主人公が獣医という、少し珍しい異世界ファンタジー - 獣医さんのお仕事 in 異世界の感想

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獣医さんのお仕事 in 異世界

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
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主人公が獣医という、少し珍しい異世界ファンタジー

4.04.0
文章力
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
4.0
設定
5.0
演出
3.0

目次

獣医が異世界へ、という少し王道から逸れた独特な設定

最近の異世界への転移や転生モノで、元医者というものはよく見るキャラクター設定だけれど、少し毛色の違う”獣医”という設定が、他には無かったキャラクターの設定だと考えます。

普通に考えるならば、異世界であってもコミュニケーションを取るために対人スキルが活用できるだろうから、医者設定の方が活かせるだろうと思います。

獣医設定と言うことは対人ではなく対動物、対魔物という話がメインになってしまうだろう。どうやって、主人公であり獣医という風見心悟が異世界で活躍するのか、その疑問が読み始めて最初の関心が高まるだろう部分だと思います。

しかし、本作は異世界へ招かれる経緯から、その後の異世界で生活する目的を決めるシーンまでスムーズで、非常に納得感の有るストーリー展開だったので、思いの外スルスルと疑問を挟むことなく読み進めていくことが出来るでしょう。

過度な装飾のない、非常に読みやすい文章

本作の著者の文章は一文が長くもなく短くもなく、一息で口に出して言えるようなぐらいの、非常に読みやすい長さの文章です。なので、心地よいテンポで読める配分になってました。けれど、情景が思い浮かべやすい程度には描写もしっかりされているので、作者の考えた独自の世界観に入り込みやすい小説だと感じました。

特に、人物同士の関係を表す会話の場面の文章が分かりやすくて、主人公からの視点で固定された会話シーンが非常に楽しく、読み進める事が出来ました。

ただ、全編がそうなっている訳ではなく、専門的な話になった場面では本当に必要だろうか? と思えるような余分と感じる説明や描写がされている箇所も有って、読み進めているのにつまずく部分もあったので、その辺りはまだまだ完璧には程遠いとも思いました。

しかしながら総合的に評価してみれば、やっぱり文章が上手な作者だと感じられるので、ストーリーに没頭するのには一切気にはならなかったです。

獣医学を学んだ著者の、豊富な知識

ファンタジーな世界の作り込まれた設定と、国公立大学の獣医学科で獣医学を学んだという作者の知識が上手に融合されていて、本当に有り得そうだと信じさせてくれるような、そんな場面が豊富でした。読んでいて、なるほどと思わされるような獣医学に関係するような話は、さすが大学で学んだだけの事はある、と感心するほどに詳しく書かれていて、新しいことが知れるという気持ちよさを読者が感じられるほどです。

タイトルに有る通り、異世界での獣医さんのお仕事をする主人公。というよりも、どちらかと言うと死んでしまった魔物を解剖して、何故そうなったのか、異世界の魔法や生活からでは導き出せない、主人公が獣医だからこそ発見できた真実を見つけるというストーリーは、獣医というよりも探偵っぽい、と感じました。

しっかりと練られただろうキャラクター設定で、獣医学の知識が豊富だという作者の真実が加えられて主人公の風見心悟が、非常にリアルに感じられた。そして、キャラクターの苦悩もしっかりと受け入れやすい程度に現代の人達らしい現実味があって、主人公に共感しながら最後まで読めました。

小説らしい小説で、やや重たいストーリー

本作は、異世界小説によくある、何か問題が発生して、主人公が異世界人では思いつかないような方法等で解決、皆から主人公は祝福される、そして皆が幸せになった! というようなストーリー展開とは少し違っています。

冒頭から、鳥インフルエンザに関する話で始まり、現実世界とリンクしている部分もあって、シンプルにストーリー楽しむ、というよりも途中途中で考えさせられる部分のある小説だと思いました。

単純に、困っている人を助けたから皆がハッピーになれるという訳ではなく、人物それぞれの立場がしっかりと確立されていて、それぞれが考えて行動するから、時には助けたとしても問題になったり、色々と失敗することもあって、単純に幸へ一直線に向かっていくストーリーとは異なります。だからこそ、異世界というファンタジーにも現実味があって世界観がしっかりと定まっている、と考えられます。

更には、小説には文章として書かれていない、主人公を取り巻く人物たちの考え。帝王のシーザス・ロル・マグワイアと、その息子であるユーリス・ロル・マグワイアの複雑そうな関係、ユーリスの執事であるクライスの意味深な関係、その他にも色々と裏の設定が事細かに練られていそうな、考察のしがいがありそうな、しっかりと頭を働かせて読むのにピッタリな内容だなぁ、と感じました。

本作を読んでみて

本作は、WEB発の異世界ファンタジー系の作品とは異なっていて、深く没頭して先を考えながら頭を働かして小説を読み、楽しめるという感じの作品であると感じました。

特に、獣医という設定のキャラクターが異世界で活躍するのなら、どういうようなストーリー展開で話が進んでいくのだろうと思った読み始めから、最後まで疑問を挟む余地が無いぐらい納得感の有る展開で終わった、と言える作品でした。

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