人気シリーズ第一弾 酔っ払いたちの小・冒険
男ウケはばっちりのコメディ映画、だと思う
『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い(以降、ハングオーバー!)』は2009年日本公開のアメリカ発コメディ映画だ。
一作目『ハングオーバー!』の大ヒット以来、現在(2016年3月時点)3作まで続編が制作されている人気タイトルとなっている(タイトルだけでは何作目かわかりづらいが、『ハングオーバー』のあとの!の数で何作目かを判断できる)。
フィル、スチュ、アランと、結婚を明後日に控えた男性・ダグを交えた親友四人は、「独身さよならパーティー(バチェラー・パーティー)」のためベンツに乗ってラスベガスに旅立つ。しかし、ラスベガスに来てテンションが上がってハメを外しまくり、ドラッグをキメて酒を飲みまくった結果、二日酔いになって記憶がなくなり、おまけに花婿であるダグの行方はわからなくなってしまう。
フィル、スチュ、アランの三人は消えた記憶を手繰り寄せながら、ダグを探してラスベガス中を駆け回る…という話。つまりサブタイトルそのまんまのストーリーという訳だ。
この作品はコメディとされているが、コメディ要素と呼べるのは作中随所に挿入されたアランの空気の読めないボケだ。ダグが抜けたあとの三人の会話のやり取りは面白い(あとはぶっ飛びまくったベガス市警の二人ぐらいか)。
ただし、大仕掛けを使った展開やストーリーでのボケは少ない。小回しのようなギャグで笑いを取る作品なのである。
高級車(ベンツ)を乗り回し、酒を飲んで風俗嬢を呼び寄せ、ラスベガス中でありとあらゆる悪ふざけをしまくるーーいわゆる「男性の夢」が詰まった作品といえるのだろう。
だが、男性にとっては共感が出来るエピソードが多いのだろうとは思うが、正直、女性が観て「楽しそう!」と思えるエピソードはほとんどなかった。そもそもバチェラー・パーティーの慣習がない日本人、それも女性にとって、独身最後の夜にストリップ鑑賞をするという男性の気持ちが理解できないのだ(このあたり、やっぱり性差なんですかねぇ。どうなんでしょう男性陣)。
悪くはないが、普通のコメディの域を出ない
『ハングオーバー!』は低予算で制作された映画ではあるが、予想以上の大ヒットとなり全米で累計2億ドルを売り上げた。まるで『ターミネーター』のような売れ方である。
肝心の内容であるが……正直、筆者の琴線には触れない映画だった。
問題は、やはり男のロマンが詰まった悪ふざけの数々だろう。
娼婦を呼んでパーティーをしたり、パトカーを盗んだり、マイクタイソンの家に忍び込んで虎を盗んだり……アメリカ風にいえば「こいつら本当イカれてるよHAHAHA!」で笑い話になるのだろうが、日本人からすれば「こんなことをしていて楽しいのか?」と思ってしまう次第である。「悪ふざけ」と「シャレにならない」の間を漂うばかりで、どうにも「面白いと思えるポイント」がズレている気がしてならないのだ。
こうしたストーリーのツボもさることながら、笑い(ギャグ)のセンスもズレているのが辛い。
笑えるポイントが少なく、「今のはギャグだったのか?」と疑いながら鑑賞してしまうのだ(この点は本当に筆者の個人的主観なので、共感してもらえないかもしれないが……)。いんちき臭い中国人集団やアランの一人ボケなどのシーンも、いまいちぴんとこない。
ギャグもストーリーも、決してつまらない映画ではないのが、これといって特筆すべきところもない作品だ。クライマックスにもメリハリがなく、四人は普通に結婚式にも間に合ってしまう。ここは間に合わないぐらいがギャグとしては面白いと思うのだが、読者諸兄はどういう感想を抱いたであろうか?
主観ではどうにも判断しあぐえる作品
と、ここまでは一視聴者たる筆者の勝手な意見だが……気になるのは男性陣や海外の意見だ。
様々な『ハングオーバー!』の日本のレビューサイトを覗いてみても、毀誉褒貶が激しい。もちろん、ネット上の意見に投稿者の性別は反映されていないが、文脈を見るに男性は賛、女性は否の意見が多いように見受けられる。
女である筆者も前述の理由から(悪ノリが理解できない、バチェラー・パーティーの慣習に馴染みがないなど)この作品に低い評価をつけてしまったが、物語と同じ男性たちになら、この作品は面白いと感じるのかもしれない、と勝手に想像を巡らせてしまう。
また、『ハングオーバー』シリーズの本国であるアメリカの女性たちも、筆者とは別の感想を抱くかもしれない。
つまり、この映画は観る人を選ぶ作品、ということだ。名作コメディの仲間にいれるには少々苦しいと筆者は考えている。
この作品は三作目『ハングオーバー!!!』まで発表されている。まだ筆者は一作目までしか観ておらず、続編がどうなっているかは把握していない(評価や興行収入が低いのが少々気になるが……)。
女性にもわかりやすい面白さに期待しつつ、続編を観たいと思う。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)