学校の闇を知る、35歳という立場 - 35歳の高校生の感想

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35歳の高校生

4.004.00
映像
3.50
脚本
4.00
キャスト
3.50
音楽
3.50
演出
4.00
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学校の闇を知る、35歳という立場

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
3.5
音楽
3.5
演出
4.0

目次

35歳という大人の目線

35歳で高校に入れるものなのか、と疑問に思ってしまう。実際は高校入学に年齢制限はないから、中学を卒業していれば全日制でも入学できるらしい。まずそこを調べるところから始まった。高校を中退したとしても高校卒業認定試験を受けるという方法もあるし、そこから大学受験資格を得ることもできる。なぜ35歳にもなって高校に編入しようと考えたのかという突飛な発想のドラマで興味を持てた。視聴者を呼び込むためにもタイトルとは重要な役回りな物だと改めて感じた意表をついたものである。高校生というどこか大人びて、だけどもまだまだ未熟な子供たちの多感な時期を描くだけあって、そこには学校の問題がいくつも浮かび上がる。いじめやクラス順位、家庭の問題などをそれぞれテーマとして演出している。しかし、主人公は35歳だ。学校での問題が焦点となっているが、35歳の人が18歳のときに通った時代と、今現在18歳として通っている時代とはギャップはあるのだろうか。そんな感覚も主人公を通して見て、自分なりに考えることができた。

教師でも子供でもない、年齢の持つ距離感を表現

まず、35歳という年齢設定の役者が高校の制服を着ているのはなんとも不思議な感覚だったが、かっこよく着こなしていて、スタイルの良い女優さんなだけあると感じた。同じ制服で同じクラスで同じように授業を受け学校生活を送っているが、一方で、高級車での登校、喫煙や飲酒は完全に大人として描いており、担任の教師でさえもたじたじになるほど、他の生徒とは一定の距離感を持っている。当事者でありながらどこか客観的に、冷静に解決する姿のようだ。今の高校生の複雑な感情をなかなか理解しにくいものでも、おかしいことは単純におかしいと言える、良い意味で年齢を表現している演出である。学校の闇を教師でもなく、いまどきの生徒でもなく、また違う立場で見て解決する。こう考えると、学校の子供のあり方に慣れていたり、保護者や他教職員との関係を気にしなくてはならない教師よりも、より子供たちに近く、自由に振舞うことができる特別なポストなのであろう。年齢であらわされる距離感が絶妙で気持ちの良い物語である。

学校にひそむ大きな闇を訴えて

特に印象に残ったのはクラスにカースト制が存在するということだ。カースト制は、インドに残る身分差別の順位であるが、それが学校の闇として言葉として使われていることに衝撃を受けた。クラスのより強いものが弱いものたちを支配する。よく考えれば、支配という言葉はなくても、実際の学校生活を送ったときにクラスのリーダー格の子は強いとなんとなく感じたことを思い出した。その中で、自分はどう振舞えば皆についていけるのか、仲間外れにされないかを必死に模索し行動している姿は、つらい現実を見せられたような気がする。よく考えられた演出である。いじめを受けてつらい思いをしたあとは負の連鎖を招く。カースト制によるいじめを苦に自殺した姉を持つ生徒が起こした事件は、絶ちたくても断ち切れない、いじめという闇がいかに難しいものかを突きつけている。なぜ、いじめが生まれるのだろうか。自分の生きる道を選ぶのに子供たちも必死だ。でも、いじめというものはお互いに苦しみしか生み出さない。そしてその苦しみは憎悪として膨れあがる。誰かが見つけ、その憎悪の根を摘み取ってあげないと、続く連鎖は止まらない。それを子供たちに、そして大人たちに語りかけ、その重要性を伝えようとしているように感じるのである。

実りある学校生活と人間としての成長

主人公はクラスの闇を解決しようと奮闘する中で、自身が受けたいじめがフラッシュバックする。これは、いじめの問題が決して今だけの問題ではないことを物語る。どんな時代でもいじめはありうる。それを受け、家庭の事情も重なり中退せざるを得なかった主人公にとっては、またいじめを繰り返す現場を見て、その悲壮感は大きかっただろう。だから、なおのこと、解決したかったに違いない。どこか冷めていて、さばさばした空気感を持つ主人公だが、クラスをまとめるのにまっすぐで、やるべきことはやり通す力を持っている。そして、そんな彼女を見て助けられた生徒たちは彼女の力となり、クラスをひとつにまとめていく。回が進むにつれて問題が一つ一つ解決されていく様子はとてもすがすがしいものだ。35歳という年齢から見たとき、18歳の子が通う学校は、自分たちのときとはやはり少し違い、主人公の「今の高校生は大変ね」という口癖にも見られるように関係性は複雑化している。でも、根底にあるのはいじめであり、それは今も昔も変わらない。大きなギャップは生じていないと感じられた。また、先に主人公は35歳の大人として描かれていることを述べたが、自分が18歳のときに受けた傷を引きずり、35歳で高校に編入しようとした姿は、まだどこか大人になりきれていない部分を表しているようだ。孤高を貫こうとしつつも、闇を見過ごすこともできず、自分なりに奮闘することで、過去を断ち切り、心身ともに大人として成長していくヒューマンドラマであった。

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