特異な存在意義であるアニメ作品
リアルな政治問題
アニメ本編を観ると、映画作品でも良かったし、ドラマ作品でも良かった内容です。
アニメ媒体である必要は感じられない内容だと感じられます。
しかし、アニメ媒体で制作されたのには、明確な意図があったのだと思います。まずは、商売目的で制作された作品ではないということです。「めぐみ」というアニメ作品は、インターネット上で自由にダウンロードできますので、観るのに一切の費用を要しません。それだけ、アニメ本編の内容やメッセージ性を世間一般に浸透させ、認知してもらいたい意図を感じられます。
また、アニメ媒体を選んで制作された意図に、制作コストという問題もあったのかもしれません。
実写撮影を行う映画やドラマにおいて、出演者のギャラ、制作コストを考えると、アニメ映像を制作する方がコストをして安上がりという考え方はあったのだと思います。とくに世間一般に無料で配布されている作品なので、制作コスト面での抑制という考え方は、企画の段階で大きく作用したものだと考えられます。
また、アニメ媒体であることで、対称年齢が広い作品です。
内容を振り返ってみても、大人じゃなければ理解できない内容や描写はなく、小学生の子供が観ても十分に理解できるものだったと思います。子供に観てもらうことで、この政治問題・社会問題が風化されないように、「次世代に向けてのバトンタッチ」という意味合いも強かったのではないでしょうか。
アニメ本編における主人公、横田夫妻は高齢です。
また、現実社会において、真剣に問題解決に当っている横田夫妻と同じような当事者たちも、高齢であることは間違いないです。この先、この問題が風化されてしまう可能性も高いように感じられます。だからこそ、この許されない国家犯罪が風化されることのないように、記録として残るものにしなければならないのだと思います。
世間一般への問題提起であり、目的は浸透なのだと思います。
そして、次世代に向けてのバトンタッチという意図も強く感じられます。また、この問題がアニメ作品として残っていることで、後世に記録として残っていきます。
他のアニメ作品とは、存在意義が明らかに特異なものです。特異な分、強烈なメッセージ性を感じられます。
アニメ本編における横田夫妻
メッセージ性は強く感じられましたが、アニメ本編に登場した横田夫妻の美化に違和感がありました。
あまりに格好良いお父さんであり、また、綺麗なお母さんでした。現実社会における横田夫妻は、可愛らしい老夫婦という印象です。横田夫妻はテレビ出演される機会も多く、取り挙げられ報道されたことも多かったです。テレビ画面上ではありますが、実物の姿を知っているだけに、アニメ本編における横田夫妻が格好良すぎて、「実物と全然違う!」という印象が強かったです。
実物の横田夫妻に、アニメ本編のキャラクターを似せようとしていないです。
リアルに描くのであれば、そこもリアルに再現して欲しかったです。たったそれだけのことと思われるかもしれませんが、それだけで現実離れした物語のように感じられます。
この作品で大事なのは、リアルさにこだわり、リアルに描ききることではないでしょうか。
現実社会の政治問題を、観る者に、「リアルに感じてほしい」という意図は、制作上で強かったはずです。たったそれだけのことで、多少でもリアルさが損なわれてしまっているように思えるのです。
事実と想像
拉致被害者である横田めぐみさんが、船の中で、助けを求める場面がありました。
アニメ本編における、大半が事実なのだと思います。
しかし、めぐみさんの船の中の描写は、想像の域を出ません。めぐみさんと直接、コンタクトがとれない現状において、それを確かめる術がない為です。ひょっとしたら、めぐみさんは船の中で、もっと酷い目にあっていたのかもしれません。もしかしたら、泣き叫んでいる様子はなかったのかもしれません。この場面においては、今の状況では、本人談ではありませんので、想像の域を出ないのです。
また、横田一家の円満な家族生活が強調されていましたが、事実がどうだったのか、確かめる術はありません。
本当は、ギクシャクした家族関係だったのかもしれません。
エリートサラリーマンとして、仕事が忙しそうだった父親像でした。あまり家庭を省みない父親だったのかもしれません。このアニメ本編を全て、鵜呑みにすることは危険なことだと思います。アニメ本編を観て、自分なりに解釈して、改めて考えてみることは必要なのではないでしょうか。
北朝鮮において、横田めぐみさんは家族を構成しているようです。
ひょっとしたら、横田めぐみさんは、自分の意思で北朝鮮を離れたくないと考えているのかもしれません。自分の家族を放っておいて、自分だけが日本に帰国することなんてできないでしょう。また、家族揃って日本に亡命するにしても、横田めぐみさんの夫の一族が、その後にどんな目に合うのか、想像するだけで恐ろしい気がします。
また、横田めぐみさんのご子息といわれているヘギョンちゃんにおいても、DNA鑑定をしなければ、本当に横田めぐみさんのご子息なのか、事実は分からないことです。
本当に難しい社会問題・政治問題なのだと思います。
少なくとも、今の北朝鮮の社会体制が続く限り、円満解決や、事実が明らかになることはないように感じられます。
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