夢を上手に操り、現実問題を解決する - 悪夢ちゃんの感想

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悪夢ちゃん

4.504.50
映像
4.75
脚本
4.50
キャスト
4.75
音楽
4.50
演出
4.50
感想数
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観た人
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夢を上手に操り、現実問題を解決する

4.04.0
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.0

目次

誰もが見る夢が学園ものに登場

寝ている間に、人は必ず夢を見る。その夢が自分にとって良い夢だったか悪い夢だったかで、現実でもそれを引きずることもある。夢占いなんかもあり、占いにすがりたくなるほどの強烈な夢を意識するように、人は夢に左右され、ただ無意識のまま忘れてしまう。そのさまざまに左右される夢に焦点をあてて、学校の問題を解決する新しい発想である。ただ、単純な学園ものではなく、限られた人だけが見ている予知夢として表現しているのがファンタジーらしい要素があっておもしろい。夢は見て忘れるだけのものではない。その夢を研究し、予知夢を見るものを自分の利益のために利用しようとする人間まで登場する。人が抱く夢の世界をリアルに表現していて、ハラハラさせられる場面も多かった。このドラマは夢を舞台に、主人公・彩未の教師としての成長と予知夢を見る結衣子の成長を描いている。ただ、ファンタジーとしての表現のため、難しく考えることなく、大人から子供まで楽しめる要素を持つ構成だ。主題歌から映像、背景の色などがマッチした演出で楽しみに番組を迎えることができた。

二つの顔と、二つの世界を交互に

主人公・彩未はひどく二重人格である。普段は良い先生として笑顔を振りまくが、実際は面倒が大嫌い、腹黒い性格である。その現実から離れるために、本人が明晰夢と呼ぶ夢を見る。多くの人は、現実につらいことでもあれば、良い将来を想像して、あるいはまったく違う現実に逃げるために妄想したことがあると思う。それを夢としてはっきり見ることができるのはうらやましい。誰もが持つ理想の世界を、彩未の明るい部分と暗い部分をはっきり分けて表現することで肯定した事は、多くの人に共感を得られるものである。しかし、現実と理想をリンクさせ、より現実を理想に近づける作業が始まる。それが予知夢を見る結衣子との出会いだ。この結衣子の「しぇんしぇい」と呼ぶ声が耳をついて離れない。彩未が夢を見て楽しむことと反対に、夢にうなされ、彩未に助けを求めた結衣子の性格が見える気がする。結衣子が求める助けにいやいや応じたことで、次第に現実と向き合い、自身の過去を振り返り、本当の自分をさらけ出して教師として人間として成長していく様はとても気持ちが良いものだ。周囲を取り巻く人物も印象的である。保健室の先生は何かにつけミーハーな姿を見せているが、彩未とまったく正反対な性格で接する2人のやりとりは、見ていてコントのようだ。すべてのキャラクターがとても濃く、個性的なのも自然と笑いともたらしてくれる役割を担っている。学校の教師は皆一様に明るく理解ある。逆に夢という事実を研究し、その実態を知る人物たちは影があるように見える。その比較が、現実と夢の境目を演じているようだ。

夢と現実を合わせて、より良い未来を

彩未や結衣子の夢には現実離れした動物が多く出てくる。しかし、それにはすべて意味があり、それを読み解くことで学級の問題を解決する。ただ、その夢の演出が鮮やかで大胆だ。それは夢ななおか現実なのか。それを知る瞬間がなんともワクワクしてくる。そしてファンタジーであることを物語る。ファンタジーであると思うと、気軽に安心して見られるから不思議だ。彩未の夢に出てくる夢王子とは、彩未の理想だと感じる。サイコパスといわれる裏では意外とロマンティックなことを想像していた。この夢王子は、現実の夢に関する研究員、志岐貴とウリ2つという事実が判明する。見方なのか敵なのか、いまいちつかめないこの人物を、GACKTが演じたのは個人的には意外で、新たな良さやもう一つの顔を見ることができた。演じる役者も、意外性をついたところが、このドラマの構成のおもしろさとなったと感じる。最後、志岐は彩未をかばい、海に落ちるのは実は彩未を好きだったという恋愛ものにも発展してくる。これも、夢と現実をリンクさせた演出だ。夢として逃げるのではなく、現実として理想に近づけること、それが志岐貴の登場で大きく舵を切ったように見えた。

それぞれの場面を推理して理解する面白さ

夢は、現実を実際左右するものなのかもしれない。悩み事を抱え、それが強ければ夢の中でも登場する。また、夢を見たことで嫌な予感や良い予感が本当に的中することもある。それを利用し、学校の問題を解決したこと、一話一話で彩未が成長していく様子は毎回が感動で楽しむことができた。夢を通じて過去を知ること、なくした過去を知ることが彩未にとって一番の成長となった。夢と同様、嫌な現実から離れることなく、それと向き合いどう接するのかが大事であることを教えてくれている。学校での世界、研究所での世界、現実の世界、そして夢の世界と舞台がころころ変わり、1時間で放送するには盛りだくさんの内容だ。ときどき、ごちゃごちゃになって分かりにくいときもあるが、そこを推理して見ることにも楽しみ方を見出せる。このドラマの中で比較する場面が度々出てくる。学校と研究所、現実と夢。まったく正反対の性質を持たせた場面をうまくリンクさせたことが、彩未という一人の教師を等身大に成長させた感動できる物語だった。

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他のレビュアーの感想・評価

不幸中の幸い

人の未来を悪夢としてみることができる。それっていいの?悪夢ちゃんは毎晩人の未来をみることができます。ですが、それは悪夢として見えてしまいます。悪夢ちゃんんとってその悪夢は嫌なものだったと思います。未来とは言っても、不吉な未来ばかりで、人が焼け死ぬことや、人が自殺しようとしているところがみえてしまいます。人の最後を悪夢としてみてしまうのだから、それはかなり辛かったと思います。夢は外から来ているという悪魔ちゃんです。そうすると、悪夢ちゃんは人の無意識につながって未来がみえる、ということは人の無意識は外側にあるということになります。それは心が外にあり無意識の影響を受けながら生きているということになります。現実の僕たちはどうでしょうか。無意識、心は外側にあるのでしょうか。それともうちがわでしょうか。それはいつまでたっても誰もわからないと思います。それがわかった時は悪夢ちゃんのような人がいて、す...この感想を読む

5.05.0
  • たくたく
  • 262view
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