人の心について考えさせられる深い作品
悪とは何なのか
作中の年代は相当昔だが、人間の本質的な心について深く踏み込んだ考えられる作品。この作品を見て私は何が正しくて何が間違っているのか深く考えるようになった。法律が絶対的な正義なのか?法律に反していればそれは例外なく悪なのか?そんなことを考えるようになり、視野が広がったと思う。
同時に、人の汚い心というものを知り悲しくなった。どんなに普段取り繕っていても、欲に勝てない人間というものを見て考えさせられた。
幼き日に金の理不尽をしってしまった悲しさ
異常な程に金への執着が強い銭ゲバ、そうなるきっかけとなった母の病死。今でこそ病院では国が金を殆ど負担してくれるが当時はそうもいかなかった、当然そんなこと知るよしもなかった幼き日の銭ゲバは裏切られたというショックが大きかったのだろう。そう考えると、『母が死んでしまった』ということより『金がないと生きることはできない』ということが銭ゲバにとってよりショックであり、金に執着するようになったというのも納得できるのではないだろうか。
凄まじい行動力
金を得るために銭ゲバがとった行動は常人ではまずできないようなものばかりだ。例えば『走行している金持ちの車へわざと当たる』という一歩間違えれば死の危険さえある行為、これは金がすべてと考える銭ゲバだからこそできた行動ではないだろうか。どんなリスクや危険があろうとただ金のために行動できた、というのが銭ゲバのある意味強いところだと作品を読むなかで強く感じた。その凄まじい行動力が別のところに活かせていれば、もっと幸せな人生がおくれたのかもしれない。
銭ゲバは悪なのか?
金のために生き、金に振り回され死んでいった銭ゲバ。 作中では多くの人間から非難され続けたが、彼は悪だったのか? もちろん法律的に考えれば悪だ、しかし本質的な意味ではどうだろうか。
最終的に莫大な金を手にいれたのに彼が自ら命を絶ったのは何故だろう? 彼は金がすべてと言いながら誰かにそれを否定してほしかったのではないだろうか、その証拠に金に執着しない女性に強く惹かれる描写が作中にある。金を求めて捨てた息子に会いきた父親、金を求めて銭ゲバに近づいた女たち、そんな人間を見るたびに銭ゲバは『やっぱり金なのか』と世の人々に落胆していったのではないだろうか。一見金の力で何もかもをいいように動かす大悪党だが、彼こそが"金"の最大の被害者だったと私は思う。
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