結末を先出ししている物語 - D.C.if ダ・カーポ イフの感想

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D.C.if ダ・カーポ イフ

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結末を先出ししている物語

5.05.0
映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
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目次

髪の色が同じ姉妹たち

登場人物の関係性が分かりやすく感じたのは、姉妹・兄弟で髪色が統一されていたことです。

キャラクターの外見から、分かりやすく理解できることで、観る側に優しいキャラクターデザインです。たったそれだけのことかもしれませんが、好感をもてるポイントなのではないでしょうか。また、それだけではなく明確に赤・黄・青と色分けされていたのだと考えられます。

同系色を使うことなく、文字通り、キャラクターごとの色分けれていますのも分かりやすいです。

このアニメ作品は、比較的に登場人物が多い印象をもちます。もっと絞っても良かったようにも思えますが、それだけ制作スタッフが、登場人物を愛していることの表れだと受け止められます。また、周囲の人間関係に支えられていることが強調されていましたので、このような人物配置になったのだと考えられます。

その中でも、髪の色を同系色にまとめる発想は、キャラクター同士の関係性を分かりやすかったです。制作スタッフによるキャラクターデザインにおける素晴らしい気配りなのだと考えられるのです。

オープニング曲の映像

まさに純愛をイメージさせる映像作りも素晴らしかったように思います。他アニメ作品でも類を見ないくらいに、完成度の高い映像に仕上がっていたのではないでしょうか。

映像作りに、制作スタッフの原作愛、さらには想い入れがあるのだと考えられます。

アニメ本編も本当に恋愛要素に絞り込まれ、余計なものは排除され、一辺倒な内容で構成されています。短編アニメとしても充分に成り立つクオリティーであると考えられます。それだけに、オープニング曲の映像と物語本編の内容のイメージが綺麗に合致しており、映像の美しさにこだわった制作がされていると考えるのです。OVA作品のオープニング映像に納まっていることが惜しいと思える映像であり、細かい映像作りの微調整を繰り返すことで、とことん拘った映像制作されていることが伺えます。

結婚するまでのプロセス

本編の冒頭で、主人公「純一」と、ヒロイン「ことり」が結婚することが明かされていました。

すでに物語冒頭で、結末を明かしてしまっているのです。非常に斬新なストーリー構成なのではないでしょうか。そして、アニメ本編の大半が回想シーンで構成されています。冒頭の結末に至るまでのプロセスを描いているのです。結果が冒頭で分かっているだけに、すれ違う二人が描かれていても、先の展開が不安にないと考えられます。

しかし、すれ違う展開から、どうすれば関係が修復されるのだろうと、視聴者に先の展開を考えさせるのです。すなわち、結末を先にもってくることで、見方が大きく変わるのだと考えられるのです。

また、この作品は、本来の物語本筋の続編という位置付けの内容です。続編というより、本来の結末とは違った結末を描く物語といった方が正しいのかもしれません。

そして、その物語本筋を観ていなくても、楽しめる内容であることも付け加えておきます。

物語の構図が、「純一」と「ことり」の恋愛要素に絞られていることで、それまでの過程や予備知識が不要です。そのことで、すれ違う二人の関係が修復される過程を、素直に楽しむことができると考えられます。ひょっとしたら、このOVA作品がキッカケとなり、テレビアニメ放送されていたシリーズや、起源である恋愛アドベンチャーゲームを始める方はいるのかもしれません。

そういった可能性を秘めている作品だと思いますし、それだけの魅力があるコンテンツだと感じます。

また、その可能性までをも考えて、制作されたOVA作品なのだと考えられます。

また、結末を先出しするアニメ作品としても、製作スタッフのチャレンジ精神に溢れたものだと考えられます。

奥手×鈍感

アニメ本編の目線を考えれば、主人公は「純一」でもあり、「ことり」でもあると捉えられます。

それは、お互いの目線から、アニメ本編が描かれているからです。どちらかのキャラクターの一方的な視点で描かれていないことも、分かりやすいポイントだと考えられます。

それにより、お互いの気持ちがどのようにすれ違っているのか、明確に分かります。現実社会の恋愛においても、お互いの気持ちが、このように分かりやすくなっていれば、上手くいくケースも多いように思います。

