貴重なゴルフアニメ - あした天気になあれの感想

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あした天気になあれ

4.504.50
映像
5.00
ストーリー
4.50
キャラクター
4.50
声優
5.00
音楽
3.50
感想数
1
観た人
1

貴重なゴルフアニメ

4.54.5
映像
5.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
声優
5.0
音楽
3.5

目次

4作品の一つ

ゴルフを題材としたアニメ作品は本作のほか、「プロゴルファー猿」、「新・プロゴルファー猿」、「DAN DOH!!」の3作品、計4作品しかない。シーズン中は1,2週おきに試合があり、尾崎将司(ジャンボ)、青木功、丸山茂樹、岡本綾子、石川遼(敬称略)など、有名かつ人気プレーヤーがいるスポーツでは非常に少ないアニメ化作品数と言えるのではないだろうか。ここではなかなかアニメ化がされない原因について探ってみたい。 

縁遠い競技

アニメを見る層(ここではおおむね30代までとする)にとって、ゴルフという競技が縁遠いということがあるだろう。確かに、石川遼の登場で以前よりはゴルフという競技が身近なものになってきた。しかしそれは“以前よりは”というだけで、多くの人にとっては縁遠い存在であることに変わりない。それはなぜか。やる機会がないからというのが一番大きいだろう。野球やサッカーはボールさえあればキャッチボールやパス、シュート練習ができる。ゴルフは特殊なボールのほか、クラブがいるしコースや練習場がいる。何より、野球やサッカーは必ず相手がいるのでコミュニケーションを図りながら楽しく練習ができるのに対して、ゴルフは個人競技だから一人さびしくやろうなどと考える人はなかなかいない。また、もう一つの要因としてプロへの道が分かりにくいということがあるように思う。どうやったらプロになれるか分からないから子供のころからやってみようと考える人が少ないのである。一説にはプロになるまでに数千万円かかるという競技に必要な費用の多さも競技の普及のネックになっていると考えられる。さらに、プロゴルファーと交流できる場面もほとんどないから、ゴルファーに親近感を持てず、協議自体に興味がわかない、といったことも挙げられるだろう。 

描いにくい競技

ここまでは実際にゴルフをプレイすることや見ること、プロと接することなど実態を見てきたが、ここからは、それを物語とすることについて考えてみたい。最大のポイントは“個人競技”であること。この、個人競技のスポーツはアニメにしにくいと考えられる。同じ個人競技であるテニスもアニメになった作品はほとんどない。「テニスの王子様」くらいであろう。「てーきゅう」、「うさかめ」や「そふてにっ」という作品もあるにはあるが、前の2つはほとんどテニスをしないし、最後の一つはソフトテニスである。それを含めても4作品とやはり少ない。個人戦になると極端な話自分自身との戦いになってしまい、単調になってしまう。テニスはまだ相手と対戦するから相手との読みあいという一面があるが、ゴルフは完全に自己完結してしまう。団体戦ならば常にチームワークを考えるのでそこから広がりを持たせることができるが、個人戦ではそれができない。また、先も書いた通り実際に競技をしている人が少ないことで、心理面でも共感できるということが少なくなってしまう。それらの結果どういうことになるかというと、競技の結果が完全に“作られたもの”になってしまうのである。もちろん、フィクションなのだから“筋書きのあるドラマ”であるわけだが、それをいかに筋書きがないように見せるかが、スポーツものの大きな要素なのである。その点が個人競技で実際に競技をしている人が少ないゴルフではなかなかうまく描けないのである。うまく描けないから結果ありきになって、主人公補正だ、などと揶揄されてしまうわけである。加えて、ゴルフという競技の単調さがある。言ってみればボールを打つことを繰り返すだけだからだ。これを飽きが来ないように表現していくのは想像以上に難しいだろう。 

本作について

ここまでゴルフという競技の性質から見てきたが、ここからは本作について見ていく。本作は原作の途中まで、主人公がプロテストに合格してプロとして1勝目をあげるまでが描かれている。主人公は初めゴルフというものは全く知らず、仕事の弁当配達の先でボールを打ったところを偶然レッスンプロが目撃したことからゴルフの世界に入っていく。最初のうちはゴルフよりも日常が描かれていることが多いため、ここで主人公への感情移入ができたことが、人気が出た大きい要素だと思う。さらに、番組の終わりにはゴルフ解説者の戸張捷によるワンポイントレッスンのコーナーがあり、ゴルフのルールの紹介や番組内で出てきたプレーの解説があった。このことでゴルフを全く知らない人も楽しめるようになり、ゴルフの普及にも一役買ったと言える。また、心理面の葛藤について、裏事情を視聴者に見せる(意地悪をしてくるベテランの受験者が実は主人公の師匠である竜谷の指示でやっていた。主人公に精神的に強くなってもらうため)ことで、より現実感を持つものになっている。プロになるためのテストという、我々にとっては受験などに容易に置き換えることができる題材というのも、感情や心理が分かりやすいものになっている要因であろう。加えて、構えてから打つタイミングをとる「チャー・シュー・メン」という決め言葉を生んだのも大きな人気要素(実は最初につかったのは主人公ではなかったりする)である。先に指摘した単調さも、描写するアングルの工夫で解決させ、飽きのこない映像にしている。この作品ではホールの距離がメートル表記になっており時代を感じさせる(今ではヤード表記だが、当時はまだメートル表記であった)が、いかにして当時普及していないゴルフを魅せようかという、スタッフの意気込みが十分に感じられる作品になっている。

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