ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵
『ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵』は、2006年に公開された映画です。
作画について
この映画の作画についてですが、顔や体型が原作と少し違うのは当然のことですが、遠くにいるキャラクターを書いてある時、少し手抜きっぽいなと思いました。逆に、近くのキャラクターを書いてある時は、原作に近い感じで書かれていたと思います。横顔なんかは、いい感じでした。
海や山や、大地などの風景は美しく表現できていて、観ていてとても癒されました。
さて、それでは内容の考察をしていきたいと思います。
島へ向かう経緯
この映画は、麦わらの一味が宝箱を拾い、その周りに集まっているシーンから始まります。その宝箱を開けてみると、中からお婆さんが出てきます。これが、ローバ(ラチェットの母)との出会いですね。なぜローバはたったひとりで海の真ん中にいたのかですが、息子には「一人旅に行ってくる」と言って出かけたようです。 ここはそこまで深く考えることではないかもしれませんが、ローバは息子が何を企んでいるのか怪しみ、後に出てくる執事の権造に、「息子を探ってもらっていた」とのことでしたので、自分が目につかない状況で息子が何をしでかすのかを確かめるつもりで、権造に見張りを頼み、一人で海へ出たのではないかと考えました。この権造、映画の後半でも、一人でラチェットの元を離れたり(おそらくこの時ローバの元へ行っていたのではないかと思います)、一味のピンチを助けてくれたりと、ラチェットと言うよりはローバを慕っていたようでしたので、そのように思ったのです。
さて、ローバは自分の島のエターナルポースを持っていません。そんなものはもともと無いと言います。代わりに、「カメポース」というものが存在し、カメが向く方に行けば島に帰れるということです。これは、ローバの住んでいる島は、島ではなく実は生きたカメだったから、生きたカメ同士繋がって引き寄せ合っているんだと思います。
このカメポース、原作では出てきませんね。カメの甲羅に人か住む島が出てこない限り、出てくることは無いと思います。現在、原作では似たような設定の「ゾウ」という島(?)が出ていますが、そのゾウも1000年生きていて、しかも動いていますので、エターナルポースは通用しません。ゾウへ向かいたい場合は、そこにいる誰かのビブルカードでたどり着くようですね。
そして、ローバは島に伝わる言い伝えで、「金の冠」があると言います。そして、お宝の話にも関わらず「そんなものある訳がない!ただの言い伝え」だと珍しく慎重なナミ。ローバが助かるためにウソをついていると思ったのでしょう。その冠は、「海の王様」だけがかぶることのできる宝だそうで、この「海の王様」という言葉にルフィが反応します。実にルフィらしいですね!どんな時もけっきょく船長命令には逆らわない一味なので、ローバを島に送り届けることになりました。
「ゆらりうた」について
島に伝わるうたで、1000年に一度産卵のため起きるカメを起こすための歌です。
その歌詞は、
【ゆらりゆらゆらゆらゆらり 海の王様 金の冠 白き蛇の目 ふたつの月 黒き風音 痩せる思い】
これは、私の耳で聞いたものを記しました。普通に考えれば、という所でしょうか。
この歌から、ラチェットと一味は謎解きを始めます。この白い蛇の目、ナミに怒られ、うなだれるルフィがたまたま見つけます。さらに「ふたつの月」。月について考える一味ですが、謎解きに飽きて遊び始めるルフィ、ウソップ、チョッパー。そこでふざけて蛇の目らしきものを壊してしまいます。もう片方の目も壊すと、なんと洞窟への入口が現れますね。
「ふたつの月」は、月ではなく突く、の突きだったようで…。分かりにくい…。(笑)
一つ目の謎が解けました。
さらに洞窟の中の森で、ロビンが文字を発見。そこには歌の続きが記してありました。
【青き水瓶 飲み干す時 緑の森に 落ちるイナズマ】
これも、私が耳で聞いて普通にこうだろうと思った歌詞です。
しかし、ここでもまたルフィの野生の勘と、ナミへの恐怖心が好転し、鳥の銅像が倒れ、水瓶の水が流れていきます。「飲み干す時」ではなく「飲み干すトキ(鳥)」だったわけです。ここでも外れた…。
さらに、壁に挟まったルフィを助けるためにゾロが壁を切ると、中から緑の杜(モリ)が出てきます。これも、モリ違い!とことんダジャレですが。
そこにナミが雷を落とし、島ガメが目を覚まします。
この歌の謎解きは、全てルフィの野生の勘と、運、ナミへの恐怖心が重なりたまたま上手くいきますね。これは、麦わらの一味がいなかったら誰が解けるんだろうと思える程の難問。そして、先祖ももっと分かりやすい歌残せば良いのに…と思いましたが(笑)、今回のラチェットのように、この歌で島ガメを悪いことに利用しようという人に簡単に解けないように、あえてこのような歌を残したのではないかと思います。カメへの優しさでしょうか。
