良い大人になりたい - 隠蔽捜査の感想

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隠蔽捜査

4.004.00
映像
3.00
脚本
4.50
キャスト
5.00
音楽
3.00
演出
4.50
感想数
1
観た人
1

良い大人になりたい

4.04.0
映像
3.0
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
3.0
演出
4.5

目次

ま・じ・め

ドラマを見ると、ただただストーリーを追うのが楽しみで快感なものもあれば、自分の生き方に影響を与えるものもあります。他にも色々あります。その色々が複合的に感情に訴えるものもあります。血肉となっていくものもあれば、忘れ去ってしまうものもあります。それから、最後まで見るのが苦痛なものあります。良いパターン悪いパターンあります。この作品の面白いところは、どれでもない、ところです。見終わって、「真面目だ」と熱い緑茶をすするような、そんな世界観です。結構ボディーブローが効いてきて、何かと感情が沸くのですが、説明がつかない気持ちで、むううとお茶をまたすする。そんな言葉にできないけど、ずんと腑に落ちてくる作品でした。

新しいのに目立ったところがない、とも言えます。例えば新種の動物を紹介されて、それが、犬にも猫にもカピパラにも狸にも似ていて、新しいのに珍しい気がしない…そんな感じです。ただ、きちんとその動物は存在していて、派手に訴えるものを与えず、草を食べている…みたいな。それをこちらは見届ける。そういう、ドラマなのです。最後まで見届けた、ということが満足につながります。一冊の問題集を最後までやりました。という、あますところがない、それで安心するような感じです。配役も、これを見てしまうと他の俳優は考えられない、もう、ばっちり決まっています。どこをとっても、高価な陶芸品のような座りのいい作品です。

 珍しさ・新しさ

 こちら、「職業もの、刑事ドラマ」、そんな枠に入ると思いますが、警察と言うよりは「公務員」ドラマです。主人公の竜崎も「国家公務員は、国民のために」仕事をするのだから、地位や名誉の為に内部で争っても仕方がない、と言ったりしています。公務員のドラマは時々みかけますが、数多くない印象です。そしてそのどれもが、お役所勤めではないでしょうか。でも実は、学校の先生も警察も看護師も消防署員さんも、昔は郵便屋さんも公務員なんですよね。今作は、現場の刑事物語でなく警察キャリアのお話という点で、気を持たせられますが、それよりさらに公務員であることが前に出てくる、その視点が新しいです。

 竜崎は、変人と言われるのですが、従来、変人といば、柔らかいキャラクターが多かったと思うのです。明るくて、口八丁で周囲を巻き込んでいくような。ずば抜けた知能や天才的な技術があるのに天然で放っておけない、ような。今回は違って、堅物です。冗談やなれ合いやスキンシップの余地が無い。このキャラクターが主役を張る。物語の中心人物になれても、主役にはなりにくいキャラクター。でも彼の視点で物語が進むので彼が主人公なのです。幼馴染の伊丹が主役に寄り添っているので、二人で一つな主人公ともとれますが、それを言い出すと、実は竜崎の妻が主人公だととらえたり、大森署の戸高こそ主役ではないか、とか考えが巡りだすので、(どれだけ主張のない主人公なのか、と思いますが)それが面白かったりします。脇役を際立たせるための主人公というのは、通常と逆なのでどんな仕上がりになるのか興味が沸くのです。

原作の小説は、文学賞をとるほどの作品ということで、そう言えば、文章を読むような感覚があるドラマでした。これもまた、ちょっと新感覚です。冒頭のナレーションの声が秀逸なせいかもしれませんし、役者さんたちのセリフの言い方や演じ方に無駄がないせいかもしれません。実際ファッショナブルなところが薄い作品なので、どうしても竜崎の家のインテリアに目が癒えるような、そんな画面の暗さも、小説の紙面を眺めるのと似ていたのかもしれません。小説を読んだ気分が脳に残る、何とも不思議なドラマでした。

 現実との比較

 「それはそうなんだけど…」という周囲をどんなふうに跳ね返すのか、跳ね返したいがために、口下手な竜崎には出世が必要だった。そう見ることもできます。何だか分かる気がします。正しいことをするために、有無を言わせない発言権が必要だった。勿論キャリアとしての責任を取ることを厭わない。本来当たり前なのですが、さて、こんなに当たり前に正しく行動するとどうなるんだろう…と、興味津々で見続けられた気がします。

竜崎が降格されてからの見どころは、「キャリア」や「上下関係」の垣根を超えて、正しく行動できるか。なぜ出世したいか、欲のためではなく、もっといい仕事ができるようにというのが竜崎の考えで、その態度が現代人への警鐘となっていました。権力とは一体何のための権力なのか、そこに思い当たるのが新鮮です。そんなドラマがあったかな。普段から竜崎のように堅物で真面目に生きている人には、スカッとする場面が多かったのではないでしょうか。

 処世術が無くても出世できる、それが公務員であって欲しいなと思います。もっと言えば、処世術がいらないのが本当の「実力社会」なのではないかとさえ思います。努力が報われる、正義が認められる、具体的に確実に人を助けられる。今、自分のイメージする「実力社会」にそんなワードが無い気がします。「サラリーマン」にも見当たらない。「フリーター」にも無い。思い浮かぶのは、自分が取り残されるかどうかということ。一時期は空気が読める読めないというのが話題になっていましたが、何となく多数決を意識しなくては生き残れない、そういう環境や空間がどこにでもあるということなのかもしれません。なかなか疲れるし、はみ出し者が必ず出てくるような状態だと言えます。

そんな時代に、正義とは何でしょう。あるのか無いのか、正義がそもそも何なのか。正義が、みんなをまとめて引っ張っていってくれるのかもしれないし、正義が多数決されていることもある。そんなことを考え出すと、竜崎のクリアな頭脳が羨ましくなります。信念を持つというのは、邪念がないということに違いありません。人の為に動くと決めると、おのずと無駄な考えが無くなるようにもみえました。

 嘘つきは泥棒の始まり

 「嘘をついたらいけない。嘘をついたら嘘を重ねていくことになる」などと教わりますが、この作品は、もう一回それを教えてくれる大人のための「お話し」なのだと思います。そして、これを見て、この「お話し」が嘘なのか本当なのか疑うのではなくて、素直に「良い話だ」、と感じ入る大人でありたいです。ただ、そういう方は、ドラマではなくて小説の方を読んでいるんだろうなという気がします。(それで、きっとそういう方は官僚やリーダー職なのだと信じたいところです…!)これを機会に自分がどんな大人になったのか自己採点してみるのもいいですね。

大人の友情や仲間意識、チームワーク、家族、実は盛りだくさんな内容なのですが、全11話の連続ドラマに納めるには勿体ない題材だった気もします。サスペンスドラマでシリーズ化されても良かったかもしれません。

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