セーラームーンが愛される理由
子供向けとは言わせない
「月に代わってお仕置きよっ」というセーラームーンの決め台詞は、作品を見た人だけではなく、見た事がない人達にも知られている有名なフレーズとなりました。月野うさぎが変身してセーラームーンとなり悪と戦う。というテレビシリーズは確かに子供をターゲットにしていますが、劇場版は一味違います。大人だからこそ感動する部分がたくさんあります。例えるなら、普段のテレビシリーズでは泣かない『ドラえもん』や『アンパンマン』が劇場版になると途端に涙を誘うというあの感じです。どうして、劇場版というだけで普段とは違って見えるのはなぜか分かりませんが、子供より先に大人が泣いてしまうのもまた事実です。映画館という空間がそうさせるのかは分かりませんが、でも決して嫌な気はしません。そして、現在も『プリキュア』の劇場版を見て涙している方もいます。テレビシリーズと違い、劇場版は決して子供だけの映画ではありません。
孤独が人を変える
物語はうさぎ達の前に1人の青年が現れる事から始まります。フィオレという名のその青年は異星人であり、幼少時代の護の友人でもありました。そして、セーラームーンは護を騙していると、うさぎ達を攻撃してきます。全てはフィオレの弱い心が招いた事です。その弱い心に悪魔の花、キセニアンが入り込んだのです。キセニアンはフィオレの憎悪を駆り立て、地球征服を企みます。しかし、彼の心はまだ完全に支配されてはいなかったと思うんです。だってそれが証拠に、うさぎを庇って倒れた護を、フィオレは心の底から心配していました。しかし、キセニアンの力で彼は完全に正気を失ってしまいます。人の心を変えてしまうのはいつだって孤独なのです。孤独だから他者を嫌い、他者と関わりたいと思っているはずなのに他者を傷つけてしまうのです。そして、そんな孤独はいつの日か憎悪へと変わってしまうのです。そんな憎悪に染まった心を癒すのは「愛」の力だけだと言うのが、この作品が伝えたいメッセージだったのではないでしょうか。うさぎはフィオレの憎しみの中に、彼の孤独を感じました。フィオレが銀水晶を掴んだ時、彼女は微笑むのです。その微笑みは紛れもない彼女の母性だったのです。銀水晶の輝きと共に消えたフィオレですが、巨大な隕石と化した星は地球へと向かいます。そして、プリンセスセレニティとなったうさぎは仲間達と力を合わせて隕石を止めようとします。孤独だったのはフィオレだけではありません。セーラー戦士だって、護だって孤独なのです。もしかしたら、うさぎも孤独だったのかもしれません。幼いうさぎが護にバラの花を差し出します。弟が生まれたお祝いにもらったのだというその花を差し出しながら、「おめでと」と言います。それは、本当は全ての人が言って欲しい言葉なのです。世の中には祝福されて生まれてくる子供もいれば、祝福されない子供もいます。しかし、大切な命を授かった事には間違いないのです。それだけで「おめでとう」なのです。こんな壮大なテーマだとは思いませんでした。唯一不満があるとしたら、フィオレの事がウヤムヤになってしまった気がする事です。彼は再び宇宙へと旅立ちますが、これで良かったのでしょうか?出来れば、彼を受け入れてくれる星が現れて、彼が真の意味で孤独から解放されるようなラストシーンが見たかったな。なんとなく、あっさりな感じになってしまったのが残念です。
まるでミュージカルのよう
『セーラームーン』といえば、主題歌も良いんです。「ムーンライト伝説」はもちろんですが映画の主題歌となっている「MoonRevenge」はかなり良いんです。作詞は冬杜花代子さん、そして作曲は「あなた」で有名な小坂明子さんなんです。歌っているのは歌手の方ではなく、セーラームーン役の三石琴乃さん、セーラーマーズ役の富沢美智恵さん、セーラーマーキュリー役の久川綾さん、セーラージュピター役の篠原恵美さん、セーラーヴィーナス役の深見梨加さんという声優さん達が担当されていました。曲自体もとても素晴らしいのですが、その使われ方がとても良いのです。うさぎが目を開けた瞬間にイントロが流れるあのタイミングがなんとも言えず素晴らしいのです。あんなに映像と音楽がピッタリ合う作品はありません。これは、監督である幾原さんとプロデューサーの東さんの提案で、クライマックスはミュージカルのようにしたいという事での演出だそうです。確かに、まるでミュージカル映画を見ているような気分でした。そして、歌詞もまたとても良いんです。映画では二番から流れているのですが、内容も映画を意識したもので違和感はありません。「2人でなら砕け散るまで」という歌詞がうさぎの決意を表しているようで、何度聞いてもまた聞きたくなるぐらい、この曲は名曲だと思います。そして、プロの歌手の方にも引けをとらない声優さん達の歌唱力にも驚きました。
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