なんとも言えない無常感
松本清張の作品ってどれを取っても不条理さを感じることが多い。黒革の手帳もしかり、砂の器もしかり。思わず「許してやってくれよ!もう十分苦しんだだけじゃないか」と叫んでしまいたくなることが多々あるのだ。特にその多くが才能に恵まれたものや、不幸な運命を背負ってしまった人間だからなおさらである。このゼロの焦点もその不幸な運命に翻弄された人間のドラマとして非常によく描写されていると思う。戦後間もない時期の生きるために必死になっていたが故に、辛い運命を背負い込み、その運命に翻弄される様は悲痛である。このストーリーの展開はやはりさすが松本清張といったところであろう。しかし、題材は良いのに若干残念な点があるのも事実である。主人公のヒロイン役を演じた女優が私には納得いかない。どうしても時代背景や雰囲気にそぐわないのだ。本人の持ち味なのだから少々仕方ない部分もあるが、いかんせん幼すぎる印象を与えてしまう。その他の俳優・女優のクオリティーがあまりに高く、配役に絶妙にマッチしているだけにこの点だけが浮き立ってしまって胃いるのはおそらく見返してみたら納得いただけるものだと思う。やはり、私にはベテラン女優(年齢が多少違っても)を起用して欲しいと思ってしまった。
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