「たかが犬」じゃない!深読みしまくった『ジョン・ウィック』
たかが犬?
ジョンが妻からの手紙を読んでいる間、ゲージからのぞき込むデイジーの表情がたまらん!
こちらとしては冒頭で亡くなっている妻のことを知る由もありませんから、今、目の前にいる仔犬のかわいらしさにクラクラしてしまうのです。
あの短時間で、“ずっと続くと思っていた幸せ”を本能的に刷り込むのなら、各家庭・個人の事情により(笑)受け取り方が変わってしまう仲睦まじい夫婦の姿よりも、まん丸お目めの仔犬と過ごす日々の方が、より効果的だと思います。
さらに心に訴えかけてくるのは、無表情ながらもデイジーと共に過ごすジョンの姿!
観ている私たちは、一緒に行動する彼らの姿が家族のように思えます。
ところがホッとした頃、チンピラが家に侵入―。
この時の何を感じましたか?
吠えるのをやめないデイジーに「殺されちゃう」と不安になったのでは?
銃声が響いて、デイジーの鳴き声が聞こえなくなった時は?
「たかが犬」ではありません。
デイジーは誰もが持っている“大切”なものです。
家族、恋人、夢、趣味、もちろんペット…。
みんなが共感してくれるものもあれば、世間一般の重要度には当てはまらない“大切”なものも個人の心の中にはあふれいます。
たとえ理解できなくても、軽んじたり踏みにじるような行為は許されません。
「くっそー。あいつ許さねえ。」という気持ちをジョンという人間で表現したので、大けがしているのに、錠剤でシャンとしたのでしょう。
対照的な二人
ジョンが必ず目標を達成する優秀な人であるのに対し、最終的に息子を売ってしまうヴィゴは、心が泳ぎがちな普通の人に見えます。
親という点で考えれば、できるだけの事をしていますので、ただ薄情という訳ではありません。
程度の差はあれ、子どもは愚かな事をします。
それをどう正してあげるか。愚かな行為の影響を受けた人々へどのような対処をするのか。
あれだけおバカな息子(公式HPでもバカ息子と書いてあるのが笑えます)を持ったのだから、いろいろとうまく収めることに慣れているのでは?と考えてしまいますが、そうはいきません。
子どもがトリッキーにバカでも、親は一般的です。
しかも、やらかした相手が絶対に怒らせてはいけない相手です。
どうしようか…そうだ電話!
ジョンに電話したシーンは、学校やけんかした友達の家に電話する親とかぶります。
手を尽くし、ジョンを仕留めたと思た直後に追い詰められるという展開は、映画として楽しいものの、ヴィゴの立場だったら「もう無理…」という諦めしか感じられません。
だから彼は、ヨセフの居場所を吐いてしまたのでしょうね。
彼は根本的にジョンと敵対して勝つことはできない運命です。
守るべきルール
一見すると華やかなホテル。
フロント担当は常に冷静でエレガント。バーテンダーは気さくで親しみやすい雰囲気。
スタッフはみな業務に徹していて、居心地が良さそうですがここは殺し屋ご用達で、宿泊者たち「ホテル内での仕事厳禁」というルールを設けています。
シンプルに考えて、ホテル内でドンパチされたら廃業してしまう。ということもあるでしょうが、驚くのはそれがしっかり守られているということ。
まさか、仕事をした人間が殺されるとは…。
ミズ・パーキンスを処刑した後にウィンストンがジョンに電話しましたね。
ジョンの復讐を手助けしたようにも取れますが、ルールを破る依頼をしたヴィゴを処刑する予定だったので、その役目を彼に譲っただけなのではないでしょうか。
表沙汰にはなっていないようですが、ホテルで横になっているジョンに発砲したマーカスは、ミズ・パーキンスと同時期、ヴィゴに殺されました。
息子の命と引き換えに生き延びたヴィゴにメンツなどないでしょうから、あのタイミングでジョンと仲の良いマーカスを殺すのは不自然です。
にも関わらずこんなにハイリスクな事が起きたのは、ウィンストンの電話の真意は処刑を促すため。と思わずにはいられません。
こうして考えると、もうウィンストンは神ですね。
彼は圧倒的な情報力と冷静さで、ルールを浸透させながらホテルを継続してきたのでしょう。
ホテルとその従業員は秩序で、恐らく彼らは心ではなくルールと照らし合わせて行動するのかもしれません。
どのような社会にも従うべきルールがあり、それを監督する立場があるのですね。
さて、どう生きるか?
まさに肉を切って骨を断つ戦法でヴィゴに勝利したジョン。
よろよろの彼を支えたのは妻です。
「帰りましょ」とささやく動画に突き動かされ、彼は生き延びるために最後の力を振り絞る。
そして、治療のために忍び込んだのは保健所らしき場所。(動物病院ではないですよね?)
あんなにボロボロなのに自分で治療するなんて、さすが!
頭の中はすっかり復讐一色になっていましたが、目的を果たした今新たな生きがいが必要です。
冒頭では妻が贈った犬を、今度は彼が自分の意志で選びます。
これはジョンの「生きる」という強い意志の表れでしょう。
日本での公開が2017年7月7日(金)に決定した『ジョン・ウィック:チャプター2』(仮題)。
連れ帰ったわんこは登場するのでしょうか?
そしてジョンはどう生きていくのでしょう?
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