考えがふんわりと宙に浮いてしまったように思う。

人形に簪を戻せば呪いが解けるという条件を完遂させたにも関わらず、なぜ高速ばあばは消えなか

むしろ簪を戻すことで呪い人形が完成したようにも見えるが、そういった様子は語られなかった。

もしも「呪いを解くことに失敗した」とするのであれば、簪が折れているとか、戻す人形が実は他にあったとか、そういった失敗のニュアンスがあるとよかったのかもしれない。

総評としては、今時の効果音フル活用ホラーではなく、良い意味で地味なジャパニーズホラーだった。

強いていうなら、もう少しコミカルさを抑え、ラストに意味を持たせると更に引き締まったように思う。

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