何にせよ、歌の謎を解いたのが麦わらの一味で良かったと思います。
ラチェットという男
さて、今回の映画での敵、「ラチェット」。敵とはいえ、個人的には悪いやつとは思いませんでした。(笑)
なんと言うか、心が子供のまま大人になってしまったような純粋さがあるような気がします。個人の見解ですが、男の子ってロボットとかメカとか好きな方が多いですよね。(笑)
ローバは、「父親が死んだ時からメカにのめり込みだした」と言います。父親が死んだショックからか、その寂しさを埋めるためにメカの研究にハマってしまい、持ち前の器用さもあり、自分は天才だと思い込んだ結果、「巨大なカメと自分の天才さを持ち合わせれば必ず世界征服できる」と思い込んだのではないでしょうか。島の言い伝えを本気で信じるあたりもすごく純粋でいいと思います。(笑)その他も、麦わらの一味に対して「あなた達とまともに戦っては勝ち目はない」と認める素直さ(これは、頭がいいと思うので分析力もあるでしょうが)や、ローバのことを普段は「おかあちゃん」と呼んでいるのでしょうが、敵や部下の前でそれを隠して「母上」と言い直したり。(笑)時々動揺して「おかあちゃん」と出てしまう所は可愛いとすら思います。(笑)
敵としては強くもないし、憎めない、いいキャラクターだなと思いました。
母と息子の想い
上記にも書きましたが、今回の敵ラチェットは、とても母親を大切にしているというのは観ていて伝わってきました。ルフィ達にローバを人質に取られたと勘違いして、スグに助けに向かったり、ローバからすると、「母親想いのとてもいい子」だそうです。分かります。
ラチェットを止めようとちょくちょく注意しに現れるローバを追い払うのも、自分の計画にローバを巻き込みたくないというのもあったのではないのかと思います。
ラチェットは、自分が住んでいる島は巨大なカメと知った時から、このカメをメカで支配して(ややこしいです)世界征服を目指しますが、きっと自分の才能を世界に認めて欲しかったのだと思います。それは、母であるローバにも同じように、自分のしていることを認めて欲しかったのかもしれません。
そしてそのローバも同じように、ラチェットをとても大切な宝だと言っていましたね。息子を怪しんで権造に探ってもらっていたのも、息子が変な気を起こして大変なことに巻き込まれないためにだと思います。ローバはルフィ達に、こんなことになる前に息子を止められなかったと自分を責め、ラチェットを許して欲しいと頼みます。オマケに、島の平和も願っていますね。これはその時の会話です。
・ローバ「息子を許してカメを止めてこの島を平和にして下され!」
・ウソップ「サラリとお願い増えてるぞ。」
・ゾロ「油断できねぇババアだな。」
これは笑いました。ルフィ達の強さや人柄を見てのお願いだとは思います
。登場シーンから思っていましたが、宝箱に隠れて海賊から身を守るタフさや、上手いこと言って島に送ってもらったり、ローバはとても世渡り上手です。(笑)この辺りの可愛らしく憎めない感じや素直さは、ラチェットに遺伝しているような気がします。
この映画は、親子それぞれの想いや野望を胸に、「お互いを大切に想う」という軸だけはブレずに進んでいきます。
三強の戦闘
ワンピースの映画で私が最も楽しみにしているのが、一味の戦闘シーンです。メインはルフィですが、ゾロとサンジのいわゆる三強の戦闘シーンは、他のメンバーよりも尺は長いことが多いですよね。今回の映画では、直接の戦闘シーンはこの三強のみでしたが、それぞれすごく「らしい」部分が見れたのではないかと思います。
そして、一味全員でラチェットの城に乗り込むシーン、夕日バックでとてもカッコイイですが、一瞬しか映らないのが残念です。(笑)
ここから、今回の映画の三強の戦闘シーンの紹介です。
◇ルフィ vs 鉄人くん(ラチェット)
まず先に出てきたのは、「鉄人くん28号」。ロボットに乗ったラチェットが登場します。この見た目にルフィは、「変形すんのか?!」と大興奮。
予想通りの反応ですね。(笑)ワクワクして戦うルフィ。ぜんぜん本気ではない感じがします。
また、ラチェットが自分の城から島ガメに伸ばした触手の上でルフィはラチェットに、「お前ここまで来れないだろ!」と挑発しますが、鉄人くん28号は触手の上を普通に歩きます。それに対しルフィは「なんだそれ!ズルなしだぞ!」と。これはまさにルフィらしい発言ですね。いつも真っ直ぐで素直なルフィだからこそ出た発言だと思います。
この後出てきたのは、水陸両用の「鉄人くん32号」。この見た目はルフィは気に入らなかったようで、「カッチョわりー!」と叫びます。さらに鉄人くん32号の変な動きを見て「最悪だ…。」と呟きます。ルフィは、ロボットやメカが大好きで憧れがあり、さらにラチェットの制作の腕を見ていて期待が膨らんでいた分、ガッカリしたんじゃないでしょうか。(笑)