そして、奥手である「ことり」、鈍感である「純一」は、恋愛における相性は悪いようにも感じられます。奥手であることで、自分の感情を表現できない「ことり」は、「純一」に気持ちを伝えることができないと考えられるのです。

そして、鈍感である「純一」も、「ことり」の気持ちを察することが苦手です。

どちらにとっても、恋愛において相性の良い人物像は、気持ちの分かりやすい性格の持ち主なのではないでしょうか。そして、自身の感情に素直で、グイグイ引っ張っていくタイプの方が相性が良いと考えられます。

昼ご飯が屋上で鍋!?

視聴者を驚かせる展開、設定として機能しています。

ただ、昼食で屋上に友達同士が集まってくるという展開も、鍋が行われるという滅茶苦茶なもので、自然のことのように思えてきます。コミュニティーがあることで、「純一」「ことり」の進展を、周囲も見守る環境を形成していると考えられるのです。そして、多人数で行うことを前提にする鍋があることで、原作の恋愛ゲームの登場キャラクターを自然なかたちで、アニメ本編にも登場させたかったのではないでしょうか。

そして、その中で「ことり」の手作り弁当を食べる「純一」は、鍋があるのに、お弁当を食べているのです。お弁当を作ってくれてきた「ことり」に対して、当然のことですが、二人の仲睦まじい関係性を強調しているものと考えられます。

また、アニメ本編の中で、登場人物が食事をとる場面が描かれていることは、視聴者から親近感を増す狙いがあると伺ったことがあります。現実社会の私たちにおいても、毎日食事をしており、本編の登場人物も画面の中で同じように食事しているのです。

私たちと同じような行動を、アニメの登場キャラクターがとることで、視聴者が作品に対して親近感をもつようになると言われています。

妹の部屋を片付ける意味

「純一」「ことり」がすれ違う要素として、大きかったのが妹の部屋の片付けでした。

死んだ妹に対して、気持ちの整理をつける意味が強かった「純一」に対して、妹の部屋を片付ける行為に「純一」らしさを感じられない「ことり」という構図になっていました。

妹の部屋を片付ける、という行為に込められた意味が、当作品の重要な部分なのだと考えられます。

死んでしまったからといって、妹の部屋を綺麗に空っぽにしてしまうことに必然性はないのです。それは、「純一」の整理のつかない心理を埋め合わせするものでしかなかったのかもしれません。しかし、綺麗に整理を始める「純一」に対して、「ことり」は気持ちの冷たさみたいなものを感じられたのではないでしょうか。

死んでしまったからといって、綺麗に忘れなくても良いのです。

心に刻んで、生きているものがショックから立ち直り、元気に生活できればそれで良いのだと考えらます。死んでしまった妹に対して、部屋を片付けるという行為に、「純一」「ことり」の間に、大きな溝があったのだと考えられるのです。

それぞれの変化

好きである気持ちが強いことから、お互いに大きな変化あったのだと考えられます。

「ことり」の気持ちを一生懸命に理解しようとする「純一」の姿は印象的です。また、自分から分かりやすい感情表現をした「ことり」の姿も大きな変化だと受け取れます。「ことり」は回想場面の最後で、自分から「純一」に対してキスをしています。

どんな鈍感な男であっても、愛情を明確に感じ取れる行動であり、場面だったのではないでしょうか。

相性が悪いようにみえても、お互いに歩み寄ることで、関係性を構築しているのです。そして、新郎新婦となった「純一」「ことり」の姿も印象的でした。そこに映っているのは、鈍感な「純一」ではありませんでした。そして、奥手で感情表現が苦手な「ことり」の姿ではありませんでした。

それぞれが成長して、関係性を深めたことで、気持ちが通じ合っている様子が伝わってくる場面だったのだと考えられます。

しかし、この作品において、結婚がゴールのように描かれています。しかし、現実社会で当てはめて考えてみれば、スタート地点に立ったに過ぎないのです。この先、二人は難関を乗り越えていくことができるのでしょうか。決して、幸せばかりが待っているわけではないでしょうから。
これからも、成長という変化をしていくのでしょうね。

そう感じさせる結末だったのだと考えられます。

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