ただかわいいだけじゃないヒロインたち、ただときめくだけじゃない人間ドラマ。 - とらドラ!の感想

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とらドラ!

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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ただかわいいだけじゃないヒロインたち、ただときめくだけじゃない人間ドラマ。

4.04.0
画力
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
4.0

目次

可愛い女の子には一癖ある

ライトノベル発祥ですが、最近のラノベ発祥コミカライズ漫画に見られるような、女の子がただただ可愛い作品とは一味違うのです。そう、この作品は可愛い女の子ほどクセが強い!それもしゃべり方が変だとか、変わったものが苦手だとかそういったあざと可愛いクセではなく、気が強く芯をしっかり持っている、ともすれば持ちすぎているがゆえのくせの強さなのです。それが可愛らしい画風の作者さんによって、可愛いけどカッコよくてめんどくさい、新感覚のヒロインたちが生き生きと描かれているのが強い魅力です。

理不尽と戦う苦しさ、思春期ゆえの悩みが詰め込まれている

主人公含め主要な登場人物はほとんど、家庭環境に問題を抱えていたり、ストーカーに悩まされていたりと、本人固有の悩みを抱えている生々しい人間です。可愛い作風とは裏腹にそのあまりのヘビーさにはじめは「おお…?」と思ってしまうかもしれませんが、読んでいくうちにどんどん、自分も思春期にこんなこと考えたなぁ、というふうな、生きていくうちに当たり前と飲みこんで忘れてしまった理不尽への怒りが詰め込まれています。特に主人公と大河が「むかつくんじゃああぁ!」と叫びながら

悩みながらも成長してゆく主人公たちに必ず共感出来る

主人公たちの置かれた状況はいつも複雑で、すこし救われたと思ってもまた落ち込んだり、その繰り返しで希望を抱けなくなっていたりと、ある意味現実よりももっと生々しいように思われます。純粋すぎるがゆえに、期待しては裏切られ、なんでもないことで救われる。そういったことに重点を置いて構成されたストーリーであると思われます。しかしそのなかでひときわ輝くのは、はたから見れば解決していないように思われる救いのない状況でも、「ふん!」と足を踏ん張って開き直り前へと進むメインヒロイン大河のメンタルの持ち直し、深く考えてはいるけれど普段は明るく無邪気に振舞って、しかしいざというときは誰よりも深く親友の大河の心配をして自分の想う相手であるかもしれない主人公と喧嘩することも厭わないみのりんの強さ、腹黒さから主人公や大河に引かれることは多くとも肝心なところでは力になってくれ、普段はわがままなくせにふとした瞬間に誰よりも大人びて一歩前を行くという彼女の生き様を見せてくれる亜美ちゃんといった、個性的なヒロインたちの人となりです。主人公はとても出来た人間で、ヒロインたちに文句を言いつつもなんだかんだ甲斐甲斐しく世話をしたりするのですが、それに寄りかかりっきりではなく、きちんと自分でものを考え、自分で判断を下した上で行動していると心から思えるヒロインたちというのは、最近の作品には珍しいように思います(少々我が強すぎて主人公と度々衝突しますが笑)。

また、そうはいってもまだ10代半ばの女の子、自分でものを考えていても他の人の考えに関心があったり他人の目を気にするお年頃。大河は主人公に、想い人である北村にどう思われているか、どうすれば恋が成就するのかについて度々相談を持ちかけたり、的外れの作戦を立ててやっぱり失敗したり。皆で合宿へ行った際には、昼間はみのりんのの無邪気で可愛らしい行動に魅了されつつ、夜には彼女の持つ神秘的な人生哲学に深く考えさせられたり。ストーカー被害に遭ったモデルである亜美が、自分の怯えていたストーカーをさも簡単に撃退した大河に触発されて吹っ切れ自らもストーカーに復讐し、より魅力的で吹っ切れた笑顔を見せるようになったり。そのような、やっぱり年頃の女の子であるヒロインたちと、彼女らの見せてくれる年相応の可愛らしさやいじらしさが強い魅力の一つです。また、とても細かいところまで丁寧に描かれている作画であるため、圧倒的美少女の設定である彼女らの佇まいや反応の可愛さ、初々しさなどが余すところなく表現されています。

そして外せないのが、主人公の高須君の可愛らしさ!みのりんを想うあまり空回りしたり、本当にちょっとしたことで一喜一憂したりするところは、普通の男の子どころか強面で皆に恐れられてる子だとは到底思えないほどです。クセが強すぎてたまにめんどくさいくらいである女の子たちの無茶な要求や悩みに自分のこと以上に悩んで、献身的に尽くし、しかし自分の納得できないことはたとえ彼女らと対立することになったとしても反対し続ける彼も、魅力的な作品の要素の一つです。

そして、はじめはそれぞれ想い人がいて、お互いを恋の共闘者として認識していた主人公と大河が次第に惹かれ合い、元の想い人への想いとの間で揺れ動く恋心からも目が離せません。

人間ドラマが生々しすぎて、時にはドロドロ、昼ドラみたいと形容されることも多いこの作品ですが、他の作品にはなかなか見られないような丁寧なやりきれない心情描写や人間像の書き込み、そして要所要所に挟まれるちょっとしたシュールなギャグが大きな魅力の作品です。

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