結局ルフィは、最後まで本気を出さないまま鉄人くんに勝利しました。
◇ゾロ vs マジ将軍
トロッコに乗せられ走るゾロとナミの後を追うマジ将軍にゾロが気づき、ナミを信頼して一人で逃がしてから、戦闘が始まりますね。
ゾロはいつも通り、「相手が刃物を使う」ということに興奮しているように思いました。(笑)
相手のレベル的に、手ぬぐいを巻くまでもなかったのではないかと思いましたが、見栄えは巻いた方が良いですね。
しかし、戦闘が始まってみると、ゾロの「竜巻」で一撃!本当に早いし、やっぱり手ぬぐい巻くまでもなかった!と思いました。(笑)
そして、相手を倒して一言。「つまらんもんを切っちまった…。」
どこかで聞いたことあるような(笑)ゾロ特有の言葉数の少なさとスピードと迫力でした。
◇サンジ vs ホンキ大佐
サンジは最初から、なぜかホンキ大佐に10発以上くらっているシーンからスタート。でもこれは、そばにロビンがいたので、ロビンをかばいながら受けた傷ではないかと思います。
ホンキ大佐は、「10発以上くらっているのにタフなやつっすね。」と言いますが、この時からすでに、サンジのタフさが描かれているんですね。
現在、原作ではサンジの出生が明らかになり、サンジが何者なのかが分かってきましたが、そこに繋がる重要な手がかりの一つだったということですね。
そして、女であるロビンが手を貸そうとするとそれを止めて、反撃が始まります。自分がコックであることを告げ、ホンキ大佐から「コックさん?」
と聞かれると、「一流のな。」と言います。一流のコック、そして女に手を出させないというサンジらしいプライドが重なり合った見事な蹴りでの勝利でした。
仲間への信頼
ワンピースは、仲間との絆という部分が多く描かれていますが、それは今回の映画の中でもたくさんのシーンで見受けられます。
まずは、ルフィ達がゆらりうたの謎を解き、ラチェット達と洞窟へ入る所。大きな滝が目の前に現れ、全員を乗せた船が落ちてしまいます。そこでサンジは、浮き輪を持ってルフィに「膨らめ!」と指示を出します。ゴムゴムの風船で膨らんだルフィを下の水へ蹴り落とし、その上に船が落下。船は見事無事で、サンジは水がダメなルフィを抱え浮き輪に乗り、船からはゾロが「ルフィ!掴まれ!」と手を伸ばします。この時の3人の協力体制は本当にお互いの信頼感を感じます。そして、なぜかゾロとサンジが嬉しそうなのもいいです。(笑)こっちまで嬉しくなります。
さらに、洞窟の中の森へ着いてから、謎解きの最中、大量の水に飲まれそうになったルフィを見て、ゾロが1番に助けに入るシーン。ここは本当にゾロがいつもルフィを見ているんだなという、No.2感が最高でした。
その後、気になることがあると、別行動を取って良いかルフィに申し出るロビンとチョッパー。それに了解したルフィは、「サンジ!2人についてやってくれ!」と指示をだします。いかにも船長らしい的確な指示ですね。何かあったとしても、サンジがいれば大丈夫だと判断したのでしょう。ワンピースは、一味が何組かに別れる場合、自然にルフィ、ゾロ、サンジはそれぞれ散るようになっています。三強のお互いの信頼感をヒシヒシと感じられるとてもいい所だと思います。
その後、壁に挟まったルフィは自力で抜け出すことができず、「ゾロぉ、たすけて〜」とゾロに助けを求めます。こうやって自ら仲間に助けを求められるルフィの素直さは、昔からずっと変わっていませんね。とても素敵なことだと思います。
そして最後、ラチェットのメカで動き出したカメを止めるべく、ルフィはラチェットの城を壊すと言います。高く上に飛び上がったルフィは、「ゴムゴムの回転オノ」という、今回の映画に合わせたメカっぽい技で城を上から真っ二つに切っていきます。ただ、この技自分で制御できないのでしょうか、このまま行けばカメを切ってしまいそうな勢いのルフィの回転オノは、城のスグ下に待ち構えるゾロとサンジによって止められます。カメまで斬らないようにという2人の配慮、優しいですね。
このように、ワンピースは様々なシーンで仲間同士の絆が描かれていますが、キャラクターの表情や行動から、見返してみると今まで気づかなかった所にも気がつける、もう一つの楽しみ方だと思いました。
終わりに
全体的に、メカとカメにまつわる物語でしたが、エンディングでラチェットが「僕はあきらめない」と言います。この時、ラチェットまたどこかで出てくるのか?!と思いました。ワンピースは原作でも、モブの中に知っているキャラクターが紛れていたりすることが多いですから、また違った形でひょっこりラチェットやローバが顔を出す時があるかもしれないですね。あるかないか分からない、だから楽しい!ルフィのこの気持ちに共感します。これからもワンピース、全ての物語を見逃さずに観ていきたいと思います!
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