ヒーローに対する問題提起作品
トリガーという役職
「正義のためなら暴力や殺人は許されるのか」誰もが一度は持つ疑問かもしれない。そしてこれがこの漫画の最大のテーマと言えるだろう。今ではあらゆるヒーロー漫画やアニメ、映画が出回っているが、その中でもこのトリガーはその「ヒーロー」というあり方に対し問題提起している。というのも、どの話でもトリガーが行った裁きに対する重みを感じさせる内容になっているからだ。特に第1話では、確かに素行の悪い若者たちが東京都トリガーにより裁きを受け、見ていてスッキリしたと思う。だが決して、その結末はスッキリしない。遂にはその法令を出した国王本人がトリガーによって殺害されてしまうのだ。つまり、作者も登場人物たちも、決して殺人を軽んじてはいないのだ。そして何よりこの漫画の特徴と言えるのが、テーマに対する結論を出していないところだ。国王は殺され、てっきり「殺人はどんな理由があってもダメですよ」なんて、道徳的な結末を迎えるかと思いきや…むしろトリガーの数をもっと増やすという法令に変わる。これはある意味、作者の「ヒーロー」に対する揶揄なのかもしれない。人が人を裁くという事に対しての…。
キャラクターの魅力
この作品ではあらゆるキャラクターが登場する。悪人は殺されて当然と、トリガーという役職に誇りを持っているキャラクターや、トリガーであるということに罪悪感を覚えるもの、誰にも人を殺させないためにトリガーに志願したもの…。この世にあらゆる人間がいるように、トリガーにも色々な種類の人間が描かれている。この作品の興味深い点は、トリガーによって殺された者の中には、そこまで悪いことをしていないものまでもが描かれているところだ。しかしトリガー自身は己の正義を疑わない。ある意味誰も憎めないような内容の話がいくつかある。なんともやるせない気持ちにさせられる。個々のキャラクターがしっかり形成され、我々が共感できるが故に誰をも責められない。そのような魅力的なキャラクター達のストーリーがトリガーでは描かれているのだ。
ストーリーの魅力
トリガーではどの話も一話完結型になっているが、その短い内容の中で我々はその世界観に惹きつけられていく。それはこの漫画のストーリー展開に大きな魅力があるからだ。まず第1話の三上の話は、ある意味この漫画の基本となるストーリーと言える。トリガーという役職に誇りを持ちながらも、どこかで疑問を感じる瞬間が描かれている。また、2話のストーリーはどちらかというと裁かれた警官にフォーカスを当てた内容となっており、大した罪もなく裁かれた警官を待ち続ける少年の切なさが感じられる。そしてそこで登場した千葉県のトリガーになりすまし、自由気ままに殺人を続ける沢田の話。トリガーという制度の甘さと、再び登場する三上によって、県境を突破したら裁けるというトリガーという制度の内容を細かく理解できるようになっている。このように、トリガーという役職がある事によって起こりうる問題点が1話完結型で次々と提示されていくのだ。我々がどこかでトリガーに対して疑問に思っていたことが次々と解決していく、その爽快さがこのストーリー展開にある。それがこの作品の魅力の一つでもあるだろう。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)